夢惑う世界 草紙<蜃気楼>
夢惑う世界 蜃気楼 その76 発行日 2006年10月15日
編集・著作者     森 みつぐ
  季節風
 私のジョギングコースの街路樹であるプラタナスの葉が、大分くすんできた。風に揺れて大きな葉が擦れ合う音も、少し乾いた音となって漂ってくる。
 先日、3週間振りにいつも行く林道を歩いてきた。まだ木々は落葉はしていないのだが、すっかり勢いは失っている。ススキの穂が風にたなびく林道では、前回まであれほど騒々しかったセミの聲が聴こえてこなくなって、その代わりコオロギの聲が、途絶え途絶え流れてきていた。寂しげな岩場では、ホトトギスの奇妙な花が、殺風景な中にも彩りを添えていた。
  言いたい放題
 小泉政権を引き継ぎ、新たに安倍政権が発足した。人々に競争心を煽る改革路線が継続される。自民党総裁選で一番まともなことを述べていたと私が思っていた谷垣氏は、総裁選で敗れ、そして安倍政権からもつまはじきにされた。
 経済の拡大路線は、相変わらず続く。今や先進諸国においては、市場は飽和状態となっているが、人々の欲望を刺激し続けることで市場を拡大しようとしている。今、持ち合わせているもので十分なのに、更に便利な物、楽できる物で欲望の火を点けるのである。物を大切にする心を養うかのように思われた資源の再利用は、安易に物の使い捨てへとつながっている。
 昨今の頽廃した日本人の心を表した多くの事件は、このような失われてゆく心の結果であるように私には思える。人々の絆、家族の絆の崩壊も同じであろう。アメリカを追従する自民党政権は、最近2ヶ月間で学校での凶悪な銃犯罪が25件に及んでいるというアメリカと同じような不安定な日本社会にしてしまった。
 右肩上がりの経済政策をそろそろ見直ししないと、人々の心は奈落の底へと転げ落ちてゆくことだろう。
  つくしんぼの詩
 北朝鮮が核実験を実行し、世界を震撼させた。あの国は、現体制下では、何が起きても不思議ではない。それ故、核武装は、世界にとって大きな脅威である。
 戦争抑制のための核保有が、新たな段階に入る。それは、人類が核爆弾を手にしたときから分っていたことであろう。私には、この愚かな人類の次の一手となる対策を見守るほかない。ただ私は、“目には目を”は望まない。
  虫尽し
 私は、ヤママユガの仲間が大好きである。昆虫採集のきっかけが、シンジュサンと云うヤママユガの仲間だからである。秋深まりつつある小樽を見下ろす天狗山に来ていた。
 天狗山の頂には、エゾシマリスを放し飼いにしているリス園がある。リス園の中に入ってリスを探していると、少し見難いところに、何かがへばり付いているのを目敏く見つけてしまった。傍によってよく見ると、ヒメヤママユである。"あんた!こんなところにいるとリスに食べられてしまうよ??!"
  情報の小窓
『人類の進化の過程においては、ジャンクによって突然変異が発生し、それが進化に結びついてきました。これと同様に、組織においても、変なヤツややる気がないヤツとか、そうした連中が仲間に加わっているほうが人間的な組織になるのです。そういう状況の中で、思わぬミスが起きたが、それが結果的にものすごくよいものに変化したとか、思いもかけない成功につながることだってあるのです。無駄とか不必要とか、そういったものは人生において絶対に必要な条件だということを、ぜひ考えてもらいたいのです。』
 講談社「自力と他力」五木寛之

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