夢惑う世界・昆虫たち 昆虫の散文<木漏れ日> 昆虫燦々
夢惑う世界 ドクチョウ属 Heliconius
2001年5月4日 森みつぐ

 ドクチョウと聞いただけで、毒々しい色彩のチョウを思い浮かべるが、しかし、そんなにけばけばしくはない。目立つ色彩であることには間違いなく、多分鳥が食べても美味しくないのだろう。どのチョウも、ゆっくりと羽ばたきながら翔んでいるのを見かける。
 中南米には、東南アジアでは見られない翅形のチョウがいる。トンボマダラに代表される横長の翅を持ったチョウたちである。このドクチョウも、その仲間である。チョウトンボがひらひらと飛んでいるのを見たことがあれば、ドクチョウの場合は、もっとゆっくりと羽ばたきながら翔んでいると思えばいい。
 この仲間には、地域による色彩や紋様の違いが大きい種がいる。特に、エラトドクチョウは、体の大きさを含めて、やけに異なる。私は、今でも同定するときに戸惑ってしまうほどである。それと、一層分かりづらくしているのは、同じ地域に混飛して、同じような色彩を持つ、もう一種のドクチョウ、メルポメネドクチョウがいるからである。この同じ毒のある種が、同じような色彩を持つことで、お互いに得をするというミュラー形擬態は、この2種については見事なまでである。

 ベネズエラへ訪れたとき、ギアナ高地の手前の町に宿をとった。余り森林もなく、歩いていると川縁辿り着いた。ここも大したことはない採集地なのだが、川縁の茂みに始めてみるドクチョウが翔んでいた。黄と白に彩られたアンティオックスドクチョウである。今まで掴まえたドクチョウの中では、一番清楚なイメージである。ブラジル中央部のアマゾンで採集したアンティオックスドクチョウは、全て白い帯になっていた。
ブラジル、イタコアチアラ/ワッラケイドクチョウ
  ワッラケイドクチョウ  
絶え間なく降り注ぐ
淡く鋭い光のシャワーを浴びて
萌ゆる葉が、微かに揺らぐ
くすんだ影が揺らめきながら
緑の葉の上を行き来する
チョウの白と黄の帯が
背景にすっかり溶け込んでいた

アオスジアゲハ 昆虫図鑑2.3.2 チョウの館ドクチョウ属を、ご覧下さい。

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