夢惑う世界 草紙<蜃気楼>
夢惑う世界 蜃気楼 その68 発行日 2006年2月19日
編集・著作者   森 みつぐ
  季節風
 2月中旬となり、日も幾分長くなってきた。この冬の寒さも一息ついて先週は、一気に初夏の暖かさが訪れた。この後は、寒さと暑さとが大きく振れながら春がやってくるのだろう。
 残念ながら今年は、民家の庭を彩る梅が咲くのも、まだ先みたいである。ただ鉢植えの梅が白い花を、いっぱい咲かせている庭があった。もう少しである。
 私の家では、昨年末、蛹になってしまったゴマダラチョウが、先週の暖かさで成虫の準備を始めてしまった。でもまた寒い日が来たので、ちゃんと羽化できるかどうか心配である。“大丈夫かな?”
  言いたい放題
 インターネットによる株売買は、私は、どうしても好きになれない。会社を支援するための株取得ではなく、インターネットによる株取得は、その多くが投機目的であるからである。一種の賭博をインターネット上で行っているのである。短期的な利益を求めて、株価の上下に一喜一憂する。賭博そのものである。
 ライブドアは、インターネットによる個人投資家を取り込んで急速に成長してきたが、マイナス要因と共に、短期的な利益追求の個人投資家たちは、さっさと去っていった。会社を応援している訳ではないので、儲からないと分かれば株を売ってしまう。私には、全く興味の湧かないシステムである。
 老後の安心のために行っている年金さえも、高い運用資金を確保するためにヘッジファンドに流れ、投機マネーとして世界を駆け巡っている。年金の資金が賭博の掛け金として利用されているのである。私は、賭博で巻き上げた金で老後を過ごそうという気にはなれない。
 企業のみならず国までが個人の欲求を刺激し、より身近になったツールで、個人がネット賭博に参加する。それも世界規模で行われている。グローバリゼーションの結果であろう。夢も希望も持てない社会が、日本にも訪れてきているように私は、思える。。
  つくしんぼの詩
 先月、すっかり暗くなった夕暮れ時、いつものコースをジョギングしていた。折り返し地点でUターンして走っていると、前方の道路で車が3台停止していた。“あれっ!変なの?”と思って走ってゆくと、3車線の道路を杖を突きながら、おばあちゃんがゆっくりと渡っているところだった。走っているスピードを落として、おばあちゃんを見ていたがもう少しで渡れそうだったので、そのまま通り過ぎた。
 近くには横断歩道はあるが、信号機はついてない。杖を突いて歩くだけで精一杯のおばあちゃんにとっては、3車線の幹線道路を渡るのは、命懸けである。・・・日本の道は、歩行者のためにある訳ではない。
  虫尽し
 ウルグアイの首都モンテ・ビデオから2時間半、バスに揺られてミナスという地方都市にやってきた。ホテルを見つけ3時頃からぶらっと外に出た。少し歩くと、すぐ郊外となり牧場が広がっていた。期待はしていなかったが、やはり森林は見当たらない。
 街を離れ、綺麗な花がぽつんぽつんと咲く遊歩道を歩いていた。“あれっ!あんたたち、ハキリアリ?”道の真ん中にハキリアリの巣穴があった。腰を下ろして、じっと見ているとマウンテンバイクに乗った子どもたちが私をじっと見ながら通り過ぎていった。
  情報の小窓
グローバル資本主義 グローバリゼーションが進むなかで、世界的に途上国を巻き込んで競争が激しくなり、先進国ではかつてないリストラと産業再編の大波が起きている。労働時間は前々から働きすぎの傾向が強まっていたアメリカやイギリスだけでなく、時短先進国として知られるドイツやフランスでも減少から増大に転じつつある。もともと働きすぎの日本の労働者は、これまでの長期不況の圧力に加えて、生産拠点の海外移転の圧力を受けて、日本企業が進出している中国その他の賃金が低く労働時間が長い国の労働者と競争させられ、賃金の引き下げと労働の延長を迫られている。』
 岩波新書「働きすぎの時代」森岡孝二

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