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ザ・ブルード
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1979年カナダ。監督 デヴィット・クローネンバーグ。主演 オリヴァー・リード。 怒りの感情を腫瘍などで体外にあらわして発散させる精神治療、サイコプラズミクス療法の第一人者ハル・ラグラン医師。 主人公フランクの妻ノラも患者の一人。ノラは母親に幼少の頃虐待を受け、そしていままた自分の娘を虐待していた。そのせいでフランクとの夫婦生活は壊れ、長期療養を余儀なくされている。フランクとしては週一度の面会も拒否、ノラとは完全に離婚して娘と二人で暮らしたい、と願っていた。 ある日、ノラの母親が何者かに殺される。次に父親。犯人は子供のような小人の奇形児。そしてフランクと親しくしていた保母も惨殺、娘が小人に連れ去られる。 ノラの怒りの感情がサイコプラズミクス療法により、腫瘍ではなく体外に子宮を作り、次々と小人を生み出していた。その小人(ブルード・ひな)たちがノラの怒りを代行して、邪魔者を次々と始末して回っていた。 とても怖い。人殺しの場面がとても怖いです。あんなのが出入りしてきたらと思うとかなりおぞましい。 低予算のためブルードに子役を使っているのがかえってリアル。今なら発達したSFXやらCGでブルードをこれでもかと出しまくりの見せまくりで行くと思いますが、この映画内ではフードをかぶっていてほとんど顔が見えない、後ろ姿か遠くから、もしくは闇の中。 自分が一番印象的だったのはブルードが娘を連れ去るシーン。3人で横一列になって雪の降る国道を歩いていくところ。怖くもあり、美しくもあり、哀しくもあり、とただのホラー映画ではくくれない映画であることが、この場面ひとつからでも伝わってきます。 それとブルードが撃たれるところがよかったかも。さすがクローネンバーグといった感じです。オススメの一本。
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僕の村は戦場だった
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1962年ソ連。監督 アンドレイ・タルコフスキー。主演 ニコライ・ブルリャーエフ。 第二次世界大戦のソ連。ドイツ軍が侵攻中。少年斥候兵のイワン。彼の村も侵略され、母親と妹は行方不明。イワンは復讐に燃え、対岸のドイツ軍の情報を持ち帰る。 ホーリン大尉とカリツェフ上級中尉はイワンに危険な任務を辞めさせ、幼年学校に入れようとするが、イワンは聞き入れない。 再びドイツ軍の占拠した対岸へと夜の川を渡り、岸でホーリン大尉とカリツェフ上級中尉と別れるイワン。その後、彼は戻ってこなかった。 戦闘シーンはほとんどなく、静かな印象の映画。イワン少年の演技がとてもシャープ。夢と現実の交錯も美しいです。戦争に巻き込まれた少年の悲劇。テレビ放映の時は最後にイワンの写真のところで「僕の村が戦場でなかったら」とナレーションが入りました。まさにその通り。戦場でなければイワンはごく普通に暮らせたはず。でも今回見たビデオ、映画のオリジナル版ではナレーションはありませんでした。テレビ局は親切? 自分はイワンの運命にも同情しましたが、それよりももっと気持ちを奪われたのはこの映画の画面。構図がやたらシュール。ウルトラセブン第43話「第四惑星の悪夢」を彷彿させます。凝ったカット割りのせいで戦争映画なのにSF映画のよう。だから戦後の(おそらく)ドキュメントフィルムの挿入はそこだけバランスが崩れてしまい残念。
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ガルシアの首 |
1974年米。監督 サム・ペキンパー。主演 ウォーレン・オーツ。
メキシコが舞台。ある金持ちの娘が未婚の母に。金持ちは大激怒、相手の男の名前を無理矢理吐かせ、部下たちに命じる。
「ガルシアの首を持ってこい」
アルフレッド・ガルシアに100万ドルの懸賞金。
メキシコ・シティで観光客相手に酒場でピアノを弾いていたベニーと歌手のエリタも、ガルシアの首をめぐる闘争に巻き込まれる。
ヤクザにガルシアの居場所を尋ねられたベニー。ガルシアを連れてきたらいくらになるのか、と持ちかけると、生死問わずで1万ドル(だいぶピンハネされていることをベニーは知らない)と聞き、ベニーはこの生活から抜け出すチャンスとばかりにガルシアを連れてくると承知する。エリタから聞いた話によると、ガルシアはすでに自動車事故で死んでいた。ベニーはエリタをなだめたりすかしたりしながら、ガルシアの墓まで案内してもらう。墓を暴いて首だけ持ち帰るために。
このアベックがとても惨めったらしい、映画の主役にしてはみすぼらしすぎます。
二人が住むのはスラム街。ボロ車で移動して、到着先もトイレがろくにないような安ホテル。
ベニーはアメリカから流れ着き、ピアノ弾きの生活に嫌気がさしまくり。エリタは歌手をやりながら体も売っている様子。しかもベニーとつきあいつつもガルシアと二股をかけていた。
ベニーは金を手に入れ、本気でエリタと結婚しようと思っている。勝ち組負け組にわけるなら明らかに人生負け組のベニーとエリタ。中年と年増女のカップル。
監督は「ワイルドバンチ」のサム・ペキンパー。明らかに「ワイルドバンチ」と較べて、この作品にはアクション、話、キャラクター、ともかく映画自体から芯のようなものがすっぽり抜け落ちてしまっています。
ひょっとしたら失敗作なのかもしれませんが、自分はその映画全体を包み込んだ空虚な感じが、主人公の取るに足らない負け犬ぶりとシンクロして、とてもいい味を出していると思います。
救いようもない、スカッともしない、何かが欠けてしまっているような映画。
でも自分はペキンパーの作品の中では「ワイルドバンチ」の次に好きです。
まだ(2002年11月)DVD化されていないようです。発売してくれないかなぁ。されたら自分は買うつもりです。
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