夢惑う世界 草紙<蜃気楼>
夢惑う世界 蜃気楼 その40 発行日 2002年12月15日
編集・著作者    森 みつぐ
  季節風
 木枯らしが吹き荒ぶようになると、虫さんも行方を暗ませて私にとっては、とても淋しい季節となってくる。どちらかというと出不精、いや全くの出不精の私だから冬になると何処にも出かけないでデスクワークに励むことになる。近くに雑木林でもあればぶらっと歩きに行くのだろうが、平地ではもうそんな経済価値のない雑木林はない。非常に、悲しいことである。
 常緑樹の多い沼津であるが、葉っぱをすっかり落として丸裸になった木だからこそ冬にも映える。望むらくは、その枝に繭でもぶら下がっていると嬉しいのだが。
  言いたい放題
 11月東京都千代田区で、路上喫煙条例施行における歩きタバコの罰金を徴収し始めた。ひと月経った今、ポイ捨ての吸い殻は大幅に減ったと言う。
 喫煙に対する罰金は、少し行き過ぎだと反対した人たち(多くは、愛煙家?)もいるが、画期的な条例だと私は思っている。画期的だというのは、歩きタバコを規制したと言うことではなくて、大衆の倫理観に期待せずに法令の下で規制したという点である。
 私は、基本的には性善説を唱えている。性善説を唱えるひとりとしては、やはり行動を法令で抑圧することは、なるべく避けるべきだと思っている。しかし昨今の老若何女を問わず、目に余るほどの行動は如何ともし難い光景である。性悪説とか性善説をどうのこうの言う以前の問題と思えてならない。子どもたちの教育問題について大人たちは、かんかんがくがくの議論を交わしているが、大人自身にも倫理が身に付いていない。そもそも社会人としての倫理が身に付いていない人たちに性悪説や性善説は、全く無縁である。教育は、知識を詰め込むだけではいけない。
 今回の歩きタバコの罰金徴収は、倫理について各個人が考える切っ掛けとなればいいのだが、多分そのようなことは、望み薄のように思えてくる。残念だが。
  つくしんぼの詩
 12月東北新幹線が岩手県盛岡市から青森県八戸市まで延長された。地元では待ちに待った新幹線開通なので、盛大なセレモニーと御目見得の新幹線に人々は歓喜した。
 ところがその陰で在来線からJRが撤退して、青森と岩手に2つの第三セクターによる鉄道会社が発足した。運賃は、なんと従来の2倍近くになったとのことである。私は、新幹線を作ることには反対しない。高速道路(自動車)に比べたら遙かにエネルギー効率はいいし、そして事故も少ない。しかし、弱者の足を奪ってはならない。金儲け主義の対象にしてはいけないことだってある。その為に、国がある。
  虫尽し
 ガボンという国を知っているだろうか。私がガボンに行くまでに知っていたことと言えば、深い熱帯雨林の奥に縞模様の足を持ったオカピという珍獣がいるアフリカの国と言うことぐらいであった。
 その緑豊かな土地であることを期待して行ったのだが、緑は望むべくもなかった。しかし、首都から1時間半も車で行くと、野生の象が森林内を闊歩している。そんなゾウさんが、歩き廻った道を歩いてゆくと、ちょっと大きめのトンボが枝に止まっている。腹部に黄色い帯のあるコシアキトンボみたいである。更に歩いていると、今度は、シオカラトンボ風の変わったトンボを見つけた。この2匹の体形がそっくりで、どうも雌と雄のようだ。まだまだ私を超えた世界がある。
  情報の小窓
 『経済的、軍事的な力が低下すると自信がゆらぎ、アイディンティティの危機が訪れ、人びとは他文化のなかに経済的、軍事的、政治的成功の手がかりをもとめようとするようになる。』
 集英社「文明の衝突」サミュエル・ハンチントン著

Copyright (C) 2002 森みつぐ    /// 更新:2002年12月15日 ///