21グラム
米。監督 アレハンドロ・ゴンサレス・イナャリトゥ。主演 ショーン・ペン。
交通事故を起こした前科者。その事故で夫と娘二人を失った女。その夫から心臓移植を受けた男。この3人の話。
前科者はキリスト教に心酔。妻と子を捨てる。女はドラッグ中毒に舞い戻り、心臓を移植された男は妻と別れ、移植もとの妻である女を訪ね恋に落ち、女の復讐につきあう。
それぞれが荒れた生活からささやかな生活を手に入れ、でもそれもほんのちょっとのバランスが崩れたせいで失い、それでも「人生は続く」と再生を果たす、模索する映画です。
正直、映画の内容は退屈で、面白くありません。他人事感が強く、暗い映画、登場人物がえんえんと苦悩しているだけでさっぱり。
でも映画のスタイルは斬新。
フラッシュ・フォワードを多用、水前寺清子の歌ではありませんが「3歩進んで2歩下がる」状態です。まるで酔っぱらいの愚痴のような進み方。
細切れの映像が素晴らしく、荒れた画像、密度が濃く、力強い。内容はつまらなくても、最後までこの映像のおかげで見飽きることはありませんでした。
ヒロインのナオミ・ワッツが35歳とは驚き。もっと若く見えました。とても美人ですが、口元が含み綿をしてるみたいで、「ゴッド・ファーザー」のマーロン・ブランドを思い起こさせます。妹役は途中で「ゴースト・オブ・マーズ」の首チョンパの娘だと気がつきました。ショーン・ペンの奥さん役がシャルロット・ゲンズブールだったのに驚き。あの美少女が。まぁ彼女ももう33歳だと知り納得。でも一番驚いたのがベニチオ・デル・トロ(巷ではトロ様と呼ばれているらしい)が自分と同じ1967年生まれだと言うこと。ひぇー、そうか、自分も世間からみればこんなに老けたポジションにいる、ただのおっさん(もちろんトロ様よりもはるかにみすぼらしい)だったのかと思い知らされました。

一緒に見た人の感想「面白くなかった。どいつもこいつもダメ人間で、ただのろくでなしがうじうじとしている映画。あきた。「世界の中心でナオミが叫ぶ」って感じで勝手にやってろ、だった。それと時間軸の解体にもほどがある。監督もいい気になりすぎ。暴走しすぎ。★」

4人の食卓
韓国。監督 イ・スヨン。主演 チョン・ジヒョン。
「猟奇的な彼女」のチョン・ジヒョン作品。彼女が満を持して出演したモノと聞き、期待して見ました。
結果は、つまらなかったです。
主人公はインテリア・デザイナーのジョンウォン。地下鉄で偶然幼女殺害事件の現場に居合わせ、なぜか自分の家の食卓に彼女らの姿が。嗜眠症という精神障害に陥ってる女、ヨン。彼女は食卓に座る幼女の姿を目撃する。
出だしはとても怖く、ホラーっぽく合格点なのですが、見ているうちに解体しはじめ、いつのまにやらトラウマ合戦になり、こんなに俺って傷ついてる、こんなに俺って繊細なの、といった風で辟易。
先に見た「21グラム」と同じテイストで、鼻につくといったらありゃしないです。

映画の話はあとは悪口くらいしか思い浮かばないので映画館の話。見た映画館は新宿のシネマスクエアとうきゅう。昔は縦長の小さいパンフでしたが、今は真四角。シナリオが収録されているのは昔から。昔はバックナンバーも売っていたのですが、今はその紹介はのっていません。
シネマスクエアとうきゅうは昔から良質な映画をやっていて、自分の記憶の限りでは「マリアの恋人」「メフィスト」「バード」「ラ・バランス」等々。でも自分は名画座(よくここの映画が流れていったのは大塚にあった名画座。残念ながら今は閉館)で見ていて、パンフは持っているのですが、本場シネマスクエアとうきゅうで映画を見たのは去年「MUSA」がはじめて。
今回行ってあらためて気がついたことは、
○館内飲食禁止。
○やたら細長い見づらい映画館。
○イスが可倒式ではない。
といったところです。

一緒に見た人の感想「つまらない。でもあとあと思い返したら、それほどひどい映画でもなかったかも。ちょっとホラーという先入意識が強すぎた。エレベーターのネコ女のところがリアル。ああいう女はいる。嫌い。それと主人公の嫁が怖い。えばりすぎ★★。

ブラザーフッド
監督 カン・ジェギュ。主演 チャン・ドンゴン。
「シュリ」の監督カン・ジェギュの渾身の一作。
1950年。ソウル。貧乏な兄弟の話。兄は家計を助けるために靴磨きになり、弟は心臓の弱い高校生、秀才。兄の婚約者は店を手伝い、貧しいながらも和気あいあいとした家庭。
北朝鮮の侵攻が始まり、事態が一変する。ソウル陥落。弟は強制的に徴兵され、兄も弟の後を追い軍隊に入り、家族は離ればなれに。
軍隊に入ると、弟を除隊させるため、兄は勲章をもらおうと危険な任務に志願して武功を立てていく。弟は昔の友人を殺したり、手柄をたてるために戦友を見捨てたりする兄についていけなくなり、ついには兄と弟は決裂してしまう。
熱い映画。
弟を想う兄の姿に感動。
家族らのために靴磨きになったことを後悔していない、と語る場面を筆頭に胸が熱くなる箇所多数。
それを善人の美談にしあげるのではなく、血に汚れていく兄弟から逃げていないところがいいです。
この兄弟がとにかく殺しまくる映画です。撃ち殺し、突き殺し、焼き殺し、殴り殺す。敵も味方も、民間人だろうが、朝鮮人同士がひたすら問答無用でぶっ殺しまくります。
戦争は殺し合い、というのをまざまざと実感させられます。
「プライベート・ライアン」の二番煎じっぽい作りですが、自分はこっちの方が好きです。向こうは映像やディテールは最高ですが、肝心の話はたいして面白くありません。それに胸も熱くなりません。でも傑作には違いありませんが。
兄の行動に、そんなアホな、とツッコミみたくなる部分もありましたが、自分には兄役のチャン・ドンゴンの顔が「仁義なき戦い・広島死闘編」の北大路欣也に似ているように思えて、「殺れ!殺ったれい!」と応援しながら見ていました。

本編が始まる前の宣伝に、自民党のコマーシャルがありました。資金力の違いを感じました。今週の参院選はどこに入れるべきか、大変悩む選挙です。

一緒に見た人の感想「面白かった。すさまじい。朝鮮戦争なんて知らなかったので、ちょっとウンチクを仕入れることができた。すごい歴史があったのだなぁ★★★★」

TOP