夢惑う世界 草紙<蜃気楼>
夢惑う世界 蜃気楼 その10 発行日  2000年2月7日
編集・著作者   森 みつぐ
  季節風
 沼津における私の冬は、1月と2月だけである。その1月も終わり、残りひと月となった。この冬も暖かい日々が続いている。先日、アパートの住人である脚や触覚の非常に長いカマドウマが部屋を闊歩していた。いつもは、このカマドウマは床下で暮らしているのだが、時々部屋の中へ入ってくる。床下と部屋を結ぶ通路の在りかは分かっている。以前、そこはネズミの進入路となっていたのだが、ネズミの歯が立たない金属で塞いだので、隙間からは、このカマドウマしか出てこれない。
 朝、目覚めると枕元に。”やあ、おはよう!”
  言いたい放題
 NHKのETV特集で「アイヒマン裁判と現代」というテーマの報道があった。イスラエルの映画テーマである。アイヒマンとは、ナチス・ホロコーストの首謀者の一人であり、イスラエルで行われた裁判の映像が見つかり、それを映画化したのである。その中でのアイヒマンは、人の良さそうな顔をした従順な人柄に見えた。それが現代の組織に繋がるように思えると言うのである。それを私は、頷きながら見ていた。オウム真理教の事件も、多くの企業等の組織で引き起こされている数々の不祥事も、これに繋がるのである。組織に忠誠を誓い、組織が行うことを絶対的と思い、それを実現するために全力を尽くす。それが、非人道的・非道徳的なことで、心のうちで葛藤があったとしても遂行される。
 今、日本の企業は、勝ち組になろうと必死である。一つの価値観しか持ち合わせていないので、勝ち組でなければならないのである。そのような中では、人道的・道徳的なことは、無視される。倒産するかも知れないということで、非人道的・非道徳的な行為を正当化してはならない。私たちは、アイヒマンとならないためにも、組織の中で私が私であるためには、私自身が組織を超える必要があろう。
  つくしんぼの詩
 夕方、6時過ぎのジョギングは、暗い中である。学園通りで、擦れ違う無灯火の自転車を数えていたら、24台中12台ライトを点けていなかった。ジョギングをしていると忽然と目の前に、自転車が現れる。自転車側は、気付いているからいいのかも知れないが、突然目の前に来たら、予期せぬ行動に出て衝突するかも知れない。対向車のライトも危ない。下を向けないで、真っ正面を向けられると、眩しくて前が見えなくなる。そこへ突然、自転車が・・・。
  虫尽し
 昨年暮れ、南米アルゼンチンの北部を歩いた。南米というと、熱帯アマゾンを想像するが、私が歩いたところは、日本の宮崎と同緯度で、標高1000mを超える高原地帯である。採集初日は、曇っていてちょっと肌寒い。1時間ほど歩いて、花が咲き乱れている場所を見つけた。でも、チョウがいない。2時間程して、日が射し始めた。そして、初めて見るアルゼンチンのチョウが・・・。
  情報の小窓
 『・・・経済発展を担う人材を作ることも必要です。同時に貧困な状態をどう盛り返すか考える人間を作ることも必要で、よい教育はその二つが重なったものです。ポスト工業化社会に有効な人材だけを育て、苦しいときのための民主主義の教育、私の充実には力を注がないというのはだめです。』
 読売新聞「21世紀への創造・民主主義と経済発展」大江健三郎著 (作家)

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