不良番長
昭和43年。梅宮辰夫。
新宿(劇中では「ジュク」と呼んでる)で活動する梅宮辰夫率いる愚連隊カポネ団。スケコマシで収入を得ていた彼らが、やくざのお嬢様とかかわったことから、大型組織暴力団との抗争へと発展する。女の子をたぶらかすくらいしか能がなさそうなダメ愚連隊たちが、仲間の死をきっかけに殴り込みをかけにくシーン、5人バイクで併走するシーンはワイルドバンチの死の行進のよう、といったらいいすぎですが、意外にも骨太な展開だったのにはびっくり。もっとおちゃらけているのかと思っていました。
梅宮辰夫は最後まで大組織には属さない、反骨精神を貫き通します。
砂浜をオフロードバイクでなく、ふつうのバイク(車種は不明。今で言うならビジネスバイクみたいな形)で爆走、なぜかギターを弾いたり、トランペットを吹いてみたり。「ビートロジー」と言う単語や、サイケデリックなトリップしたような酒場、タクシーの初乗り運賃が100円だったり、お酒に目薬をいれてみたりと当時の雰囲気が満喫できます。
あと古い映画でよく見かける光景は車になぜか人が満載なこと。この映画でもお嬢様をナンパした谷隼人たちが車の中にすし詰めになりながら移動します。

狼の紋章
昭和48年。監督 松本正志。主演 志垣太郎。
平井和正ウルフガイシリーズ映画化。
冒頭「♪狼はひとり走る〜走る〜ひとり〜」とろうろうと歌い上げすでに脱力感いっぱいのオープニング、怒濤のドラマのスタートです。
「なんだこの野郎! ガンつけやがって!」とガンをつけただけでナイフでチンピラ(いまのキレる若者よりもキレるのが早い!)に刺される主人公、これが犬神明の登場シーン。偶然英語の美人教師がこれを見ている。犬神明は狼人間という設定なので傷もすぐ癒え死なない。後日美人教師の学校に犬神明が転校してきて二人は再会。その学校は風紀が乱れきっていて(愛と誠のよう)松田優作ひきいる不良グループが学園を支配していた。当然犬神明は目をつけられ来る日も来る日もリンチを受ける。無抵抗な犬神明。彼の母親はアラスカで人類学者として調査をしていたが、諜報活動と間違われヘリコプターからマシンガンで撃ち殺されたという設定。
一般生徒は「学園暴力追放」をかかげ集会を開く。仲間に加わらない犬神明。「学園自治は我々の手で!」「自己批判させろ!」アジテーションの中ヘルメットをかぶった不良グループがゲバ棒片手に乱入。一般生徒は総崩れ。その時美人教師をかばい犬神明がリンチの実行犯の学生を殺害。
この映画の最大の見所は松田優作です。彼はやくざの息子で自宅の地下室で美人教師をレイプします。柔道技で何度も何度も美人教師を投げ飛ばし、ふんどし一丁(何で!?)での強姦。この映画のクライマックスといえます。この映画は「松田優作全仕事展」なんて企画があったとしても入れてもらえないのでは? 心配です。これを見ずして松田優作を語るなかれ、といったことろです。ビデオ屋でも置き場所が松田優作コーナーではなかった。邦画SFコーナーに息をひそめるようにして置いてありました。
犬神明と松田優作の対決シーン。美人教師が止めにはいると松田優作が一喝。「男と男の勝負なんだ!」どのツラさげて「男」なんだ? 松田優作。
飛び散る血しぶき。日本刀振りかざす高校生松田優作。はためく日の丸。日本刀で串刺し。落ちる主人公の指。なぜか半裸で吊される美人女教師。吠える志垣太郎! 狼のぬいぐるみに噛みつかれ阿鼻叫喚のやくざたち!!
とにかく夢でうなされそうな濃い1本。薄味で女の子に媚びを売っている今の(邦画、洋画を含めて)映画に物足りなさを感じている人、そんな人にこの「狼の紋章」はオススメです。今こそ見直されていい(ような気もするし、このまま忘れ去られてもいいような気もする)映画です。
青春の蹉跌
昭和49年。監督 神代辰巳。主演 萩原健一。
萩原健一扮する大学生は成城の劇中で言うなら成金のブルジョアの叔父に援助を受けながら、司法試験合格を目指しています。少し屈折感のただよう青年。高校生の頃は学生運動の闘士だったらしい。叔父の話から分かります。ゲバ棒振り回して、留置場はいって、「あのころは日本中の学生がキチガイみたいだった」もうこのころは学生運動は下火になりつつあったのでしょう。授業料値上げ反対の運動に署名もせず、「あいつらまじめだな」とショーケンと友人は語ります。署名を求め運動資金のカンパを求める学生の口調も「我々の闘争〜」「我々は帝国主義〜」と言った感じで堅く、すぐ「我々」という言葉を使います。我々は、ではなく、おまえ個人はどうなんだ? と学生運動を経験していない自分はつっこみたくなります。
萩原健一には桃井かおり扮するの恋人がいます。萩原健一が家庭教師をしている教え子です。高校生役にしては老けているような・・・。顔が渡辺えりこに似ています。役柄が粘着質で萩原健一でなくても手を切りたくなるような女です。小坂明子の「あなた」が流れています。
萩原健一は成城の叔父の娘(壇ふみ)と婚約します。妊娠した元恋人の桃井かおりが邪魔になり、雪山で絞殺します。面白かったのは産婦人科のシーン。妊娠5ヶ月と医者に告げられ、萩原健一は医者におろしてくれ、といいます。すると医者は5ヶ月で堕胎は母子に危険が及び手遅れ、人殺しになる。「法律ってものを知らないのか?」法律がなくても人殺しはいやだ、と法律家を目指す萩原健一に説教します。ブラックユーモアがきいています。
壇ふみと結婚した後、警察の手が伸びてきます。アメフトの試合のとき刑事たちがやってきて、試合の最中にあっけない幕切れが・・・。
熱気も何もない、しらけた主人公の日常をたんたんと映画はすくい上げていきます。

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