夢惑う世界 草紙<蜃気楼>
夢惑う世界 蜃気楼 その65 発行日 2005年10月18日
編集・著作者    森 みつぐ
  季節風
 1年ぶりに北海道を訪れた。例年、この時季は、平地でも札幌の町では色とりどりの葉で彩られる。真っ赤な実を付けたナナカマドの葉も、色褪せ萎れてくる。
 ところが今年は、札幌市街地を眺望できる藻岩山も、ところどころに紅葉が見受けられるだけであった。今夏は、暑い日が続いたと言う。そして晩秋も、暖かい日が続いている。私は、冬が短くなるのは大歓迎だけれど、温暖化は、生態系を混乱させる。千歳空港へ向かうバスの中から、10月としては珍しくモンシロチョウが元気に翔んでゆくのを見た。もう晩秋なんだけど!
  言いたい放題
 ここ数年、物の値段がどんどん安くなっている。かの国の首相も、民間にすれば安くなると言っている。安い方がいいでしょうと言う。本当に、そうなのだろうか。確かに同じような物ならば安い方がいい。同じサービスならば、安い方がいいだろう。
 しかし、ここで述べたのは、買う側としての立場で考えた場合である。私たちが生活するには、働かなくてはならない。安い物、安いサービスは、私たちの労働の結果である。そして労働の対価として、安い賃金が支払われることになる。市場価格が安くなればなるほど、私たちが働く会社から得る給与も安く抑えられてゆく。そして、デフレは進行してゆく。
 そして会社は、全労働者の給与を抑えることをせず、悪知恵を働かせて頑張れば給与が上がると成果主義を採用する。当然、給与が下がる労働者の方が多い。競争至上主義もそれに拍車を掛け、一種のサービス残業状態を作ってゆく。労働者の精神的負担は、増加する一方である。
 人間は、そんなに強い動物ではない。他の動物も同じである。何処かで息抜きできる仕組みが備わっている。それさえも、奪ってしまう競争至上主義を前提とした改革は、私は反対する。
  つくしんぼの詩
 今朝、会社に行く途中、ガードレールで仕切られた歩道をゆっくりと歩いていると、突然ミニバイクが歩道に入り込んで信号待ちの車を追い越して一番前方に並んでしまった。
 そして反対側に止まっていたミニバイクは、青になるやいなや前方の車が来る前に右折して、歩道に入り込み歩行者が渡るのを待っている。このミニバイクは、いつもこの交差点で隙あらばと右折を狙っている。
 二人ともいい年した中年の女性である・・・・・・。
  虫尽し
 ウラジオストックの街中で地図を広げて、タクシーで郊外までやってきた。車を降りるとその先は、舗装されていない山道となっていた。
 作業用の道路なのか凸凹の道を歩いていると、車もゆっくりと追い越してゆく。5分も歩かないうちに、林の中へと続く小径を見つけて入っていった。“今日は、ここで採集しよう!”と思って、網をバッグから取り出していると周囲は、蚊だらけになっていた。“ちょっと、堪忍してよ!”
  情報の小窓
『すなわち、@アメやムチの使用は(前述したように)自発的協力を可能とする愛他的な動機も減少させるだけでなく、Aそのための政府ないし政府類似の組織の発達が、社会的ジレンマ問題の解決のための自発的協力を育てる母体としての共同体を破壊する、とされています。例えば、家族や親類、あるいは近所づきあいのなかでお互いに助けあって生きてきた人々の間では社会的ジレンマ問題はほとんど存在していなかったのに、このような共同体が公的な組織の発達により破壊されると、それにともなって、今までは自発的に協力しあっていた人々も、自分の利害だけを考えるようになるというわけです。』
 PHP新書「社会的ジレンマ「環境破壊」から「いじめ」まで」山岸俊男

Copyright (C) 2005 森みつぐ    /// 更新:2005年10月16日 ///