掴まえたいと思っていたのだが、いざ歩き出すとなかなかこの妖艶な天使と巡り会うことができない。向こうも私に合わせて翔んでくれる訳ではない。ゆっくり翔ぶのだが、突然背後から現れて藪の中へと消えてゆく。そんなことを繰り返している内に、気にもせずに歩いていると、今度は突然、前からやってきた。“最初から、そうしてくれればいいのに！”

　山の麓にある林内には、広場があり川が流れている。ここは、クチン市民の憩いの場となっているみたいであった。薄暗い林内の川には、小形の青いミナミカワトンボが群れ飛んでいた。光が射し込んでいるところでは、きらきらと翅が赫いていて美しい。トンボの色の付いた翅は、黒、緑、青が殆どであるみたいだ。