夢惑う世界 草紙<蜃気楼>
夢惑う世界 蜃気楼 その55 発行日 2004年9月19日
編集・著作者   森 みつぐ
  季節風
 草木の勢いが落ち、瑞々しい緑を失いつつある秋を迎えている。民家の庭では、果実を実らせる木で衰えつつある葉を後目に、大きく美味しそうな実を実らせているのが目を引く季節となってきた。
 先日会社の帰り、バス会社のフェンスの横を歩いていると、フェンスに絡みついているヘクソカズラの細い蔓にしがみついているイモムシが視界に入った。歩く足を止め、2〜3歩引き返して良く見ると、丸々と太った薄黄緑色したホシホウジャクの終令幼虫が葉っぱを頬ばっているところだった。イチモンジセセリがめっきり増えてきた秋、肥える秋である。
  言いたい放題
 今年は、台風の当たり年である。8月に入って毎週のように台風がやってきては、日本に大被害をもたらしている。今年の季節感は、ひと月ばかり早く推移しているように思われるが、これからも台風には注意が必要である。
 今年の台風で一つ思ったことがある。昨年のことだったであろうかカリブ海で発生するハリケーンが巨大化してカナダにまで猛威を奮ったと云うことがあった。ハリケーンの巨大化は、今年も引き続き起きている。何故、カリブ海のハリケーンは巨大なのだろうかと思ってきたのだが、フィリピン沖で発生する台風も同じく今年は巨大化している。日本近海を含めた海水温の上昇が台風の発達を促進し続けた結果であろう。何故、海水温が高くなっているのだろうか。
 異常気象は、本当に起きているのだろうか。地球温暖化は、確かに起きている事実だと思われる。その結果として異常気象が起きているかも知れないことは、誰も否定はできないだろう。地球そのものについても、全てを知り尽くしている訳ではないので、違うと云われても誰も否定はできない。でも確実に、今年の台風は、巨大化している。異常気象云々と云うことよりも、今年より来年、来年より再来年の方がさらに、台風が巨大化してゆくような気がするのだが、気のせいであって欲しい。
  つくしんぼの詩
 独裁的な面を前面に押し出してきた小泉首相は、“本当に国民の幸せを思って政治を行っているのだろうか”と疑念を持たざるを得ない今日この頃である。自民党が小泉氏を総裁に任命したからといっても、小泉氏の掲げる政策を全て受け入れてのことでは当然ないのである。今、小泉首相は、首相としての最終局面を迎えている。そして国民の方を向かず、ただ自分自身の主義主張を貫き通すために、悪知恵を働かせながら政治を行っているように思える。
 国民は蚊帳の外で、まだ小泉首相を応援しているのだろうか。
  虫尽し
 ラオス北部の町ルアンナムタ周辺の山を歩いていた。山道は、山岳少数民族の部落へと続く道だった。ここでの採集も3日目の最終日であった。大きな網を持ちながら歩いていると、山からは山の産物を担いだ人たちと擦れ違う。そんな人たちに採ったチョウを見せながら、よそ者が何をしているかを知っていてもらうことは大事なことである。
 そんなある時、小さな3人連れの子どもたちと擦れ違った。そして一番小さな子が近づいてきて大きな葉っぱの包みを持ってきて、私の前で広げた。その中には、鱗粉の剥げ落ちた黒い大きな蛾が入っていた。私は、思わずにこっとした。
  情報の小窓
『しかし市場の競争が持つ大きな欠点はそれだけにとどまらない。過労死やサービス残業など人間性を無視した働き方を強制したり、所得の再配分を嫌い、失業者や敗者になった人の人権さえ守ろうとしない。・・(割愛)・・競争至上主義が強い社会は、弱肉強食を認める立場から、力による軍事的解決にも違和感を持たない傾向がある。』
 岩波新書「豊かさの条件」暉峻淑子

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