夢惑う世界・昆虫たち 昆虫の散文<木漏れ日> 昆虫燦々
夢惑う世界 セミ科その1 Cicadidae
1991年4月15日 森みつぐ

 ここ沼津の平地でも、夏はセミの合唱で始まる。ニイニイゼミ、クマゼミ、そして真夏を告げるアブラゼミ、残暑から秋へと導いてゆくツクツクホウシへと続いてゆく。日本には、30余種のセミが南西諸島を中心に分布している。世界には、約3000種ほど生息しており、その約半分以上が東南アジア地域一帯に棲みついている。その啼き声も多種多様に及び、聴くだけでも楽しい。その姿を想像するのも、また楽しいものである。しかし、それを採集しようとしたとき、非常な困難阻まれる鬱蒼としたジャングルの奥深く、そして樹上高く啼くので、殆どがじっと聴き入ってお仕舞いである。もし姿を見つけたとしても、なかなか敏感で採るのは難しい。中には、鈍感なセミもいるが。
 マレーシアのキャメロンハイランドは、セミの宝庫である。今まで7種類掴まえたが、これは、ほんの一部である。今日も昆虫採集を終えてジャングルから出てきた。もう5時を廻っている。蝉時雨の中、民家の間を、バス停まで歩く。抑揚を持った節回しで啼くこのセミの姿を見たいのだが、近くでは啼いていない。暫く歩いていると、近くから聞こえてくる。高さ50cm位の木が3本、そして周りには何もない。音を立てないように、静かに探す。最初、目に付いたのは、てっぺんに一匹、黄色味を帯びた小形のクワガタである。ラッキーではあるが、目的のセミはなかなか見つからない。もう一度、1本、1本、丹念に調べる。いた!いた!緑色の体色をしたセミである。普通は、こんな近くにいたら啼き止んで飛んでしまうのだが、このセミは鈍感そのものである。

 セミの成虫は1〜2週間と短いが、幼虫の殆どは、数年に及び、長い物になると17年に及ぶセミが北米にいる。

ネパール/sp1カレイヒグラシ
  sp1カレイヒグラシ  
蝉が遙か遠くで啼いている
緑の木々は山々を被い尽くし
熱帯の光と蝉ののシャワーが
火照った躰を更に刺激する

アカボシゴマダラ 昆虫図鑑2.3.5 その他の虫の館セミ亜科その2を、ご覧下さい。

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