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情無用のジャンゴ |
1966年伊。監督・脚本 ジュリオ・クエスティ。主演 トーマス・ミリアン。
騎兵隊から大量の金を盗んだ盗賊団。いざ分配の時、アメリカ人たちがメキシコ人を皆殺し。金を持って行く。
主人公(ジャンゴという名前ではない。劇中では名無し。ストレンジャーと町の住民らには呼ばれる)もメキシコ人とのハーフなので殺されるが、インディアン二人に助けられ蘇る。
盗賊団たちは近くの町へと行くが、金を持っていることを知られた町の住民たちになぶり殺しにあい、金は居酒屋の主人と雑貨屋の主人に取られる。その金を狙うソロ率いる黒服のホモ集団。そして黄金の弾丸を装填した銃を手にした主人公が絡みます。
パッケージの裏面に「〜世界中を驚愕させた異色マカロニ。シュール・レアリズム西部劇をも評され、アレックス・コックス、ジョー・ダンテが絶賛、ジム・ジャームッシュは本作をネタに「デッドマン」を監督した、まさにカルト作だ」と仰々しいことが書いてありますが、そんなに凄い映画ではありません。
昔は残酷描写やインモラルな雰囲気がセンセーショナルだったんかもしれませんが、今見るとぬるいです。肩すかしです。
正常な人が不正確な西部劇を作ったのではなく、異常な人がそのひとなりに正確に西部劇を作ろうとしたらこんないびつな物ができあがってしまった、と言った感じです。だからショッキングな描写も見せ物的なおもしろさを感じられない作りになっているのかもしれません。
でもいろんな人に影響を与えているらしいですね。ジム・ジャームッシュの「デッドマン」のどこがパクリなのか自分は分かりません(死んだ主人公がインディアンにより蘇るところらしいですが、「デッドマン」の方が100倍はいい映画)。マリオ・ヴァン・ピーブルズの「黒豹のバラード」に黄金の弾丸が出てきますが、この映画の影響?
自分は異色西部劇なら、「エルトポ」や「「黒い神白い悪魔」「アントニオ・ダス・モルテス」の方が今見ても面白く、古びていないと思います。
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ペイルライダー |
1985年米。監督 クリント・イーストウッド。主演 クリント・イーストウッド。
ゴールド・ラッシュの西部。カーボン渓谷で砂金掘りをする集落。土地の有力者がその金鉱ほしさに嫌がらせを繰り返す。
そこに登場したのが流れ者の「牧師」。彼は開拓民たちの願いを聞き入れ、彼らに荷担して土地のボスと対決する。
「シェーン」を下敷きに作ったそうです。だから、というわけかどうかはわかりませんが、なかなかアクションシーンがはじまらない。ガンファイトを期待していると裏切られます。
ドラマの方も自分はあんまり。少女はともかく、母親の方の描き方が都合が良すぎ。とても薄っぺら。開拓民に加担する理由も心情も伝わってきません。これも都合がよすぎ。
宿敵のストックバーンとの因縁が最後まで明かされないのは良かったかも。ここは新鮮。でも対決場面はたいしたことありません。ストックバーンとその手下の登場の仕方は良かったのですが、あとはしりつぼみ。アクションの高揚感も、あるいは暴力のリアルな描写もなく、凡庸。
画面は照明をあまり使っていないのか、ちょっとドキュメンタリーっぽい、雰囲気のある画面。それと大男(007のジョーズ)とボスの息子がいい味。
「許されざる者」にステップアップする前の習作のような出来。文句は言いましたが、つまらないわけではなく、最後まで一気に見ることができたので、そこそこのおもしろさです。 |
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シェーン |
1953年米。監督 ジョージ・スティーブンス。主演 アラン・ラッド。
西部劇の不朽の名作。自分も約20年前、中学生の頃からテレビ2回、ビデオで今回と見るのは計3回目。
実は昔見たときはそれほど面白いと思わなかったのですが、今回見たら、これがとても良くできた胸にしみる映画です。まぁ世間の評価に自分の感覚が追いついただけです。
舞台はワイオミング。映画秘宝で知ったのですが、物語の背景にはジョンソン郡戦争があるらしいです。牧畜業者が殺し屋を雇って開拓移民を駆逐する事件ですが、同じ題材の「天国の門」とはだいぶ違います。どちらも傑作ですが。
開拓民のスターレット家にふらりとやってきたシェーン。そのまま居着くことになり、開拓民を追い出しにかかっているライカーたちと対決して、また町を去っていく。見送るジョーイ少年の「シェーン、カンバーック!」という台詞が有名。
テレビ放映を2回見たのですが、それぞれラストの吹き替えが違っていて、一方では「シェーン、帰ってきてー!」と日本語、もう一方はそれまでばりばりの日本語をしゃべっていた少年が「シェーン、カンバーック!」といきなり原音に切り替わりました。全部日本語で通した方が違和感がないかも。
ドラマも良くできています。子供とのふれあい、男の友情、ほのかな恋、ライカー共々シェーンも時代に取り残された男であり、過去の遺物同士の対決。
アクションシーンも少ないのですが(昔はそれが不満だった)、かなりの迫力。銃声が重く響き、最後の対決もシェーンは4発しかうちませんが、圧倒されます。
昔のカラー映画らしく昼なのか夜なのか分からない場面(同じシーンなのにカット事に違う)、セットとロケの強引な抱き合わせとちぐはぐなところもあったりしますが、よく使われる言葉で「詩情豊かな」と言うとおりの映画で、浸っていられます。
あと気になったのがはじめの食事のシーン。貧乏な開拓民という設定のくせにいい物食ってる。ビスケットにパイまで。自分よりもいいもの食べていやがります。
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