夢惑う世界 草紙<蜃気楼>
夢惑う世界 蜃気楼 その182 発行日    2016年12月18日
編集・著作者     森 みつぐ
  季節風
 すっかり雪景色である。この冬は、やけに早くやって来たが、大きな寒暖の波が相変わらず続いている。一日中氷点下という真冬日が続いたと思えば、気温が上がり雨が降る。湿った雪が降り積もっている。
 地球温暖化を感じ取ることができる札幌である。この温暖化が続くと札幌も、本州の日本海側の冬と同じように湿った雪が大量に降るかも知れないと思っている。午前中、凍った雪面を、午後は、足元のザクザクの雪を気にしながら歩くことになる。
  言いたい放題
 JR北海道が多くの鉄道路線の廃止を検討している。赤字路線からの撤退は、民間企業としては当たり前のように思えた。鉄道は公共の乗り物だといっても、民間の企業が運行しているのである。走れば走るだけ赤字が増えるならば、そのような路線からは撤退して、儲かるだろう札幌周辺と新幹線だけに特化してしまうことだろう。
 多くの路線からの撤退は、国鉄からの民営化の時点で、遅かれ早かれそうなることは分かっていたことであろう。国として計画通りのことなのである。全国を網羅していた国鉄は、赤字路線を黒字路線がカバーしていたが、国土を細分化して民営化した時点で、行き着く先は見えていたのである。国は高所得者から多額の税金を集め、低所得者へと再配分して格差是正を図るのだが、民営化された民間企業には公共性があったとしても、そのような責任も義務もない。儲からなければ、撤退するだけである。
 地方都市にとっては、鉄道はとても重要な交通インフラである。一番大事な命を軽視し、個人の欲望を満たしてきたマイカーが鉄道をも侵食してしまったのである。車が鉄道の代わりにはならない。鉄道を補完するのが車なのである。車がメインになったら、社会は廃れてしまうだろう。地方都市の明日はなくなってしまう。
  つくしんぼの詩
 交通事故で入院した病院は、脳神経外科の病院だった。頭に障害を受けた人たちが入院しているのである。頭だけではなく、脊髄に問題を抱えているかも知れないと、いろいろ複雑な病状を抱えた人たちが入院している。
 でも一番多く見かけたのは、高齢者の方たちであった。自宅で転倒したりして入院して来る方が多いのである。転んで骨折すると整形外科に運ばれるが、運悪く頭を強打すると脳神経外科に運ばれてくるのである。人間、足腰が衰えてくると危険だらけになってしまう。若い時から歩くことに、重きを置かなくては。
  虫尽し
 10月交通事故に遭ったとき、部屋に置いてあった植物が枯れてしまうと思って、母の庭に持っていってもらった。退院した時は、庭は雪の中だった。預けていた鉢を持ち帰ったが亜熱帯植物には厳し過ぎる環境だったようである。
 部屋にしばらく置いていたがやはり息を吹き返すことはなかったので、茎を切って処分しようとしたら、中から何かが這い出てきた。ワラジムシである。一ヶ月もの間、こんな小さな鉢で暮らしていたのである。ワラジムシとは一緒に暮らしていけないので、窓を開けて、“ごめん!”
  情報の小窓
『マネー資本主義の勝者として、お金さえあれば何でも買える社会、自然だとか人間関係だとかの金銭換算できないものはとりあえず無視していても大丈夫、という社会を作り上げてきたのが、高度成長期以降の日本だった。ところが繁栄すればするほど、「食料も資源も自給できない国の繁栄など、しょせんは砂上の楼閣ではないか」という不安が、心の中に密かに湧き出す。この不安は理屈を超えたある種の実感として、成長の始まり以来ずっとそこにあったのだが、周辺国が続々ライバルとして成長する中で、さらなる高まりを見せてきた。』
 角川Oneテーマ21「里山資本主義―日本経済は「安心の原理」で動く」藻谷浩介・NHK広島取材班著

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