ザ・ミッション/非情の掟
監督 ジョニー・トー 主演 アンソニー・ウォン。
この映画はオススメです。何がなくとも見ておいた方がいいです。香港映画。実にシンプルな作り。81分の上映時間。無駄のない映画。とにかく役者も話もアクションシーンも、香港映画はここまで来てしまったか、あんなにすごい高見にまで上昇をしていたのか、と思わされるようなクオリティです。自分にとっては「男たちの挽歌」以来の衝撃でした。フィルムノワールの傑作。
ワイヤーアクションもなし、2丁拳銃も、ばらまかれる銃弾もなし。静かなのにやたら熱い銃撃戦が繰り広げられます。
話の内容は暗黒街のボスの護衛についたグァイ、ロイ、シン、フェイ、マイクたち5人と殺し屋たちとの攻防戦、5人の友情を描いた物。
出てくる5人の男がそれぞれ個性的でかっこいい。役者もいい顔をしています。特に殺し屋を迎え撃つ時の、息を殺して銃を構える姿がすごい。5人ともなめらかな動き、護衛のフォーメーション、美しさすら感じてしまいます。
そしてその突出したアクションシーンを前面に押し出すことなく、映画はあくまで5人の男たちに主眼をおいて作られているところが、これまた憎いです。

一緒に見た人のコメント。「良かった。一定のリズムのある映画、それが最後まで崩れないのがいい。グァイが宍戸錠、フェイが伊集院光、シンが金子賢にクリソツ。フェイが見かけによらずかっこいい」
フロム・ヘル
監督 アレン&アルバート・ヒューズ 主演 ジョニー・デップ。
1888年ロンドンを震撼させた切り裂きジャックの話。5人の娼婦を殺害した猟奇殺人犯。手口は残忍。犯人は捕まらずじまい。この映画ではジョニー・デップ扮するアバーライン警部(実在の人物、映画ではかなり脚色されているらしい)が、予知夢を駆使して犯人を追いつめます。
話の内容はちょっと面白くないかもしれません。とくに殺された5人の娼婦につながりがあったり、フリーメーソンが出てきたり。いくらなんでも映画とは言えやりすぎ、ドラマを作ろうとしてかえってつまらなくなってしまったような。アバーラインとメアリ・ケリーの恋愛も陳腐。ここまでくると、劇中やたら切り裂きジャックの犯行をユダヤ人になすりつける(実際そうだったらしい。そのほかにも疑いをかけられたのは外国人、屠殺人等々数知れず)のを必要以上に強調するのも、ユダヤ人の悲劇を知らしめようとするハリウッド(ユダヤ人がしきっているとう噂)の陰謀かと疑いたくなります。見終わってすっきりしない映画でした。
でも悪いことばかりではありません。画面も、風景も19世紀のロンドンをとてもうまく再現していて、雰囲気が伝わってきます。
この映画がきっかけで少し切り裂きジャックのことが知りたくなり、パンフに文章を寄せている犯罪研究家の仁賀克雄の「ロンドンの恐怖・切り裂きジャックとその時代」を買ってしまいました。

一緒に見た人のコメント「ジョニー・デップがかっこよかった。話が配役で見えてしまう。もっと面白く作れただろうに」
レイン
監督 オキサイド&ダニー・ハン 主演 パワリッド・モングコンビシット。
タイ映画。バンコクが舞台。耳の聞こえない殺し屋コンが主人公。
キャッチフレーズが、「レオン」をしのぐ激しさ。「シュリ」を超える切なさ。ひどいコピー。センスも知性もない。プライドもない。映画を見てからライターが書いたのではなく、きっと適当にバイトが解説だけ読んで2,3分で書いたのではないかと思えるくらい。でもここの会社は前にもタイの映画の配給のときに「タイタニック」よりどうたらこうたらと引き合いに出していたので、きっとこの笑えない寒いキャッチコピーも確信犯でしょう。わざとださくして人目を引いているのです。
その宣伝文句のためあまり期待をしないで見たのですが、映画自体はけっこう面白かったです。
まずは気になった点。設定の甘さがいくつか。耳が聞こえなくて幼少のころいじめられそれがトラウマになって殺し屋になる一因となる、というのはどんなもんだろう? 安易。ここらへんはいらない。観客が想像すればいいこと。それと薬局の少女とのふれあい。簡単すぎる。薄っぺらすぎる。ヒロインも大根っぽい。夜の公園で二人が強盗に襲われるのも時代劇のようなお約束すぎて、新しい感性を売りにしている映画の割にはお粗末。
良かった点。友人のジョー、その恋人のオームが大変かっこいい。ジョーの復讐のために日本料理屋でのコンの殴り込みシーン。このまま「男たちの挽歌」をパクるのかと思いきやそのかわした展開。
しだいに良心の呵責に悩むようになり、ついに迎えるラスト、主人公に降りそそぐ雨。美しいシーン。お金のためにいろんな人を殺してきた主人公。彼は無垢な少女に出会い、友人らの死と引き替えに罪の深さを知り、もう償いは出来ないとあきらめる。
雨はそんな彼に一粒一粒空から落ちてきます。

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