《 バタフライ・ラヴァーズ 永遠の恋人たち 〔梁祝〕 》1994年)[日本発売]

 

■ あらすじ

チュク・イントイ祝英台(楊采[女尼])は良家の娘だが、教養が全然身につかない。政略結婚を目指す両親は娘に男装させ、大学で学ぶよう命令する。リャオ・サンパク梁山伯(呉奇驕jは苦学生。大学で出会った二人の友情は、やがて愛に変わっていく。しかし、イントイは両親との約束で女であることを明かせない。サンパクは「自分はホモ?」と悩む。政略結婚が決まり、イントイが家に呼び戻される日、二人は初めて互いの想いを確かめる。サンパクが官吏になって結婚の申し込みに行くが時遅く、二人は駆け下ちを試みる・・・。

 

■ 過去の《梁祝》電影

〈梁祝〉は中国に古くから伝わる民間伝承。だから、元代(13世紀)以降、粤劇・川劇などの地方劇の演目として取り入れられてます。別れ際、イントイサンパクに「(架空の)妹の九妹に結婚を申し込みに来てくれ」と頼む場面は、『紅酒』(1995年)という電影の中で、主人公たちが観劇するシーンに登場。2人が再会するが、すでに馬氏との婚約が決まっていて愕然とする場面は、張柏芝(セシリア・チョン)と林心如(ルビー・リン)が、チャリティー番組で演じたのを見たことあります。

それほど有名な伝承だから、映画化も今回が初めてではありません。特に
1963年の《梁山伯與祝英台》は未曾有の大ヒットでした。さて、先のチャリティー番組や《梁山伯與祝英台》で、サンパクを演じたのは誰?
実は、〈梁祝〉を上演する時、
イントイサンパクも女優が演じるのが、お決まりなのです! なんとサンパクを演じた俳優は呉奇驍ェ初めて?!

A小姐のご好意により、《梁山伯與祝英台》(
1963年)を見ることができました。天然色で、全編が音楽劇のよう。古風な節回しで2人が歌い続けます。脚本も伝承に忠実です。どうしても呉奇驕風k采[女尼]のイメージがあるので、女同士のやりとりに違和感は否めなかったですが、学業に情熱を持っていたイントイが、やがて恋する女性に変わっていく演出には、変わりがありませんでした。

〈梁祝〉伝承については
こちらへ。ただし、まだ《バタフライ・ラヴァーズ》を見ていない方はご遠慮ください。結末を知ると少々残念かも。

 

■ こぼれ話

今をときめく何潤東が、モンチュン庭望春という、梁山伯や祝英台の同級生役で出演してます。学生時代に台湾に帰省した際、エキストラとして引き受けたそうですが、徐克監督に気に入られて重要な役回りをすることに。徐克監督から「一番好きな女の子のことを思って夢見るような」演技を要求されて言われた通りにやっていたけど、劇場で見て本人ビックリ! 何と、呉奇驍ノ気のある同性愛者風の役だった!
徐克監督の演出手腕と編集技術の高さを想像させる、こぼれ話でした。
【参考文献】キネ旬ムック『韓国・香港 ベストスターセレクション』キネマ旬報社、2001年

 

■ 見どころ・突っ込みどころ

呉奇髢タとしては、サンパク(呉奇驕jがイントイ(楊采[女尼])に別れの手紙を書こうとするが、次々と思い出があふれ、涙するシーンが一押し! あんなハンサムが自分のことを諦め切れず涙してくれるなら、女冥利につきるというもの。それにサンパクは、愛する人に会うためなら、全力疾走で駆けつけてくれる!
そして、忘れてはならないのが楊采[女尼]の演技力。屋敷の場面は同じ時期に撮ったはずなのに、冒頭は少女の、ラストは恋する女の表情が素晴らしい。屋敷のあずまやで呉奇隆と再会し、試着した婚礼衣装で微笑むところの美しさなど、特筆に値する。彼のための婚礼衣装でないがゆえに、余計悲しく美しい。

この作品が大好きだからこそ、細かい点をいくつか。
東晋は
318年からだから、冒頭は「3世紀」じゃなくて「4世紀」と書いてほしい。
「科挙」という言葉が劇中登場します。しかし、試験による官吏人用制度である科挙は隋代の
606年に始まり、このころはまだ推薦制の混在した郷挙里選や九品中正法の時代なんですよね。どちらかというと、イントイの政略結婚を通じて投影された、南北朝の時代背景の描写がうまいと思います。
最後にもう一つ。男子学生はみなカツラなのに対し、楊采[女尼]のみ地毛で長い髪を束ねているため、髷が一人だけ大きいのが気になって気になって・・・。

梁山伯」を「梁山泊」と書かないように御注意を。さんずいの場合は、水滸伝の中で豪傑たちが集う地名になります。