夢惑う世界 草紙<蜃気楼>
夢惑う世界 蜃気楼 その129 発行日   2012年6月24日
編集・著作者     森 みつぐ
  季節風
 タンポポの季節も終わりを告げ、白い綿毛が舞っている。今は、細い茎のブタナが黄色い花を受け継いで、至る所で咲き乱れている。また、白い房状のニセアカシアの花が風にそよいで揺れて、周囲に強い薫りを立ち籠めている。初夏の心地好い薫りである。
 つい先日まで賑やかに啼いていたエゾハルゼミも、すっかり耳にしなくなってしまった。本格的な夏に備えて、コエゾゼミもハネナガキリギリスも、今は準備中であろう。まもなく、7月になろうとしているのである。
  言いたい放題
 「仕事のストレスでうつ病などの精神疾患に陥り、2011年度に労災認定を受けた人が前年比17人増の325人と2年連続で過去最多を更新したことが厚生労働省のまとめで分かった。・・・(省略)・・・申請者も1272件と3年連続で過去最多を更新した。同省は「責任の重い仕事の増加や社員数の減少でストレスを感じる人が増えたことなどが影響した」と分析している。」(読売新聞より)
 グローバル化する世界経済のうねりの中で、正規雇用者は減少し、仕事量の増加と競争激化によるストレスは、労働者に強烈に襲いかかっていることだろう。申請者も労災認定者の数も、年々右肩上がりで増え続けている。以前から過労死などの長時間労働の問題があったが、連綿とその問題は続いているみたいである。テレビでの報道は、30歳代の若者の過労死について取り上げていた。
 死ぬまで働き続けさせる企業の在り方、死ぬまで働き続ける労働者の心の有り様は、高度経済成長時代のときと何ら変わっていないのだろうか。否、それ以上に、労働者への精神的負担は重くなってきているのではないだろうか。それは、就職困難な若者へとシフトしてさえいるようだ。
  つくしんぼの詩
 自民党政権から民主党政権に交代してから、早や3年が経とうとしている。その間に、沖縄米軍基地の移転問題、東日本大震災及び福島第一原発事故などの諸問題で、大きく民主党政権は揺さぶられてきた。
 そして、政権最後の仕上げ(?)なのか、消費増税へと突き進んでいる。私は、近い将来に消費税の引き上げは必要だとは思っていたが、現政権が決めるとは・・・国民への説明不足である。何はともあれ、弱い立場の人たちがこれ以上苦しまないようにして欲しい。二大政党制は、まだまだ先のようである。
  虫尽し
 札幌の5月は、まだ越冬した昆虫たちで林道は賑わっているのだが、6月になれば、もうそろそろ今年の新参者で埋め尽くされてくるのである。
 林道を歩いていると、傍らの叢から大きなガが翔び出てきた。“なんだ!!”と思って網を2度、3度と振ると何とか掴まえることが出来た。スズメガだった。“へえ!こんな昼間なのに!!”また、しばらく歩いていると、“あれっ!!”網の底には、他にもまだ2匹のスズメガが入っているのに気が付いた。一匹は、羽化したばかりの雌だった。
  情報の小窓
『屈原のような人は、いまでも少なくない。有能で、理想家肌で、そしてまっすぐ正直に生きようとする。そういう人にとって、この現代の濁世は、真実、耐え難いものだろうと思う。首脳部に命じられて、汚れた仕事を当然のように押しつけられる企業の社員のなかには、刑務所にはいったり、自殺したりする者もいる。
 屈原は見事な人物である。しかし、名もない漁師のふてぶてしい言葉にも、この世に生きる者の、ある真実があるように思えてならない。汚れて濁った水であっても、自分の泥だらけの足を洗うには十分ではないか。
 大河の水は、ときに澄み、ときに濁る。いや、濁っていることのほうがふつうかもしれない。そのことをただ怒ったり嘆いたりして日を送るには、はたしてどうなのか。なにか少しでもできることをするしかないのではあるまいか。』
 幻冬舎新書「大河の一滴」五木寛之著

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