夢惑う世界 草紙<蜃気楼>
夢惑う世界 蜃気楼 その14 発行日 2000年6月14日
編集・著作者   森 みつぐ
  季節風
 今年の梅雨は、強い風を伴いながら例年通りに訪れた。庭々の紫陽花は、鮮やかな色を放ち初め濃い紅、紫や青の色は、見る人をはっとさせるほどのインパクトを持っている。私は、この色変わりする紫陽花は、東洋の神秘と思っていたのだが、世界の国々を歩いていると、思いもかけない国に咲いているのを、目の当たりにして嬉しいような何とも奇妙な気持ちになる。例えば、南アフリカ、パナマ、アルゼンチンなどで。そう言えば、すっかり黄色く熟した枇杷の実も、南米やアフリカでも見かける。美味しそうに熟している。
  言いたい放題
 最近の子供たちの犯罪報道を聴く度に、悲しい思いになるのは私だけでしょうか。子どもたちの悲痛な叫び声が聞こえてきそうです。耐えきれないほどの歪みが自分自身の心の中に現れてきて、真剣になればなるほど、それは増幅してくる。私たちが豊かさを求めて突き進んでいる道は、この歪みを逓増させてきている。心を覆い隠してしまうほどのスピードで猛進し続けている科学技術は、相変わらず本来の目的を顧みず金儲けに奔走している。自立を求め機会平等を問う競争社会は、既に子ども社会には浸透している。そして、それが唯一の選択肢であり、かつ価値観であるかのように。
 家庭、学校、そして社会が育てようとしているのは、このような競争社会を勝ち抜き金儲けができる人である。そして情報化社会に振り回されて自分自身をも失ってしまうのです。
 非常に難しい時代になってきた。大人だって自己を確立している人は、ほんの僅かである。でも大人は、生きてゆけるのです。しかし純粋な子どもたちには、そんな器用なまねはできなくて社会の中から自分が消えた状態となってゆくのです。
 家庭を含めて社会全体で悩まなければならないときが、既に来ています。
  つくしんぼの詩
 たがが外れたかのように子供たちの犯罪が世の中を騒がすにつれて、少年犯罪者への罰則を強化する声も大きくなってきた。人格形成の発達途上にある子供たちを大人と同じように罰を与えようと、保護・更生を目的とした少年法を変えようとしているのである。例えば、人体の場合胃腸の調子が悪くなると口角が荒れてくることがある。口角の荒れを治そうとしても、潜在する病を治さない限り口角の荒れも引くことはないでしょう。
 物事の本質を見失うことは、許されない。
  虫尽し
 中南米の自然は、西欧文明の多くを受け継いでいるため入植地は徹底的に開墾され、特に牧場の場合は、見るも無惨な状態である。パナマでは、運良く谷間の森林を見つけ、そして内部に分け入る小径を見つけた。鬱蒼と茂った林内の薄暗い沢筋には、林の外では見られないチョウたちが舞っている。
 ほら、また一匹モルフォチョウがやってきた・・・。
  情報の小窓
 『ひとつは、一人でいるということの重要性、つまり、集団から離れて一人でいるということが逆に人間としてのゆとりをもう一度再構築するために非常に重要であるということです。そして、もうひとつは、集団の中にみんなといっしょにいても、一人でいる側面を生かし続けるということです。』
 NHK文化セミナー「人間を探る 心のゆとりを考える(上)」藤山直樹著(日本女子大学教授)

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