夢惑う世界 草紙<蜃気楼>
夢惑う世界 蜃気楼 その13 発行日 2000年5月22日
編集・著作者   森 みつぐ
  季節風
 富士急バス車庫の敷地には、バスに付着していた土がフェンス横に盛ってある。その土には、多くの草花が芽生えていて、昨年初めてナガミヒナゲシを数輪見かけた。そして今年、ゴールデンウィーク明け通ってみると、なんとそこには、所狭しとナガミヒナゲシが朝日を受けて咲き乱れていた。細長い茎の上で、大きなくすんだ赤い花が、風に揺らめいている。帰り道、そこを通ると4つの花弁が既に散っていたが、明日への蕾も柔らかに膨らみ始めていた。
  言いたい放題
 先月、三和銀行の賃金差別やサービス残業の実体を指摘した手記集の出版を理由に戒告処分したのは、表現の自由を侵害するもので懲戒権の乱用という訴訟の判決があった。大阪地裁は、「差別と信じるに相当な理由があり、批判は正当」として処分を無効にした。
 本判決は、事実に基づいた正当な批判(多くの内部告発)に対して処分することは、不当であるとした。多くの労働者は、サービス残業はサラリーマンとして当然のことと受け止めているのではないだろうか。先輩がそうしていたから。仕事をするのが遅いから。出世するために。・・・国会においても首相が、サービス残業は労働基準法に違反していると明確に述べている。
 企業は、労働者の批判をその内容の正当性を問わないで批判すること自体が悪いこととして、全てを権力で押さえ込もうとする。企業は、大いにその批判を受けるべきである。企業の社会的責任とは、利益を出せばいいと言うことだけではないはずである。労働者の声に真摯に耳を傾けられない企業は、その閉鎖性故に、世界のグローバル化の流れに取り残されることになるだろう。
  つくしんぼの詩
 先月、沼津市の二人の若い女性が立て続けに殺害されるという、とても悲しい事件が起きた。ごく普通の人たちが、ごく普通の出来事の流れの中で人を殺すという物騒な世の中になったものである。恋愛中は、非常に病的になることは確かなことだろう。しかし何故、殺さなくてはならないのだろうか。彼らの非常に狭苦しい心は、子どもの時に親に愛情を得られなかったからなのだろうか。広い心、ゆとりある心が欲しいものである。
  虫尽し
 運河の河口に広がったパナマ・シティから、コスタリカ国境近くの山麓まで、バスで8時間近くかかる。ホテルにチェック・インしたら3時を回っていたのだが、明日の場所探しのため5時まで歩くことにする。空は曇っていてチョウは殆ど翔んでいない。中南米では普通にいるセセリを掴まえたところ、すぐ傍に黒い翅に赤い帯のあるチョウを見つけた。さて明日は・・・
  情報の小窓
 『グループの中の人間は、現実的な判断力をいくぶん失うことが多く、ものごとを象徴的に言葉で考えていくことよりも、より具体的な不安や具体的な行動として排出するような心の動きがあるのです。そのような心の動きが、集団の中にいるとより活性化しやすいといえます。』
 NHK文化セミナー「人間を探る 心のゆとりを考える(上)」藤山直樹著 (日本女子大学教授)

Copyright (C) 2001 森みつぐ    /// 更新:2001年5月14日 ///