天国の日々
1978年米。監督・脚本テレンス・マリック 主演リチャード・ギア。
1916年。シカゴから職を求めて季節労務者となった青年ビル、恋人のアビィ、妹のリンダの3人。アビィも妹と言うことにして麦刈りの仕事に就く。アビィに若き農場主が求婚。アビィは断ろうとするが、貧乏暮らし(ホントに住む家もない、外でわらにくるまって寝るような乞食同然の生活)に嫌気が差していたビルは、アビィに結婚を勧める。農場主は余命1年と宣告されていて、結婚生活も長くはない、と説得。
3人は豪邸暮らしを始める。
アビィはしだいに農場主に惹かれていき、ビルは失ってみてはじめてアビィへの愛を知り、農場主はビルとアビィの関係を疑い始める・・・
監督のテレンス・マリックはカルト的人気を誇るカリスマ監督。この「天国の日々」のあと「シン・レッド・ライン」まで20年間メガフォンをとりませんでした。「シン・レッド・ライン」作成のとき、大スターたちが大挙出演したがったのは有名な話。
絵画のような美しいアメリカの田舎の風景、素晴らしい映像詩。直接人物の写っていないカットの挿入の仕方が絶妙。自分がもしプロデューサーなら無駄なカットはすべて削らせて、せっかくの詩情も何もなくなってしまいそう。
ただちょっと面白いんだけど退屈で、眠くなります。テレンス・マリックの映画はどれもそうです。でもこの「天国の日々」が一番面白いと自分は思いました。

語り手のリンダが可愛い。角度によっては広末涼子に似ている時もあります。
1916年とは「ワイルドバンチ」の舞台と同年代。これをみるとほとんど近代。車はわんさか、オートバイも、複葉機さえも出てくるし、農業の場面ではトラクター、脱穀機も使っています。
生活の安定のため恋人を差し出してしまう、ていうのはどんなものだろう? 自分なら反対。絶対渡さない。なーんて事を言えるのもビルの立場ではないから? ビルがアビィへの愛に気がつき農場主に嫉妬し始めるのも、衣食住が足りて気持ちに余裕が出てきたから、というのが実際の(おそらく8割方)理由ではないかなぁ。残りの2割はかつて自分のモノだったのが人に取られて面白くない、といった人間らしい感情と言うことで。
ビルはどうしようもないやつだけど、人間とは弱いモノなのだ、と体現していて、彼を否定することが出来るのは本当にクリーンな人間か、映画を見て想像力を働かせられない、感応力のない鈍い人間でしょう。
こういった微妙な感想を持たせ、考えさせてしまうのも、熱狂的な人気を誇るこの映画の魅力の一部なのかもしれません。
ただやっぱり自分の理想は、男ならどんな事情があろうとも恋人を売るような真似をしない、ですね。



時計じかけのオレンジ
1971年英。監督 スタンリー・キューブリック 主演 マルコム・マクダウェル。
近未来、ロンドン。主人公アレックスは不良仲間を率い、ケンカ、オヤジ狩り、ある作家を不具にしその妻をレイプ、としたい放題。でもある家に押し込み強盗に入ったとき仲間に裏切られ逮捕、刑に服することになる。模範受刑者として過ごすも早く刑務所を出たいアレックスは政府のうちだした犯罪者矯正のための洗脳に志願、暴力とセックス、ベートーベンの第九に強い拒絶反応を起こす体にされ街に帰ると・・・
俗に言う名作。昔、もう1985年頃、オールタイム選出のぴあテンでこれと「2001年宇宙の旅」が必ず上位に入っていました。
でもこの映画、面白い?
自分はあまり面白くないです。1985年、17才の時に映画館で見て(写真はその時に買ったパンフ)、その時も併映の「ブレードランナー」のほうが面白く、「時計じかけのオレンジ」は退屈、でも未来ファッションが70年代っぽいのが新鮮かも、と思ったくらいでした。
映画館で初めて見てから、その後何度かビデオで見ましたが、そのたびに感想が微妙でした。面白くない、つまらないわけではないし、良くできてるとは思うけど、自分にはしっくり行かない、どうでもいい映画。たぶん自分の脳細胞には理解できない魅力を持った映画なのでしょう。
自分はキューブリックの作品はすべてみたわけではないですが、この「時計じかけのオレンジ」や「2001年宇宙の旅」なんかより、「フル・メタル・ジャケット」「バリー・リンドン」「博士の異常な愛情」「突撃」「現金に体を張れ」これらの方がずっと面白かったです。

ワイルド・ギース
1978年英。監督 アンドリュー・V・マクラグレン。出演 リチャード・バートン リチャード・ハリス ロジャー・ムーア。
エドワード卿にイギリスに呼ばれた元アメリカ軍フォークナー大佐。アフリカの某国、独裁者エンドファ将軍に捕らえられているリンバニ大統領の救出を持ちかけられる。彼は承知。昔の仲間を訪ね歩き、傭兵を募集して訓練、アフリカに乗り込む。救出は作戦通り運び、いざ飛行機で逃げ出そうという際にエドワード卿に裏切られ、50人の部隊とリンバニ大統領は敵陣のまっただ中に置き去りにされてしまう。
しぶい。いまいちはじけていないかもしれませんが、とても面白いです。登場人物もよく描けていて、主人公も含め老人が多く、枯れた味わい満点の男の映画です。
作戦参謀のレイファーがとくにいい。もう引退をしているのに加わることになり、一人息子を残して出陣。このシチュエーションだけでも涙々。寄宿舎に入っている息子に会いに行く場面、どこかで同じような光景を見たなぁ、と思ったら、ラッセル・クロウ主演の「プルーフ・オブ・ライフ」にもそっくりなシーンが。
他にも南アフリカ出身の黒人に偏見を持つ白人と、リンバニ大統領との交流。「黒助」と最初は読んでいたのが、しだいに大統領の人間性に惹かれていきます。
アクション映画としてはまぁなんとか合格点。ちょっと敵役の黒人兵たちが弱すぎるのが残念。でもそんなこと気にならないくらい、ドラマとして良くできています。

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