夢惑う世界 草紙<蜃気楼>
夢惑う世界 蜃気楼 その105 発行日 2009年11月22日
編集・著作者     森 みつぐ
  季節風
 まだ根雪にはなってないが、時には真っ白な銀世界を作り出す雪の舞う季節を迎え、すっかり景色はセピア色になっている。今、我が家には、夏に見つけたスジクワガタの雄が北側に寒い部屋で、容器に入った落ち葉の中で越冬に入ったようである。もう一匹のミヤマオオハナムグリは、容器にしがについたままで、越冬するのかさえも分からない。
 一方、暖房の効いた居間には、小さなマダラスズが、今にも消え入りそうな声で、毎晩鳴いている。何とか12月まで、元気に鳴き続けて欲しいものである。
  言いたい放題
 来年度予算概算要求の無駄を排除することを目的として、事業仕分けが行われている。政権を奪取した民主党の目玉、脱官僚、無駄の排除を具現化するための事業仕分けである。事業仕分け作業は、議論の透明化を図るために、ネット配信は始めとする公開の場で行われている。
 公開の場で討論が行われ、各事業内容が精査され歳出が削減されるのなら、事業仕分けを私は賛成するのだが、今の時点では、なんとも良し悪しが判断できないでいる。民主党のマニフェストに則って、一方的に切り捨てているだけのようにも見えてくるからである。何が、どの部分が無駄なのかが事業仕分けからでは見えてこない。少し原理主義的な仕分け人たちの強引とも思える采配だけが目立って、本当に無駄なのかどうかが見えてこないのである。事業仕分けは、議論の場でないことは確かなようである。先に結論有りきでは、やはり問題が残る。
 事業仕分け、そのことに反対するものではないが、もっと仕分ける方法を考えた方が良さそうだ。公開の場と言うが、今回の作業の正当性を与えるものではないので、削減が決まった事業に対して、今後、どういう経緯を辿るかを追跡調査をし検証して欲しいものである。科学など費用対効果などの効率だけで図れるものではない事業が多いはずなのだから。
  つくしんぼの詩
 日本の貧困は、ますます悪化の方向に向かっている。国民全体の相対的貧困率は、15.7%、一人親世帯の相対的貧困率は、世帯の半数を超え54.3%に上ると言う。母子家庭においては、更に貧困率は高いに違いない。
 国民総中流社会から極端な格差社会へと、ほんの10年余りで変化してしまった。これは、事もあろうか誤った政治の結果である。新政権は、前政権の負の遺産である格差社会の是正に全力を尽くすべきであろう。
  虫尽し
 秋の台湾を歩いていた。秋と言っても紅葉がある訳ではなく、晴れると30℃近くまで気温は上がる。駅近くの小高い丘にある開けた林道沿いには、いっぱいのシロバナセンダングサの白い花が咲いていて、多くのチョウたちが吸蜜に訪れていた。
 採集を終えて丘を下りてくると、大きな木の葉にシンジュサンが止まっていた。写真を撮ってから掴まえようとすると、葉から離れない。枝にしがみ付いたまま、干からびて死んでいたのである。遠くの方からは、タイワンヒグラシの聲が聞こえてきていた。
  情報の小窓
『「貯蓄から投資へ」あるいは「金融立国」といったスローガンをご記憶の読者も多いと思います。折から、雇用制度を規制緩和し、「小さな政府」論に基づいて社会保障制度を削減した結果、ますます国民年金が空洞化して年金制度が揺らぎ、年金財政のパフォーマンスの悪化が深刻化してしまいました。その責任を棚上げにして、「みんなが持っている一五〇〇兆円の資産を運用して、自分が稼がなくてはいけない」と言い始めました。そこで、「貯蓄から投資へ」「自己責任の時代です」と言いつづけて来たわけです。それが「金融ビッグバン」路線以来ずっと続いてきた「構造改革」の考え方なのです。』
 ちくま新書「閉塞経済‐金融資本主義のゆくえ」金子勝著

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