夢惑う世界 草紙<蜃気楼>
夢惑う世界 蜃気楼 その101 発行日 2009年6月21日
編集・著作者   森 みつぐ
  季節風
 なかなか晴れ間が広がらない中、今週もやっと、6月中旬と思えない肌寒い日に山歩きに行ってきた。この時期、騒々しく啼いているはずのエゾハルゼミは、ときどき、単独で啼いている程度である。
 越冬して磨り減った翅のクジャクチョウやキタテハが突然足元から翔び立ち、春早く羽化したトラフシジミやコツバメも最後の力を振り絞って翔んでいるようだった。自然は、夏を前に、一斉に弾ける準備中である。あと、もう少しで命が燃え上がる夏がやって来ることだろう。
  言いたい放題
 先週、新聞(読売)を呼んでいて、「職場でのストレスが原因でうつ病などの精神疾患になったとして、2008年度に労災認定を受けた人が269人に上ることが8日、厚生労働省のまとめで分かった。過去最多だった07年度よりも1人多く、最多を更新した。このうち、過労自殺(未遂を含む)は66人。」と記事が載っていた。死ぬまで働き続け過労死になった人は、前年度比16人増の158人だったとのことである。
 不況と言われる中で、長時間労働を強いられ精神疾患に陥ったり、過労死へと追い込まれてしまう。長時間労働は、日本では、好景気の時のみならず、不況の時でも常態化している。成果主義のように、労働者への負担・圧力を増加する一方の経営手法は、それまででさえも精一杯だった精神面に、大きなダメージを与えるだろうことは、成果主義導入前から推測できたことだった。これらの結果は、労働者は企業にとって利益確保のための手段の一つでしかないと言う間違った企業倫理観に基づいたものであり、当たり前の結果が続いているだけなのである。
 労働基準法一条「労働基準法は、労働者が人間らしい生活ができるための労働条件の最低基準を定めたものである」とあり、企業は、労働者の幸福が目的の一つとなるべきであろう。それにも拘らず、日本の企業は、労働者は搾取する対象でしか見ていないのである。
  つくしんぼの詩
 日本は、温室効果ガス削減の中期目標を、「05年度比15%減」とすることを表明した。経済界は、案の定、前向きな反応は示していない。それに反して、環境NGOは、15%削減では不十分であるとしている。
 私は、15%と言う数値には、まだぴんとこない。京都議定書の6%減は、減どころか増加している現在、数値だけの空虚さがあり、本当に削減しようと言う強い意欲が感じられないからであり、昨今の景気対策は、温室効果ガス削減どころか増加に向かう対策(高速料金値下げ他)としか思えないからである。
  虫尽し
 生きた化石と言われているムカシトンボは、世界で唯一、ごく普通に見かけるのは日本だけである。写真を撮るようになってから私は、飛んでいるムカシトンボしか見ていない。以前、室蘭と岩手の方で止まったところを見ているが、その頃はまだカメラを持ち歩いていなかった。
 "今年は、網を振らずに止まるのを待つぞ!"と思いながら、先日も林道を歩いていたらムカシトンボを見つけた。足を止め、じっとムカシトンボを目で追っていたら、1回、2回、3回と往復した後、何処かへと姿をくらましてしまった。"あれ〜!やっぱり網を振れば良かったかな?!"
  情報の小窓
『エーリッヒ・フロムは、『自由からの闘争』において、一九二0年代以降、ドイツが個人主義から急速に極端なファッシズム(全体主義)へと移行してしまったことを、「自由」という観点から説きました。一般に、人は自由に憧れると思われていますが、案外そうでもありません。自由から逃げて、「絶対的なもの」に属してしまいたくなることもあるのです。』
 集英社新書「悩む力」姜尚中著

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