夢惑う世界 草紙<蜃気楼>
夢惑う世界 蜃気楼 その18 発行日 2000年10月29日
編集・著作者    森 みつぐ
  季節風
 9月家の近くの道で、普段見かけぬ南方系のチョウと出くわした。このチョウは、よく似た種が3種いるので、どれかは分からない。標本では、区別が付くのだが、翔んでいるときには難しい。そのひと月ほど経った10月半ば、今度は街中の土手で見かけたが、どうもツマグロヒョウモン(温帯地方が、主な生息地であるヒョウモンチョウの中では、珍しく亜熱帯・熱帯地方に分布する)みたいである。次の週には、模様の違う雄を見た。今年、伊豆では南方系のナガサキアゲハがいたとのテレビ放送があった。温暖化の影響なのだろうか。それとも、チョウたちの積極的な分布拡大なのだろうか。
  言いたい放題
 先月、パソコンを購入した。膨大な昆虫のデータは、そろそろ紙データでは管理しきれない量になってきた。とうとう余り好きではないが、パソコンの力を借りるほかなくなった。そもそも余裕のある時間を持ち合わせていないのに、データを入力しなければならないと言うことは、ちょっと大変になってきた。この調子だと、全データを入力し終えるのに、5〜6年はかかりそうである。
 勉強したり、書き物をしたりしているときには、テレビや音楽は非常に気になるのだが、パソコンの場合は、没頭してしまって時間が過ぎるのを忘れてしまう。その他の時間も忘れてしまったら、最悪である。テレビに夢中になる。ゲームに夢中になる。ギャンブルに夢中になる。パソコンも一緒である。自己破壊へと繋がる。そして、家庭崩壊へと向かう。パソコンを中心とした情報化社会の行き着く先は、ここである。これは、余りにも悲観的だろうか。
 子どもには、テレビゲーム同様、パソコンの使用も、ある程度親が管理する必要があろう。自我、自己の確立のできないまま、年齢だけが大人になる可能性がある。
  つくしんぼの詩
 シドニーのパラリンピックが始まった。障害者たちが引き籠もることなく、運動を通して楽しい人生を送るためのものである。当然、参加することに意義がある。ただ、長野のパラリンピック同様、補助器具が素晴らしすぎて、お金持ちの人たちがする競技のように思えてしまって、ちょっと異様でもある。
 また、今回の日本選手151人のうち、45人が交通事故による障害者とのことである。この華々しい舞台は、夥しい数の交通事故で支えられているのではないか。このような陰の部分も、同時にスポットを当てるべきである。
  虫尽し
 細長いトンボを知っていると思うが、このイトトンボの多くは、小形の種類である。ところが、新熱帯区の中南米には、オニヤンマより体長の長いハラナガイトトンボという種類がいる。イトトンボを、ただ大きくしただけみたいだが、10cm以上のイトトンボが、ヘリコプターみたいに宙に浮かんでいる。ここスリナムでは、森林内の薄暗い闇の中で、見え隠れしている。
  情報の小窓
 『誰だって、自分は何事かをなしうるのだという自尊心をもちたいし、自分が正しい方向に向かっているのだという確信を得たいのです。それがなければ、自分に自信がもてなくなります。あらゆる機会をとらえて、彼らが達成感を得られるようにしてあげるべきです。いい意味での自信を持てないと、若者はとかく逸脱行動に走りやすいのです。』
 文藝春秋八月号「猫を虐殺する子どもが危ない」アラン・R・フェルトゥス著 (精神医学者)

Copyright (C) 2001 森みつぐ    /// 更新:2001年5月14日 ///