夢惑う世界 草紙<蜃気楼>
夢惑う世界 蜃気楼 その81 発行日   2007年6月10日
編集・著作者     森 みつぐ
  季節風
 子どものときに住んでいた札幌、雪融けと共に林床に顔を出していた青や黄色い花々、それが何と言う花なのかは知らなかったのだが、ずっと心の片隅に仕舞い込んでいた。そして私は、今年、札幌の舞い戻ってきた。
 あの花たちは、何だったのだろうか。今、山野に歩きながら札幌の花々を観察している。来年の春、雪融け後の山野を楽しみにしている。近所の路傍には、次々に多くの花々が咲き乱れているが、その多くが民家の庭から飛び出してきた花たちであろう。ただ、私には、山野草との区別が全く付かないのだが。・・・"やっぱり、あれは、スミレ?"
  言いたい放題
 昨年度(2006年度)、仕事上のストレスから心の病気を抱えて、労災認定された人は、前年度比61%増の過去最多となったとのことである。厚生労働省は、「周囲の支援が不十分な中で、過大な量の仕事を要求されているケースが目立つ」と警告していると。
 こんな記事が、先月の新聞に載っていた。企業内で心の病を患う人が増えることは、数年前から予期されていたことである。厚生労働省のコメントは、余りにも破廉恥極まりない。このような状態にしたのは、国の政策の結果であることは、疑いもないことだと言うのに。
 裁量労働制の適用拡大など行き過ぎた競争至上主義や成果主義を煽り、その結果、労働者への負担は、格段に増えた。そして、正社員に変えて使い勝手のいい格安賃金の労働者に置き換えていった結果、全労働者の精神的負担は、さらに増加していった。労働者の精神疾患が増えたことは、国の政策が原因であることは、歪められない事実であろう。
 それにも関わらず国は、更なる労働強化(例えば、ホワイト・エグゼンプション)の策を講じようと考えている。この日本も、強者だけが生き残る殺伐とした社会になりつつあるようだ。
  つくしんぼの詩
 「労災認定が過去最高となる」と言う記事から9日後の新聞記事に、「労働紛争の相談件数が過去最多を更新した」とあった。相談内容で、「いじめ・嫌がらせ」が増加しているとのことである。
 成果主義、能力主義の強化、そして正社員から派遣社員、パート、バイトへの切り替えを行うことによって、労働者は、精神的重圧を受けたり、劣等感に苛まれたり、組織内の不協和音が生じたりしていることだろう。そして労働紛争が増加し、労災が増加する。いつまで経っても労働者は、心休まるときがなく、悪化の一途を辿ることになるだろう。
  虫尽し
 タイ南部の観光の島サムイに朝方到着した。乾燥したタイ北部から来たので、少々蒸し暑い。早速、宿を決めて、島中央の山に向かって歩き出した。
 大きな道が山中へと向かって伸びている。黒いチビコムラサキが迎えに出てきたが、あまり多そうではない。ひとつ峠を越えて下るとすぐ、もうひとつ道がある。その三叉路の辺りで採集していた。大きなヤンマが飛んでいたので、チャンスが来ればとタイミングを取っていたら、キアネハレギチョウが翔んできた。そうすると、なんとそのヤンマは、ハレギチョウを捕まえてしまった。"えっ!ちょっとやり過ぎじゃない!!"ヤンマは、ハレギチョウを抱えて高い枝に止まってしまった。"ずるい!"
  情報の小窓
『私たちはいま、「経済成長と労働生産性上昇の無限のサイクル」という前提をどこかで"断ち切る"方向に発想を根本的に変えていく必要性の前に立っている。失業問題の「成長による解決」という発想を転換していく必要がある。そうでなければ、「人々が(競争に追い立てられ)働けば働くほど失業が増えていく」という、どうしようもなく皮肉な悪循環が生じてしまう(現在の日本社会は、既にそのような状況になりつつある)。』
 ちくま新書「持続可能な福祉社会−「もうひとつの日本」の構想」広井良典

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