第一話


昭和十八年頃、戦火を逃れるため谷間の山村に疎開しました。
友達も出来ましたが、なにせ皆農家の子供のため、小さいながらも
農業の手伝いをしていたので遊ぶ暇もありません。
仕方なく一人で遊んでいましたが、毎日が退屈で堪りませんでした。
それじゃあ山に行ってみようかと思い、一人で山の探検が始まり、
未知の世界へ………。
 山に入って最初に見た物は狸の道でした。
杉山の下は鬱蒼としていて、小さな草木も生えていません。
ただ、あるのは幅25cm程の延々と続く狸の道だけでした。
一本道もあれば縦横無尽にはしっている道もあり、
どういう所を狸は歩くのかな、と思いながら小さな胸を膨らませ、
頭の中は期待と不安と楽しい夢でいっぱいでした。


 次回は、獣の道についてのお話です。


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