フリックストーリー
1975年仏=伊。監督・脚本 ジャック・ドレー。出演 アラン・ドロン ジャン・ルイ・トランティンヤン。
官警と強盗の攻防戦。「男と女」のジャン・ルイ・トランティンヤンが、冷徹な殺し屋役に扮しています。アラン・ドロンは彼を追う刑事役。
75年制作というわりにはゆるいヴァイオレンス・シーンと思っていたら、それはわざと暴力シーンを省略して見せる演出で、後半には頭を撃ち抜かれるカットがありました。
とてもスピーディな展開ではらはら。非常に面白いです。どことなくフランスっぽい、ちょっと気取った感じもいいです。
殺し屋のジャン・ルイ・トランティンヤンが光ります。アラン・ドロンはただ煙草をくわえているだけかも。
クライマックス、今の映画なら機関銃連射、大爆発、ともっていくところを本作はそうはいかず、小さくまとめてあるところが新鮮。自分は物足りないとは思わず、好感が持てました。
出てくる車が戦後すぐという時代設定なのでクラシックカーばかり。黒い車が多く、みんなどれも似ているのですが、よくみると色々バリエーションがあります。シトロエンはマークが変わっていないようです。車種までは全く分かりませんが、どの車もかっこいい。一度は乗ってみたいモノです。

欲望
1966年英。監督 ミケランジェロ・アントニオーニ。主演 デヴィッド・ヘミングス。
監督がミケランジェロ・アントニオーニという芸術がかった神々しい名前だから、もっと格式張った文芸作品かと思っていたら、いきなりスタートから軽快な音楽、昔の邦画「野良猫ロック」あたりを彷彿させるようなノリで予想は裏切られました。
主人公はトーマス。ちょっと挙動不審、自己中な感じの若者。ろくな人間にも、才気も全く感じれないけど、役柄では売れっ子カメラマン。
彼はある朝、カメラで公園を撮影して回っていると、一組の歳の離れたアベックと出くわす。シャッターを切り続けていると、女の方が彼に気がつき、フィルムをよこせと迫る。トーマスは別のフィルムを渡して女を帰し、アベックの写真を現像、引き伸ばしてみると銃を持つ手と死体らしきものが写っていた。
夜、公園に行くと死体がある。
ここで何らかの謎解きやら、ヒッチコックの映画のように陰謀・謀略に巻き込まれていくのかと思うと、何もない。映画は何も起こりません。
公園からスタジオに戻ってくると、ネガと写真が消え、翌朝公園に行くと死体が消えている。
顔を白塗りにした若者たちがテニスコートでみえない球のテニスに興じていて、こぼれ球を主人公が拾ってやり投げ返す。
映画はこれで終わりです。
見る人によっていろんな解釈のできる映画です。自分は、当時のロンドンの空気(たぶんオースティン・パワーズの頃)が感じられて良かった。女の子が人工的。あと喪失感。空虚な感じ。不安定な現実。現実と虚構の境目がはっきりと認識できなくなっていくような、P.K.ディックの小説のみたいな不気味な印象を受けました。
特攻大作戦
1967年米。監督 ロバート・アルドリッチ。主演 リー・マーヴィン。
戦歴は輝かしいものがあるのに、軍隊の組織内では浮いているライスマン少佐。彼はノルマンディー上陸作戦前夜、囚人兵を率いてナチ高官の集う屋敷を襲撃する作戦に任命される。
あてがわれてた囚人らは死刑などの刑を与えられた重罪人ばかり。彼等は減刑とひきかえに、生存率の低い危険な作戦に参加を承知する。
12人の凶悪犯と少佐は訓練をはじめる。予想されたとおり、問題ばかり起きる。しかし、しだいに彼等は結束を固めていき、屈強の部隊へと変貌を遂げる。
戦争映画の傑作。実際の戦争シーンは終わりの方にあるだけで、全体の4分の3くらいは訓練・演習に費やしています。でも、戦場に行くまでの過程が非常に面白いです。役者も個性的すぎ。豪華。知っている名前もあれば、名前は知らずとも顔は知っている者ばかり。主役のリー・マーヴィンもいいし、チャールズ・ブロンソンもいい。でも自分が一番良かったと思ったのはジョージ・ケネディだったりします。
これをみると、映画は脚本が第一、と再認識。演出も、前に紹介した「傷だらけの挽歌」同様、四つに組んだ力強いもの。他のロバート・アルドリッチ監督の作品も見てみたいです。「北国の帝王」がみたいのですが、ビデオ屋にも、DVDの発売もありません。
最後の戦闘シーン。これが全くヒロイックなものではありません。普通なら、主人公たちは正義、もしくは同情を引くべき立場になければならないのですが、この映画は違います。
大部隊に立ち向かうのではなく、非武装のナチの高官、連れの女たちを地下室に閉じこめ、通風口からガソリンをまき、手榴弾を投げつける、というただの虐殺、人殺し。どんなに主人公たちが活躍しようと、やっていることはかなり残虐です。
戦争の本質から、娯楽だからと言って逃げていない映画。安易に美談にも、逆に戦争批判を繰り広げることもありません。

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