夢惑う世界 草紙<蜃気楼>
夢惑う世界 蜃気楼 その41 発行日  2003年2月9日
編集・著作者   森 みつぐ
  季節風
 先週、日曜の夕暮れ時、外に出てみると道が濡れていた。“雨でも降ったのかな?”と思いながら歩き始めると、ジャンパーに白い物が。暮れ惑う闇の中から、白い小雪が舞い降りてくる。沼津では、珍しい雪であった。
 そう言えばこの冬は、ジョギングをしていて手がかじかんだことは1回しかなかった。ここ数年、北風が吹き荒ぶ心底寒い日は、非常に少なくなったような気がする。
 通勤途中の庭に植えられている沈丁花の花が、ほんの少し開き始めた。もうすぐ芳しい香りが、漂い始めることだろう。
  言いたい放題
 今年になってもサービス残業で、武富士やトヨタ自動車が労働基準監督署から捜査を受けたり、是正勧告を受けたりしている。トヨタ自動車なんて、信じられないほどの利益を出しているにも関わらず、サービス残業はなくなっていない。
 サービス残業は、儲かっていようがいまいが関係なく、日本の企業文化になっている。多分トヨタ自動車には、燦然と輝くほど立派な企業倫理規程なる物が存在するだろう。その中では、法(労働基準法も)の遵守が謳われているはずである。しかしサービス残業は、いくら法に抵触していようとも、多くの先輩たちが築き上げてきた日本企業の大事な文化なのである。経営側は、最初からサービス残業をを織り込んで経営計画を立てる。労働側は、それに対して「ノー!」とは言えない。それどころか自分が経営側の立場に立ったとき、ごく当たり前にサービス残業を無言の圧力の下で労働者に強要する。企業では、それが延々と続いて一つの文化にさえなっている。それ故、それを断ち切ることは、非常に難しいことなのである。
 労働者は、残業をするかしないかの選択肢は存在しない。労働者には、サービス残業をするかしないかの選択肢は存在しない。そんなサービス残業が伝えられる中、労働組合の組織率は20%へと落ちてきた。
  つくしんぼの詩
 去年だったと思うが、「アメリカでハンバーガーを食べ過ぎた結果、健康被害を受けたとしてマクドナルドが訴えられた」という記事を読んで、“なんとこんな事が訴訟になるのか!?”と目を疑ったものだった。そのことをすっかり忘れていたが今年になって、「食べ過ぎた本人の責任」と訴訟が棄却されたとの記事が続編で載っていた。
 なんと下らない訴訟だと思っていたが、欲望を巧みに刺激して利潤を得るシステムは、此処彼処にあり、更に巧妙になっている。その中で自立することの困難さは、今後も否応なしに増し続けることだろう。
  虫尽し
 チリ中部の町ロス・アンデスは、サンティアゴから北へ80km離れたところにあるアンデス麓の町である。
 町から50分ほど歩いた町外れの丘の道を歩いていた。昆虫が多いとは言えないが、この場所以外には見つけられなかった。暑くはないのだが紫外線が強く、日陰となるような木も少ない。唯一見つけた木陰で休んでいたら、白い綿みたいな物をくわえたアリが近付いてきた。“小さなアリしかいないのに変だな?”と思って、近付いてよく見たらアリバチである。白い綿と思っていたのは、白い毛で覆われた頭であった。“この目立ちたがり屋が!”
  情報の小窓
 『自我(エゴ)は、確立されるとエゴ中心的になるのではなくて、確立すればするほどかえってエゴ中心性から開放される、人の気持ちや人の立場が分かるようになるのである。』
 PHP新書「自我と無我<個と集団>の成熟した関係」岡野守也著

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