夢惑う世界 草紙<蜃気楼>
夢惑う世界 蜃気楼 その104 発行日 2009年9月20日
編集・著作者   森 みつぐ
  季節風
 9月に入ると札幌は、一気に秋の景色へと移り行く。ナナカマドの実は、既に赤く熟し、木々の葉も紅や黄に色付き始めて、枯葉も舞い始めている。街路樹として植えられているイチョウの実・銀杏が、ときどき強風に煽られて歩道に散乱している。
 くすみ始めた草木の間から、カンタン、ハネナガキリギリスやツユムシの鳴き声が、北風に乗って漂うって来る。そして、ススキの穂が、秋の日差しを受けて煌めく、札幌もそんな季節になってきた。
  つくしんぼの詩
 敬老の日、高齢者たちにとって、住み良い地域社会にするには、どうしたら良いのだろうか。弱者にとって厳しい社会システムへと変わりつつある中で、高齢者たちにも容赦なく国から重い負担を求められてきている。
 そして個人も、権力を得るとすぐ弱者に対して横暴となる。道徳、倫理観の崩壊によるものだろう。例を挙げると、自転車に乗ると狭い歩道をスピードを出して歩行者のすぐ横を追い越して行く。自動車を運転すると、歩行者や自転車のすぐ前を威圧するように歩道を横切ってゆく。弱者は、国や強者によって社会の隅へと押し遣られているのである。長年に亘って地域や国に対して貢献してきたのにも拘らず、人生の後半期において、社会のお荷物扱いにされることは、とても納得できることではない。
 弱者に優しい社会、高齢者に優しい社会を創造することは、ますます、難しい時代になってきている。履き違えた自由、利己主義の横行は、安心、安全な社会を蚕食し続けている。人は誰でも年を取るし弱者にもなり得る、そう言う人たちの気持ちを思いやることができる人となるには、どうしたら良いのだろうか。
  言いたい放題
 日本航空の経営再建が、いろいろと注目されている。デルタ航空との資本提携も、俄かには信じ難いニュースだった。何故、同じワンワールドグループのアメリカン航空ではないのだろうか。私が一番多く貯めているのは、ワンワールドのマイレージポイントである。
 また、国内の不採算路線からの撤退も容赦なく行われるようだ。今年、開港したばかりの静岡空港も然り、撤退と言う当然の結果となりそうである。
  虫尽し
 春、エゾハルゼミに始まったセミの聲が、初夏のコエゾゼミからエゾゼミ、アブラゼミ、エゾチッチゼミ、ツクツクホウシ、ミンミンゼミ、そして、今でも山野では、微かに聴こえてくる秋のアカエゾゼミまでで、セミの聲は途絶えてしまう。
 今年、久し振りにアブラゼミとエゾチッチゼミを採ったが、ツクツクホウシ、ミンミンゼミは、啼き聲だけで、札幌では、未だに、その姿を見ていない。いつになったら、これらのセミを見ることができるのだろうか。来年こそと、待ち遠しいものだ。
  情報の小窓
『戦後日本は、今のところ依然として世界に冠たる経済大国ですし、自由や平等も世界標準からすれば十分に実現しました。外国から侵略される危機もなく平和を保ってきました。しかし、その半面で、ほとんど精神の空洞化とも言える、価値・規範の崩壊がもたらされました。
 よく理解されがちなのですが、経済繁栄や平和の副産物として価値崩壊に陥ったわけではありません。それは同じことの二面、戦後日本社会に張り付いた表と裏です。「戦後日本」というある意味では特殊な構造が、その両面をもたらしました。』
 幻冬舎新書「自由と民主主義をもうやめる」佐伯啓思著

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