夢惑う世界 草紙<蜃気楼>
夢惑う世界 蜃気楼 その113 発行日   2010年8月22日
編集・著作者     森 みつぐ
  季節風
 やっと秋雨前線が北海道の南へと移動し、北海道は大陸からの高気圧に覆われてきた。爽やかな空気をもたらす秋の到来である。まだまだ今年は、残暑が続いているが、秋ももうすぐである。
 秋の鳴く虫の代表格であるカンタンやエゾエンマコオロギも鳴き始めた。アカトンボの仲間も、すっかり赤く熟して来た。この前まで、よく啼いていたセミの聲がだんだん静かになってきている。
  言いたい放題
 2010年4〜6月期の国内総生産(GDP)が年率換算で0.4%増となり、4.4%増の前期から大幅に減速したと言う。3ヶ月ごとに景気が持ち直しているとか減速しているとかを繰り返していることに、いつも疑問に思っている。もう、そろそろ経済発展に重きを置いた幸福感に見切りをつけるときが来ているように思える。
 世界第2位の国民総生産を成し遂げた高度経済成長の時代は、もう終わっているのである。物の豊かさを求めて人々は、多くの文化を破壊し失ってきた時代でもある。100歳以上の高齢者の所在不明問題、児童虐待問題などに代表される家庭崩壊や地域崩壊。毎日のように新聞紙面を賑わしている強制わいせつ事件、コンビニ強盗事件。そして新聞記事にもならなくなった日常茶飯事の交通事故等々。物の豊かさ、目先の快楽を追い求めてきた結果であろう。
 国民総生産が世界第2位から滑り落ちたとしても、日本は上位に位置していることには変わりない。既に私たちは、物の豊かさから心の豊かさにシフトしていてもいいはずなのに。相も変わらず経済発展にこだわる国と労働者を交換可能な部品としか思っていない企業によって格差社会は広がる一方で、不安定な社会が訪れれいる。まずは、格差社会の是正と低成長でも安定した経済の中で、自己実現可能な心を重視した生き方が出来る社会へと変革することが必要であろう。
  つくしんぼの詩
 「読売新聞社の地域社会や家族に関する全国世論調査(面接方式)で、家族のきずなやまとまりが「弱くなってきている」と思う人は81%に達した。2008年の調査の89%からは下がったものの、依然として高い水準だった。地域住民の支え合いは、「弱くなってきている」が78%に上った。」(読売新聞より)
 人間は、集団で生活する動物である。集団生活でしか生きてゆけない動物なのだが、人と人との最低限の付き合いである挨拶でさえも出来ない人たちが増えている。安全・安心は、人と人との支え合いの中で得られるものであるが、最近は、そのようなことを避け、単なる手段である道具(携帯や監視カメラ)に頼ろうとしている。それでは、地域社会は成り立たない。安全・安心は、遠ざかる一方である。
  虫尽し
 いつもの林道を歩いていた。8月に入ると盛夏というよりも晩夏に近付いてきたように思える野山の情景である。今年の夏は、ミヤマカラスアゲハがやけに多い。吸水ポイントでは、5〜6匹並んでいるのを良く見かけた。
 採集も終わりのんびりと歩いていると、無意識のうちに右手で左腕を払っていた。"痛っ!!"腕を見るとクロスズメバチらしきハチが針を突き刺している。思わず払い除けると、肘に針と毒袋が残っていた。セイヨウミツバチだったようである。その後3日間、肘から手首にかけて3分2ほど、腫れ上がっていた。
  情報の小窓
『もっと言えば、「楽しめないならおやめなさい」ということだろう。
 「遊戯三昧(ゆげざんまい)」ともいうが、それは「今」に最大限没入して楽しみつくしている状態だろう。無論そう言われても現実には楽しいことばかり選んでするわけには行かないだろう。だから「楽しいことをする」のではなく、「することを楽しむ」と、禅では発想する。楽しみ、遊んでいる時間は因果で、未来につなげる必要がないから、「因果に落ちず」と云われるのである。』
 ちくま新書「禅的生活」玄侑宗久著

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