夢惑う世界 草紙<蜃気楼>
夢惑う世界 蜃気楼 その36 発行日 2002年7月28日
編集・著作者   森 みつぐ
  季節風
 7月も中旬になると、平地でもトンボが飛び始める。麦藁色をしたウスバキトンボである。この夏も台風一過、朝早くからウスバキトンボが飛んでいた。それにしても元気いっぱいのトンボたちである。
 次の日、ニイニイゼミが啼き始めた。クマゼミは、既に羽化して夏本番に向けて待機している。少しずつ、少しずつ真夏に向けて歩んでいる。そして梅雨の終わりとともに、一気に夏は訪れる。さて、今年の夏は暑い?いつも、今年の夏は暑かったと言われることが多いが、ここ数年私にとって暑い夏は訪れていない。
  言いたい放題
 余り真剣に見ていなかったから、正確な数字は覚えていないのだが、サラリーマン男性のひと月のお小遣いは、約55,000円?とのことであるが、近年の不況で、金額は少なくなってきているとのことである。
 私の場合はと思い計算しても、月55,000円も使うことはない。私は、そもそも必要最低限の物しか買わない。日本経済の低迷する中、国や経済学者たちは、国民に物をいっぱい買わそうとしているが、必要以上の物を買わせて、どうせよと言っているのかよく分からない。大量生産、大量消費、大量廃棄を続けよとのことなのか。いっぱいカロリーを摂らせて、国民を成人病にしようとでもしているのだろうか。物質の量の多さで、人の幸せを量ることはできない。
 とすると私の場合は、55,000円もあれば、その多くが趣味の方へとシフトするだろう。月3万円を趣味に回せば、年36万円にもなる。東南アジアへの旅行だと、年2回は行ける。中南米やアフリカでも年1回は行ける金額である。私にとっては、申し分ない。
 でも本当に、こんなにお小遣いがあるの?このお小遣いで足りないと言うサラリーマンは、余程計画性がないか、もしくはアフター5に精を出して、貴重な時間とお金の浪費を繰り返しているとしか思えないのだが。
  つくしんぼの詩
 雨の日、傘を差して歩いていると、スピードを上げてきた車が水溜まりでバシャッと音を立てて通り過ぎてゆく。。
 その時は、既に遅い。撥ねた雨水が、斑上に衣服を濡らす。“このヤロー!!”車は、やはり嫌いである。人とは、絶対対等にはなれない。土足で人権を侵害する物を、何故好きになれるのだろうか。自分で運転した場合、知らず知らずのうちに歩行者の人権を踏みにじっているかも知れない。そう考えると、私は、いくら便利でも車を運転する気にはなれない。
 人の不幸の上に成り立つシステムは、私は、無条件に受け容れる訳にはいかない。
  虫尽し
 ギリシャでの最後となる夕方、アテネのシンタグマ広場近くに宿を取り、本屋に物色しに出かけた。ビルの横を歩いていると、街路樹からセミの聲がしたので人が通り過ぎるのを待ってから樹にしっかりしがみついていた小形のセミを掴まえた。そして、ウェストポーチに動かぬように仕舞い込んだ。今回の採集でも、1匹採ったセミである。
 本屋に入って昆虫図鑑を捜していると、何処からともなく微かな音が聞こえてくる。ウェストポーチの中で、セミが啼いていた。ポン!と叩いて静かにさせる。携帯電話の音よりはいいかも知れないが、暫くの間は静かにしててね!
  情報の小窓
 『マスコミによって明かされている不祥事は氷山の一角で、日本全体の組織では多数の深刻な問題が発生している。規則違反の人事や情実人事が素知らぬ顔で行われる。人員削減のために、明確な規則もなしに標的となる個人を選び出し、これが人間のすることかと唖然とするような嫌がらせによって、離職に追い込むことも行われている。』
 文春新書「文化の経済学−日本的システムは悪くない」荒井一博著

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