夢惑う世界 草紙<蜃気楼>
夢惑う世界 蜃気楼 その125 発行日   2012年1月22日
編集・著作者     森 みつぐ
  季節風
 一日中氷点下の真冬日が、ずっと続いている。青空が広がるとベランダからの日差しは、外が氷点下でも、部屋内の日差しが当たる場所では、ぽかぽかとなる。氷点下5℃以下だと、強風で屋根から舞い上がる粉雪は、ダイヤモンドダストのように、きらきらと輝きながら流れてゆく。
 昨秋、ベランダでアゲハの幼虫が蛹となったが、今は、積もった雪の下でじっと寒さに耐えていることだろう。あと一週間もすると、冬も折り返し点となる。
  言いたい放題
 昨年末の新聞記事である。「長期間、同じ職場で正社員同様に働いていても、賃金が抑制される有期雇用労働者の保護強化を巡る議論が週明けにヤマ場を迎える。検討されているのは通算契約期間が一定年数を超えると、期間の定めのない無期雇用に転換させる制度。労使の意見は対立しているが、導入が決まれば全人口の1割に当たる勤労者の安定雇用につながる。」(読売新聞より)
 企業にとって都合のいい労働力として利用され続けられた非正規の労働者は、その多くが年収が200万円以下の貧困層である。企業は、極力正社員を減らして、その分足りなくなった労働力をいつでも切り捨てられる非正規労働者や短期間雇用する有期雇用労働者を利用して人件費を削減するのである。有期雇用といいながら、雇用を繰り返して正社員同様の労働をさせておいて、賃金は低く抑え込んでいる。それが現実なのである。
 社会不安の一員は、貧困層の増加であり、貧困層の固定化である。一度、貧困層に堕ちたら、二度とそこから這い上がることができなくなるような社会システムが構築されてきているのである。制度を悪用して労働者を安く雇い続ける狡猾な企業に、これ以上好き勝手にさせないためにも、有期雇用労働者をいち早く正社員へと移行させる仕組みを作って欲しいものだ。
  つくしんぼの詩
 昨年の全国の自殺者は、14年連続で3万人を越え30513人だった。一昨年より、1177人少なくなったが、相変わらず高止まりである。未曾有の被害をもたらした東日本大震災では、2万人近い人たちが死んだり行方不明のままである。3万人は、大震災で失った命よりも、更に多くの人たちが自らの命を自ら絶った数である。
 私には、これからもどんどん生き辛い世の中になってゆくと思っている。自由経済至上主義は、人の心を貪り続けることだろう。
  虫尽し
 インドネシア・スラウェシ島の中部山岳地帯を歩いていた。細い山道を歩いていると、ところどころで渓流にぶつかる。
 渓流に出来た流れの緩い浅瀬に浮かんでいたアメンボを掴まえようとしていたら、大きなトンボが目の前を通り過ぎていった。渓流上を行き来していたので、じっとチャンスを窺ってやっと掴まえた。以前、掴まえたことのあるヤンマの雌だった。
  情報の小窓
『人間には残念ながら、自分より下の存在をつくることで不安や焦りを解消する性向があります。自分に自信がなく、人と自分を比べて心のなかで優劣をつけている人ほど、いじめという行為に走ってしまう。しかし他者との比較や競争、他者からの評価と無関係な「好き」を見つけられれば、それを核にして少しずつ他者を気にすることから解き放たれていきます。「自分は自分」と思えるようになり、健全な自尊心が育っていくのです。』
 集英社新書「不幸な国の幸福論」加賀乙彦著

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