掌蹠膿疱症
              留萌歯科医師会員

                   羽幌町マルト歯科クリニック

                            森山 誠一

歯科用金属が口腔粘膜などに接触することによって遅延形アレルギーがおこることは1928年のフライシュマンの報告以来広く知られている。

  歯科で使用されている金属は約20種類におよび合金としては インレー、クラウン、ブリッチ、デンチャー等に そして歯科用薬剤としてセメントや陶材の中にも使われており これらの合金がまれにアレルゲンとなることが指摘されています。

金属アレルギーは主として感作リンパ球が関与するために細胞免疫型とも呼ばれている。

体内に取り込まれた金属はイオンとなって局所のタンパク質と結合します、これを表皮内にあるマクロファージ細胞が発見してT細胞にその情報を伝達しリンパ節でその抗原に反応して標的細胞を特異的に傷害するkiller-T細胞を生産し感作が成立する、そして再度金属が表皮内に浸入し表皮細胞に結合するとそれをnon-selfと認識して破壊するために皮膚炎がおこると考えられる。

臨床像としては口腔内では湿疹、扁平苔癬、舌痛症、粘膜ビラン 等

遠隔部では掌蹠膿疱症である。

金属の中でよく感作するものは Hg, Ni, Cr, Co, Sn, Pd,などである

歯科外来では問診が大切である。

金属にかぶれたとする患者は20%以上も

あるとの
報告もある。

今度、歯科が原因で発症した症例

          発症1)歯科用薬剤による。

          発症2)メタルクラウンによる。

発症例を報告する。      いずれの患者もインプラント治療をうけている。

症例1 女 性 昭和37年生まれ
     初診日 平成9116
     主 訴 前歯部ポンテック下部への食物
         カン入。審美的治療を希望。

    H911月   _2|インプラント埋入
                (図14

1

初診時の口腔内
左上2 欠損  左上3・1 支台のブリッジ

初診時のオルソパントモ
2
4
3
9
8
7
6
5
10
11
13
12
14
15
16

同月ブリッジ除去
左上2       インプラント埋入
4ヶ月後上部構造装着

上部構造装着後のオルソパントモ

H106月より古い冠除去
根管治療を始める(図89

根管治療前の口腔内
根充後の口腔内
(図5
(図67
酸化亜鉛含有根充剤
平成1110
平成122

検査の方法としては、パッチテストがある。安全な検査法として保険の適用も認められる。この方法は背中を使用、試薬を48時間密封貼付し、試薬に対する皮膚の反応から感作の有無を判定する方法。48時間中は入浴禁止、汗をかく運動や飲酒禁止貼付から2日目にパッチを除去、2時間後・3日目・7日目の反応を判定する。

再根充後の下顎口腔内
上部はハイブリッドセラミック
        (エステニア)

再根充後の上顎口腔内

平成131
症状はかなり改善された

症例2)
初診時の症状
(図12
(図13141516)平成123月 
左上
532 抜去
初診時上顎
初診時下顎
上顎前歯動揺のため抜去後
H1212月現在の口腔内
オルソパントモ H1212
下顎ブリッジはスカルプチャー
にて修復
H1212月症状ほとんど消失する

上顎欠損部は患者さんの希望に
よりインプラント行う 
H131

上部構造装着後のオルソパントモ
H135

上部冠装着 H135

H139月 症状全く消失

結果と考察

  臨床の場では手を見ることは無いので歯科が原因で発症していることを見逃す場合がある。この症状は手のひら、足の裏に対称性に生じる多発性の無菌性膿疱で、膿疱の周囲に紅斑が見られる慢性疾患である。膿疱は組織学的に角属下膿疱である。

う歯、歯肉炎、副鼻腔炎、中耳炎、虫垂炎、胆のう炎などの慢性の感染を合併することがある。男性より女性に多く31の割合で女性の方が多い。溶連菌など免疫応答の異常があることもある。

又、関節炎を合併することもある。この疾患はタバコの喫煙が高率で関係するともいわれている。

この治療方法は ステロイド、ビタミンD3の外用を中心として症状に合わせて、抗生剤等を投与する。

いずれの患者もインプラント治療を受けているが症例Tのケースはインプラント埋入後約2経過後であるため他の金属によるもの

と考えられたが原因は酸化亜鉛(根充剤)であった。

症例Uは口腔内メタルが原因で発症したケースで患者は他の病院数ヶ所長期間に渡り通院したが治癒せず歯の治療で当院へ来院。

来院時の問診で手袋を使用していたため掌蹠膿疱症の疑いを持ち皮膚科にてパッチテストをおこなってもらった。原因が口腔内のメタルと分かり全ての金属を除去、症状は数ヵ月後にはかなり改善された。

上顎前歯欠損部へは患者さんの希望でインプラントを埋入したケースである。

この症例を通じて外来での問診が大切であることを知らされた。

 

       参考文献

  1)中村正明  歯科臨床とアレルギー

       日本歯科医学会誌 1999, 18

  2)中山秀夫  アレルギーと歯の金属

       日本歯科医師会雑誌 1987VOL408

  3)西村文夫  金を科学する

       日本歯科医師会雑誌 1997VOL506

  4)井上 孝、秦 暢宏、才籐純一、下野正基

       インプラントと金属アレルギーの考察

       日本歯科評論  2000689

  5)中村正明、大島 浩

       歯科臨床とアレルギーの現状

       日本歯科評論 2000689

  6)内山洋一、井上昌幸

       歯科用金属材料とアレルギー疾患

       ジーシー小冊 1999

発表内容 4