夢惑う世界 草紙<蜃気楼>
夢惑う世界 蜃気楼 その73 発行日 2006年7月23日
編集・著作者   森 みつぐ
  季節風
 ジョギングをしていたらアスファルトの歩道に、キリギリスみたいな虫さんがいるのを見つけた。そう言えば、沼津に来てからキリギリスの鳴き声は、殆ど聴いていない。ただ、海辺の方で聴いただけである。
 戻る途中、まだじっとしていたので掴まえてみると、雌成虫のキリギリスだった。近くには原っぱが無く、いろんな植物が植えてある広い庭を持った家があるだけである。このままだと、車道に出て、車にぺっちゃんこにされるだけなので、その庭へと放り投げた。
 札幌に住んでいたとき、7月後半になると、早い年だと叢ではキリギリスが鳴き始めた。夏到来の合図であったことを思い出す。
  言いたい放題
 NHKの番組で、医療費未納に関する報道を見た。病院で治療を受けたのにも拘わらず、医療費を支払わない未納者が増えていると云うのである。国民の医療費負担が増える中、低所得者が払えないと云うのは、理解できる。ところが、払うだけの所得があるにも拘わらず支払いを拒否するという問題ある未納者も増えてきていると云うのである。
 余りにも身勝手な利己主義が、日本中に広がってきている。倫理低下どころか、最初から倫理が身に付いていない日本人が増えてきた結果である。昨今の物騒な事件の数々、理解に苦しむ事件の数々、倫理低下が招いた結果と思われる不祥事の数々などが、毎日のようにテレビや新聞紙上を賑わしている。
 教育問題が取り沙汰される中、最近は殊更、学力低下だけが問題視されているが、それ以上に人格形成上必要不可欠な倫理が身に付いていないことに実感させられる。そして、その根の深さは、子どもたちの親の時代から、既に始まっていることであろう。親たちの時代から、倫理は薄まっていた。
 アメリカが全てと云うアメリカ絶対主義を、2世代に渡り上辺だけの模倣教育を行い、その一方、日本の倫理教育を軽んじてきた結果であろう。このままでは、居心地の悪い不安定な社会へと日本は、突入してゆくのかも知れない。
  つくしんぼの詩
 北朝鮮のミサイル発射訓練?に伴って、与党から自衛のための攻撃という敵基地攻撃論が浮上してきた。攻撃対象、条件を絞ったものの、一種の先制攻撃である。
 日本は、自衛のために備えはするが、自衛のために攻撃をしないと云うのが世界大戦から学んだことではないのだろうか。憲法改正?論議がされる中、基本中の基本を崩してはならない。世界の中で、こんな憲法を持つ国も必要ではなかろうか。
  虫尽し
 沼津では、雨水を流すための側溝を大きくしただけのような川がある。私のジョギングコースにも、その川があるのだが、綺麗な水が流れている訳でもなくどぶ川みたいな感じなので興味も湧かない。
 ある日、ジョギングをしていると歩道脇に、大きなヘビトンボが横たわっていた。まともな川は、この辺りにはない。“もしかして、あんたはあのどぶ川から?”“???”“本当かな!?”
  情報の小窓
『古い価値観だけでは生きていけなくなってしまった現代。すでに多様な価値観があることを認め、早く自分を自由にできた人が楽にさわやかに生きていくことができるでしょう。自分なりのオーダーメイドの価値観で生きていけるようになれば、「つらさ」も緩和されていくと思います。しかし、自分なりの価値観を作る、オーダーメイドの価値を創造してゆくのはかなりのエネルギーを必要とします。自分を根本からつくり変える大変な作業です。したがって多くの人は既製品(レディメイド)ですませたほうが楽で、そちらのほうに流れてしまうのです。』
 平凡社新書「生きるのがつらい。「一億総うつ時代」の心理学」諸富祥彦

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