暁の7人
1975年米。監督 ルイス・ギルバート。主演 ティモシー・ボトムズ。
実話だそうです。
映画は1941年イギリスから始まります。ヒトラーが死ねば次期総統候補と言われるハイドリッヒ将軍が、占領軍最高責任者としてプラハに着任。ヤン、ヨゼフ、カレルの3人の若者は将軍の暗殺指令をうけ、チェコスロバキアに落下傘で降り立ちます。
「暗殺の方法は君たちに任せる」ととても能天気な作戦。あれよあれよと土地のレジスタンスと接触、都合良くプラハ入り。ここら辺までは、つまらない、と自分は思っていました。
でも1度目の暗殺が失敗に終わった後のヤンとレジスタンスのアンナとの会話。
「この時間と労力が殺人のためとはね。もっと青春を楽しみたいわ」
「いま突然平和になったら何をする?」
「服を買うわ、真っ赤な絹のドレスよ」
「俺はサッカーを見て1杯やりたい」
急に台詞が、彼らの姿が胸に突き刺さり始めます。
暗いプラハの町並み。そこら中にドイツ兵が立ち、侵略者たちはチェコ人のことを人間とは扱わない。強大な力をふりかざしている。主人公たちがあまりにも平凡すぎるので、絶対にかなうわけない、と悲壮な感じがプラハの町並みのように映画全体も支配しています。
決死の覚悟で2度めの襲撃。命からがらヤンとヨゼフは逃げ出します。何一つかっこよくない暗殺シーン。
ヤンとアンナの別れるところ。あと24時間後には英軍の飛行機が迎えにくる。行かないでくれ、というアンナに、
「戦争が終わったときのことを考えるんだ。俺はきっと帰ってくる。また会える」
「あなたのことをもっと知りたい」
「お互い何も知らないね、アンナ、君のことも」
「本名じゃないわ」
「いいんだ」
キス。
「赤いドレスもないの」
「俺もサッカーを見たことない」
再びキス。
暗い影が忍び寄っていて(ネタバレになるので言いませんが)、とても悲しみのこもった場面。
このあとクライマックスが来て、最後に関係者の行く末が出て映画は終わります。
傑作。埋もれた傑作。本当は有名な作品かもしれませんが、自分は題名さえも知らずに、たまたまツタヤで目に付いたのでレンタルしただけです。DVD化されているのでしょうか? していたら買ってしまう気なのですが。ただ、ちょっとヘビーな映画なので気軽に見るわけにも行かず、体力のあるときに見直したいと思います。




マラソンマン
1976年米。監督 ジョン・シュレンジャー 主演 ダスティン・ホフマン。
マラソンが趣味の大学院生ベイブ。父親は大学教授であったがマッカーシーの赤狩りに巻き込まれ、自殺に追いやられている。ベイブには兄・ドクがいて、兄は自称実業家。だが本当は政府の機関で働いていたらしい(あまり映画でははっきりしない。ひょっとしたらただの宝石の運び屋にすぎないかも)。
その兄がクリスチャン・ゼルに殺される。ゼルはドイツ人、ユダヤ人収容所にいた元ナチの高官。ユダヤ人から金、ダイヤを巻き上げ財をなし、今は母国を追われウルグアイに身を潜めていたが、ドクの裏切りに制裁を加え、貸金庫に預けた宝石をとりにニューヨークに来る。
死に際にベイブにドクが秘密を漏らしたのではないかと、ゼルはベイブを誘拐、拷問にかける。
人形爆弾、転がるサッカーボール、向かいのマンションの車いすの老人・・・等々凝った演出。映像も「ゴッドファーザー」並のきれいな映像です。
犯罪組織に巻き込まれてしまうと、その手のプロたちの前ではなんと一般市民は無力かが描かれています。まぁ、それだけでは映画にならないのでちゃんと主人公は反撃に出ますが。
圧巻はやはり虫歯を攻撃する拷問。ホントに痛そう。
ユダヤ人にしてみれば、きっと元ナチスの高官なんて絶対許せないモノなのでしょう。最初の老人同士のカーチェイスに至ってはドイツ人と言うだけで憎んでいるようでもあります。

この映画はちょっと前フリが長いような気がします。もっとダスティン・ホフマンを中心に話を進め、最初から最後まで出ずっぱりにすれば、この食い足りなさも解消するのでは? なーんてことを思いました。
でも割と面白かったです。手抜きなしで、どうでもいいようなシーンにまでお金をかけていそうな雰囲気がします。丁寧な作りの映画です。









ブラジルから来た少年
1979年英。監督 フランクリン・J・シャフナー。主演 ローレンス・オリビエ。
元ナチス幹部らによって第4帝国を建設することを夢見るナチス会。彼らが亡命先のパラグアイで会合をしているところを、アメリカ系ユダヤ人の青年バリー・コーラーに盗聴される。2年半の間に94人の男、みな65才、公務員を処刑しろとの命令。コーラーはナチス狩りの第一人者リーバーマンに連絡するが、まともに相手にしてもらえない。盗聴がばれ、コーラーは殺されてしまう。リーバーマンはようやく重い腰を上げ、今、ナチス会、元アウシュビッツ主任医師メンレゲ博士によって何が行われているのかを調査に乗り出す。するとそこには驚愕の事実、計画が明らかになっていきます。
これもナチスが悪役です。けっこう欧米の映画には多いような気がします。日本ではそんなことはないですが、ドイツ人は肩身が狭いのでしょうか?
出てくる少年が小憎らしい。いかにも根性が曲がった感じがしてうまいです。
最後はグレゴリー・ペックとローレンス・オリビエとの対決。地味だけど血なまぐさいクライマックス。
戦争は勝てば官軍ですが、ドイツは悪く言われすぎ。テレビとか映画はべつに大げさに言っているわけではなく、実際戦争当時のドイツ軍は本当にその通り悪者だったのかなぁ。と、思ってしまうほど、ナチスは悪役が板についてます。戦争だからどっちも正義でどっちも悪、なんて考えは当時を知らないから言えるのかも。本当のところは自分には分かりませんが。
日本未公開らしいです。自分が推測するに、面白いけど、見せ場がなくて地味だから。好きな人は好きだろうけど、自分自身も含めて、映画館にまで足を運んで見ようと言う人は少ないはず。


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