夢惑う世界・昆虫たち 昆虫の散文<木漏れ日> 昆虫燦々
夢惑う世界 アゲハチョウ属その2 Papillio
1991年12月15日 森みつぐ

 日本にはアゲハチョウ属のアゲハは、10種生息している。そのうち、アゲハ、キアゲハを除いた8種は全て黒いアゲハである。やはり、下地は黒い方が目立ちにくい。モンキアゲハ、ナガサキアゲハ、シロオビアゲハは、東南アジアの熱帯地域にも広く分布している。モンキアゲハは、関東地方まで勢力を広げてきている熱帯系アゲハの代表するチョウである。
 中学2年の夏休みも終わりに近付いてきたある日、家より北へ2kmほどのところにある約100m四方の雑木林で掴まえたカラスアゲハがまだ、その時の思い出と共に大切に標本箱に納められている。
 東南アジアには、前翅から後翅にかけて黄色い帯が走る美しいオビモンアゲハ、更に大きなオオオビモンアゲハがスラウェシ島に棲んでいる。

 マレーシアの2回目の旅、毎日よく雨が降っていた。今日も、朝から曇り空。晴れたら山に登る予定だったが、キャメロンハイランドの19マイル地点へと行く。径は、しっとりと濡れている。しかし暫くすると、晴れ間が広がって、チョウも一斉に舞い上がる。陽が射し込み、径の傍らを水が流れているところに差しかかったとき、吸水していたチョウが舞い上がった。“あっ!なんだ!!”初めて見るチョウである。ゆらゆら翔んでタイミングが合わない。そうこうしているうちに、翔び去ってしまった。“あれ!ずるい!!”すっかり肩を落としてしょんぼりしていると、また何処からともなくやってきて、暫く路上を翔び廻ってから、近くの小さな木の花の周りを翔び始めた。そこでひと振り。尾っぽが片方とれたオビモンアゲハであった。

 大形のチョウは、動作が鈍そうに見えるが意外素早い。一度振り損ねるとあっと言う間に視野の外。

日本、沖縄県石垣島/ヤエヤマカラスアゲハ
  ヤエヤマカラスアゲハ  
どんよりした雲に覆われ
大気は淀み鎮まりかえる
その静寂を突き破って
一匹の大きな黒いアゲハが
悠々翔け抜けてゆく

カタバミ 昆虫図鑑2.3.2 チョウの館アゲハ属その3を、ご覧下さい。

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