夢惑う世界 草紙<蜃気楼>
夢惑う世界 蜃気楼 その127 発行日   2012年3月18日
編集・著作者     森 みつぐ
  季節風
 3月となり、もう彼岸入りした。最近取り立てて暖かいという日は少ないが、それでも三寒四温が始まり、雪融けも進んでいる。ベランダ側の窓から見える真向かいの2階の屋根に積もった雪は、日に日に少なくなってゆくのが感じられる。
 日は確実に長くなっているし、日差しも強くなっているので、太陽が顔を覗かしている間は、気温が低くても、路面の雪は、確かに融けて流れてゆく。もうすぐ春である。
  言いたい放題
 「警視庁は9日、昨年1年間の全国の自殺者が3万651人だったと発表した。前年を1039人(3.3%)下回ったが、14年連続で3万人を超えた。「学生・生徒」が前年より101人(10.9%)増の1029人に上ったのが特徴で、統計を取り始めた1978年以降、初めて1000人を超えた。」(読売新聞より)
 今年の初めには、昨年の自殺者が3万人を超えたことは分かっていたが、何故、こうも生きづらい国になってしまったのだろうか。文明は発達し、どんどん便利になって生活は豊かになったように思えるが、それに反比例するかのように、心は荒み、他人への関心を失い、孤独化する傾向にあると思えてならない。自殺の動機は、「健康問題」「経済・生活問題」が1位2位となっているが、何故このような要因で自らの命を絶たなくてはならないのだろうか。
 最近、孤独死、孤立死が問題化しているが、その原因は、自殺と同じように思えてくる。動機はいろいろあるが、その原因は、日本社会の変化にあるのではないだろうか。やはり「豊かさとは何か」を考え直すときは来ているように思える。
  つくしんぼの詩
 東日本大震災で発生した震災がれきの受け入れ問題が、私の住む札幌でも起きている。市長の受け入れ拒否発言に対して賛否両論が飛び交っているのである。最初、市長の発言に賛同する人が多かったようだが、震災1年を迎え、批判の声が多くなったとのことである。
 私は、市長のがれき受け入れ拒否発言には残念至極でならない。震災地の復興には、まずがれき処理から始めなくてはならない。同じ日本国民として、当然の義務であろうと考えている。がれきの放射能汚染が心配ならば、その都度測定し結果を公表して理解してもらうほかないだろう。
  虫尽し
 バリ島中央部の山麓を歩いた。以前、歩いたことのあるゴルフ場の奥に広がっている森林である。
 すっかり様変わりしてしまったゴルフ場を突き抜けて、森林内の小径へと入っていった。山の周囲は晴れていたのだが、森林は雲に覆われていて、下草は湿っている。薄暗い林内には、昆虫は少ししかいない。“以前は、いっぱいいたのにな!”なんて思いながら、目の前を横切って飛び交うハエを掴まえていた。“これだけかな?!”
  情報の小窓
『時代はいつの間にか、ひとり不安症の時代≠ノなってしまっているかのようです。「じゃあ何人でいると安心するの?」と聞くと、三人ぐらいだ、と。五人、十人でグループをつくって何かを一緒にやろう、そういうエネルギーや意欲はあまりない。三名ぐらいだと一番わがままが言える、というわけですね。このひとり不安症の時代≠ェ、わたしはとても気になっています。本来、人間というのは、ひとりになって初めてものを考える基盤ができ上がるのではないでしょうか。ひとりであることに自足したとき、ひとりであることに自信を持ったときに、初めて他人と出会える。他人のことを思いやることができる。「出迎え三歩、見送り七歩」のマナーが自然に身についてくる。』
 小学館101新書「いま、こころを育むとは 本当の豊かさを求めて」山折哲雄著

Copyright (C) 2012 森みつぐ    /// 更新:2012年3月18日 ///