夢惑う世界 草紙<蜃気楼>
夢惑う世界 蜃気楼 その130 発行日   2012年7月22日
編集・著作者     森 みつぐ
  季節風
 梅雨が明けた本州では、35℃を超える厳しい暑さが猛威を振るっているようだ。これから2ヶ月余り続く暑い夏の始まりである。同じく札幌の夏も、これからが本番であるが、一昨年の極端に暑い夏、昨年の暑い夏、そして今年の夏は、どうなるのだろうか?
 栗の花穂の匂い漂う季節も終わりに近付いて来た。夏本番が近付いて来たかと思った頃には、札幌では、既に秋が近づいて来る短い夏でもある。そんな7月から8月に掛けての、光に溢れた緑の季節が眩しくなる。
  言いたい放題
 「生活が苦しいと感じている世帯が61.5%に上ることが5日、厚生労働省が発表した2011年の国民生活基礎調査でわかった。00年から12年連続して増加しており、1986年の調査開始以来、最高となった。・・・(省略)・・・10年の所得を集計した平均所得は前年比約2%減の538万円となった。」(読売新聞より)
 毎年毎年収入が目減りしてゆく中、生活は苦しくなる一方であろう。企業は、終身雇用、年功序列制度を崩壊させ、正規雇用から非正規雇用へと労働力をシフトさせていった結果、中間所得層の多くが低所得層へと落ち、2極化した格差社会へと突入した。「生活が苦しい」が61.5%と、格差社会の中でも、低所得層が圧倒的に多数を占めるようになってきているのではないだろうか。
 ここ10数年、デフレ経済の中,生活の質をある程度落としても、何とか生活してゆける低所得層を支える経済が新しく成立したと思っている。ただ、これ以上、生活の質を落とすことは無理である。そして、この時期に消費増税とは、いかがなものだろうか。この先、5年10年経っても、格差社会の解消は難しいどころか、定着することだろう。
  つくしんぼの詩
 「最低賃金で働いた場合の収入が、生活保護費の受給額を下回る「逆転現象」が起きている地域が11都道府県に上ることが10日、厚生労働省の調査でわかった。」(読売新聞より)
 生活保護費とは、人間としての尊厳を保つ生活に必要最低限の費用であるのにも拘わらず、どんなに働いても、その賃金が生活保護費を下回るとは、日本の企業社会の異状さが分かるというものである。日本のデフレ経済は、結局、労働者の賃金を抑えることで成り立っているように思えてくる。
  虫尽し
 いつもの林道を今年も歩いている。チョウの幼虫たちを目的に歩いている訳ではないが、じっくり見ながら歩いていると、コヒョウモンやミドリヒョウモンの幼虫は、毎年、見つかるのである。これからは、キアゲハやコチャバネセセリの幼虫が、目に留まるようになることだろう。
 今年は、初めてヒオドシチョウやオナガシジミの幼虫を見たが、残念ながら飼育することができなかった。“チョウだけではなく、ヤママユガやスズメガのあの大きな幼虫を育ててみたいものである。”と思っていたら、カエデの木に大きなヒメヤママユの幼虫を見つけた。“よし!よし!”
  情報の小窓
『人間の傷を癒す言葉には二つあります。ひとつは<励まし>であり、ひとつは<慰め>です。
 人間はまだ立ちあがれる余力と気力があるときに励まされると、ふたたびつよく立ちあがることができる。
 ところが、もう立ちあがれない、自分はもう駄目だと覚悟してしまった人間には、励ましの言葉など上滑りしてゆくだけです。<がんばれ>という言葉は戦中・戦後の言葉です。私たちはこの五十年間、ずっと「がんばれ、がんばれ」と言われつづけてきた。しかし、がんばれと言われれば言われるほどつらくなる状況もある。
 そのときに大事なことはなにか。それは<励まし>ではなく<慰め>であり、もっといえば、慈悲の<悲>という言葉です。』
 幻冬舎新書「大河の一滴」五木寛之著

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