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ロード・トゥ・パーディション |
米。監督 サム・メンデス。主演 トム・ハンクス。
アメリカ禁酒法時代を舞台にしたギャング映画。
主人公マイケル・サリバンはアイルランド系ギャング、ジョージ・ルーニーのヒットマンをしている。家族は妻と息子二人。親分のジョージの信望も厚い。
ある雨の夜、マイケルはジョージ・ルーニーの息子コナーと二人でやった殺しの現場を、長男に目撃されてしまう。それからマイケルの人生が狂い出す。
コナーは口封じのためマイケルを殺そうと企む。コナーの罠を辛くも逃れたマイケルは家に戻ると、妻と下の息子は殺害されていた。
マイケルは復讐を誓い、上の息子マイケルジュニアと共にジョージ・ルーニーとコナーに戦いを挑む。
けっこう楽しめました。細かいところにまでお金をかけていて当時の雰囲気が味わえ、さすがアメリカ映画といった感じ。特に自分は車に注目、とても良かったです。
で、良かったのですが不満なところも。後半が気に入りません。
(ここから先は未見の人は読まないでください)
マイケルがジョージ・ルーニーを殺す場面、コナーを殺す場面が急にスローモーション、音なしとミュージッククリップのようになり、現実感がなくなります。
監督はこの殺戮シーンが血なまぐさくなるのをさけたのでしょう。それでこの映画は単なるヴァイオレンス映画ではなく親子の情愛を描いたヒューマンドラマである、という印象を強くしようとした、主人公が観客に嫌われるのをさけようとした、さらに意地悪く言うならアカデミー賞を見据えての展開です。
スローモーションで撮るなんて中途半端なことをするのではなく、ばっさりその場面をカットしてしまうか、それとも逃げずに真っ向から描くかしていればこの映画はかなりポイントが高かったと思います。作り手がマーケティングを気にしすぎ。最大公約数のストーリー展開。それはそれで悪くはない、でも競馬でも本命対抗で決まってしまうレースみたいな物で安心はするけどおもしろみがない、かといって2頭とも穴馬で決まるレースは現実味がなくてつまらない、どちらか1頭でも穴馬が突っ込んでくるような、適度に期待を裏切る映画が面白いかと自分は思います。
4分の3くらいまでとても良かったので残念。でもその4分の3すら面白くない映画が多いので、何のおもしろみもないお約束すぎるラストだとしても、まぁ合格点です。
採点。
DVDになっても買わない。
ビデオ化しても借りない。
でも面白かった。
一緒に見た人のコメント「まぁまぁ面白かった。最後が気に入らない。みえみえ」 |
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ダーク・ブルー |
チェコスロバキア。監督 ヤン・スヴィエラーク。主演 オンドジェイ・ヴェトヒー。
第2次世界大戦。チェコスロバキアはドイツに無血占領される。
チェコ空軍のフランタと新米パイロット・カレルの二人は国外に脱出。イギリスに渡り、他のチェコ人パイロットとともにドイツ軍と戦う。
とても戦争映画にしては印象は地味。爆発シーンも空中戦も盛り込まれてはいるのですが、別にだれも超人的な働きをするヒーローではありませんし、意表をつく作戦とか、高揚感のある戦闘シーンは皆無。あっけないです。劇的に盛り上がっていない分、実際の戦場はこんなものだったのかなぁ、とリアルな感じがします。
リアルというか夢がないのはドラマの方も一緒で、フランタの運命、カレルとフランタの二人が好きになる年増女のショボさ、そんな女をはさんでのどうでもいいように思われる諍い、とても現実感漂うというか(自分は日本人だから生活感とまでは行きませんが)、地味。
だからといってくだらない映画かというとそんなことはありません。フランタを救出に向かうカレル、しょぼい映画の中でも唯一のヒロイックな行動、とても主人公たちが英雄から離れた設定だったため光ります。あまりにもヒーローとはかけ離れた人間が極限状態で見せたヒロイックな行動。泣きはしませんでしたが感動です。
パンフに宮崎駿の「飛行機は軽自動車みたいなもの」という言葉があります。飛行機を特別なものではなく、もっとお手軽な車の延長線上のような描き方をこの映画ではしています。自分は見ている最中「飛行機は俺の車(べレット)に似てるなぁ」と思いました。エンジン音、振動、エンジンに車体(機体)がくっついているような、今の車にはない、エンジンがやたら自己主張をしてくるところが共通しています。
チェコスロバキアはナチに無血降伏してしまうけど、空軍の飛行機が複葉機、対するドイツ軍はメッサーシュミット、これじゃぁ絶対勝てないなぁ。多分時の権力者の賢明な選択だったのでしょうが、主人公個人の人生なんて周りの状況に振り回されっぱなし。これはきっと誰にでも言えることだと思います。
でもどんな状況であれ、人間は生きていきます、あるいは死んでしまいます。この映画ではその運命の分かれ道、みたいなものを非常に淡泊に描いています。アメリカ映画で育ち、好きな自分には少し物足りなく感じました。でもたまにはこういう淡々とした映画もいいかも。
採点。
DVDになっても買わない。
ビデオ化しても見ない。
でも面白かった。
一緒に見た人のコメント。「そこそこ。つまらないわけじゃないけど、カレルが若すぎ。フランタと歳が離れすぎ」 |
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パープルストーム |
香港。監督 テディ・チャン。主演 ダニエル・ウー。
香港海上で化学兵器リシンXを積んだ北朝鮮貨物船がテロリストに襲われる。そのときテロリストの一人が頭部を強くうち負傷、対テロ組織ATFに捕らえられる。
捕らえられたテロリストの名はトッド。父親はカンボジア出身、ポル・ポト派クメールルージュで訓練を受けた全世界で指名手配を受けるテロリスト、ソン。
トッドは記憶を失っていた。ATFはトッドから情報を引き出せないとあきらめ、身分をATFの潜入工作員と洗脳してソンに送り返し、ソンの企みを阻止しようとする。
傑作。香港、台湾の映画賞を多数受賞したそうです。
とても強引と言うか、説明を最小限に押さえた、一歩間違えば観客を置いてきぼり、独りよがりにもなりそうなスピーディな展開が心地よいです。
主人公が善と悪の狭間で悩みます。テロを起こし殺人を犯す側になるか、殺人を阻止する側になるか。ATFに洗脳されたあとソンの組織に潜入。過去の記憶がフラッシュバックして、気持ちはATFの一員でいたいのに、実際はテロリストであったと素性がはっきりして、でもそれを認めたくない、人生を選択したいと苦悩します。主人公の気持ちが良く伝わってきます。
そして主人公だけでなく、他の登場人物も各々善と悪を抱え込みながら、映画は最後まで疾走を続けます。
とても面白かったです。誰も完全な悪役でも、善玉でもなく、悪いところもいい面も混在しているキャラクター造形、おおざっぱのように見えて実は細部までこだわった作り、CGはしょぼいですが、そんなことは気にならないくらい力のある映画。セオリーを無視した音楽の垂れ流しも深層心理を刺激します。
自分はヒロインが「選択」するところと、地下道で主人公の前を子供が走るシーンで胸が熱くなりました。
採点。
DVDになっても買わない。
ビデオ化したらもう一度みたい。
とても面白かった。
一緒に見た人のコメント。「トッドは小泉孝太郎。ソンはマイク真木。面白かった。主人公が迫真の演技」
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