カラー・ミー・ブラッド・レッド
1965年米。監督 ハーシェル・ゴードン・ルイス。主演 ドン・ジョゼフ。
スプラッター・ムービーの始祖ハーシェル・ゴードン・ルイスの作品。パッケージには監督の他に、原案、脚本、撮影にルイスが名を連ねています。ルイスの作品はどれも未見のため、前から見たいと思っていたのですが、ビデオ屋に置いていません。DVDが出ていたので、買ってしまいました。本当は「2000人の狂人」を見たいのですが、これはどうも発売していない様子。
見終えての感想は、低予算映画の職人、といったところです。
話は画家アダム・ソーグが絵画制作に息詰まり、評論家にも「売れる絵を描くだけで芸術としては・・・」位のことを言われる始末。ある日同棲しているガールフレンドが釘で指をけが、その血を見たソーグは血で描く事を思い立ち、最初は自分の血で絵を描き始める。ちょっとしたいざこざからガール・フレンドを殺害、その血を使い絵は完成、1万5000ドルの高値を付けるが「売らない」売るために描いたのではなく、才能を証明するために描いたのだと。芸術に取り憑かれた彼はまた血を求め殺人を犯し、次の作品を完成させる・・・。
特殊効果もたいしたことがなく、ただ血糊をたくさん使っているだけ、内蔵も細かい物ではなくただぐちゃぐちゃした作り物が出ているだけで、その後の80年代のスプラッターブームのころの作品群と比べたら、ほほえましいような気さえしてきます。
物語もしっかりしていて、残酷描写を見せるためだけに破綻させてしまうようなことはありません。
チープな画面に仰々しい音楽をかぶせ、限られたロケ地、少ない登場人物、せこい特殊効果、やばいほどの素人演技、意外なほどしっかりした古典的な話の展開。作品に対してある程度の距離をおいて作ったであろうと思われる、おしつけがましくない、作家性を前面に出そうとしていない映画職人の映画。


2000人の狂人
1964年米。監督 ハーシェル・ゴードン・ルイス 主演 コニー・メイソン。
HG・ルイスの最高傑作と呼ばれている作品です。以前から見たい見たいと思っていたのですが、なんとタイトルを「マニアック2000」と変えてDVDが発売されていて、それをようやく入手することが出来ました。
アメリカの南部の小さな町、北部からきた車を招き入れ、100周年を祝う祭りが催されます。主賓となった6人の男女。村人たちはすべて亡霊で、100年前南北戦争の時に虐殺されていて、北部出身者に復讐をしようとしていた。
特撮もやはりおとなしく、期待したほどの残酷描写はありませんでした。そのかわり、ミステリーゾーンのような雰囲気。笑っている村人たちが不気味。でも、というか、やはりというか、2000人も村人たちはいなく、出ているのは50人くらい。せこい。そのチープさ加減がとてもいいです。しっかりロマンスも押さえていて、観客に向き合った映画作りをしていて、自分はとても好感を受けました。低予算映画は自己満足映画がおおいのですが、ルイスは常にエンターテイメントを心がけていたようです。
悪魔のいけにえ
1974年米。監督 トビー・フーパー。主演 マリリン・バーンズ。
「この映画は若者の惨劇の物語だ。いけにえの5人の若さが哀れさを増す。長く生きのびても同様の異常な衝撃には出会わなかっただろう。悪夢と化したドライブ。この事件こそ米国犯罪史上最も異様なテキサス電動ノコ大虐殺」とのナレーションで始まります。1973年8月19日の出来事。
これも低予算映画(機材は大学から16ミリカメラを借りていた)なのですが、H・Gルイスに比べたらかなり立派な劇映画です。ときおりユーモアをはさみ、キャラクターも立っていて、カメラアングルも凝っていたり、美術も規模が小さいなりにしっかり作られています。
この映画はとにかくパワフル。エネルギーがほとばしりまくっています。文字通り「絶叫」をあげて逃げまどうヒロイン。追いかけるレザーフェイス。唸るチェーンソー。狂気と笑い、苛立ち、圧迫感がごっちゃまぜになり、圧巻。
ラスト朝日を背にチェーンソーを振りかざすレザーフェイスの姿は詩的で美しい。長いトンネルを通り抜けきれいな景色が目の前に開けたような時に近い、すがすがしささえ感じてしまいます。

TOP