ロング・グッドバイ
1973年米。監督 ロバート・アルトマン。主演 エリオット・グールド。
レイモンド・チャンドラー原作のハードボイルド。有名な探偵フィリップ・マーロウ(映画の字幕ではマーロー)が主役。
友人テリー・レノックスを空港まで送った翌日警察に逮捕されるマーロウ。昨晩車で送ったテリー・レノックスに妻殺害の容疑がかかり、マーロウには逃亡を手助けしたということで。テリーは冒頭でフェラーリの(たぶん)デイトナに乗っていて金持ちらしい。取り調べを受けるマーロウ、しかしテリーの死亡により釈放される・・・。謎の美女。大富豪。ギャング等々怪しげな人物が登場、錯綜して迷宮のような映画、薄暗い画面がいっそう混迷を極めていきます。
画面いっぱいの人物のカットの連続。クローズアップが多く、カメラは物語を追う、というより人間を観察することにしつこく終始しています。
それぞれのキャラクターも(もちろんマーロウを含めて)よくできています。くせ者揃いの中でも特にギャングのボス、マーティがピカイチです。いきなりガラス瓶で愛する女の顔面を殴りつけるシーンに代表されるような、常に狂気じみた雰囲気がにじみ出ています。
ハードボイルド映画らしい、優れた作品です。劇中で70年代らしいところといえば、マーロウがやたら煙草を吸う、マーロウの隣人がヌーディスト集団でいつもあやしげな瞑想にふけっていたりする、そんなところに時代を感じられます。
バニシング IN TURBO
1976年米。監督 ロン・ハワード 主演 ロン・ハワード。
次期州知事候補の億万長者の父を持つポーラは、父の決めた婚約者(金持ち)コリンズではなく、貧乏人のサムと結婚したいと父に申し出ます。当然父は反対。ポーラは家に閉じこめられますが、窓から抜け出し父の59年型ロールスロイスでサムと共にラスベガスで結婚式を挙げようと逃避行をはじめます。
父とその部下がヘリコプター、車3台を投入して追跡。ポーラの婚約者のコリンズがラジオを通じて2万5000ドルの懸賞金をかけ、そのポーラを追いかけ爆走するコリンズを、コリンズの母親がこれまた2万5000ドルの懸賞金をかけ、マスコミ、警察、賞金稼ぎとねずみ算式に人を巻き込んでの大カーチェイス! ゲラゲラと笑ってしまう映画です。
一番はじめに出てくるポーラの愛車がフィアットX1/9。いい! 自分はX1/9は大好きです。もっと出番を多くしてもらいたかった。できればロールスでなく、こちらで逃亡してもらいたかった。名車です。そういえば最近めっきり町中で見かける回数が減ったような、まぁもともと台数のさばけた車ではないのですが、ファンとしては寂しい気が。ぜひともX1/9オーナーにはがんばって保存をしてもらいたいです。そんなに好きなら自分で買えばいいのですが、お金がないのはもちろんのこと、左ハンドルがネックになって例え宝くじに当たろうが買わないと思います。
ポーラに婚約を破棄されてしまうコリンズに注目です。映画がはじまって10分とたたないうちにポルシェのカレラを全損。その3分後にはダッジのチャレンジャーを全損。ポーラがラジオで、DJからの(ラスベガスへ逃避行の真っ最中だけど、コリンズと)婚約中では? との質問に対し「してないわ、パパの都合で利用されていただけ。彼には興味ないし、趣味も最悪よ」ときっぱり断われたのに、「きっと催眠術だ」と全くポーラの発言を信じません。自分は「愛」というものの真理を見たような気がします。誰しもがきっと、心の奥底ではコリンズのことを笑えないのでは?
コフィー
1973年米。監督 ジャック・ヒル。主演 パム・グリアー。
ビデオの巻末についているパム・グリアーのインタビューで彼女曰く「コフィーは映画的・政治的にこの国を映しだしている」この言葉通りの映画です。
タランティーノの「ジャッキー・ブラウン」主演パム・グリアーが若い頃主演したアクション映画。傑作です。
彼女のインタビューから分かることはこの映画は低予算映画で、50万ドルほどの予算で作られていて、編集代をケチるために長回しを多用したとのこと。それがいいリズムになって、この映画が味わい深い物になっています。
話は11歳の妹が麻薬中毒になってしまった看護婦コフィーが、単身麻薬組織に戦いを挑む、というもの。コフィーは超人ではなく凡人、ちょっと美人なだけで等身大のキャラクター。すぐれた体術も経歴も、後ろ盾もありません。彼女には強い意志があるだけです。時折気弱な面を見せながらも意志を貫き通します。
アクションシーンはスプラッタが効いていて、B級ホラーのようです。中でも首つり殺人の場面は出色の出来。「そりゃぁやりすぎだろ?」と思えるくらい、残酷さも度を超すと笑えてくるから不思議です。
麻薬犯罪をとりまく悪循環が伝わってきました。最後まで見終えても映画自体がスカッとしないところが冒頭のパムの言葉通り「映画的・政治的にこの国を映しだしている」所以でしょう。根が深いし、断罪しようとしたら関係者が多すぎます。

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