夢惑う世界 草紙<蜃気楼>
夢惑う世界 蜃気楼 その86 発行日 2008年1月20日
編集・著作者   森 みつぐ
  季節風
 新年も明けてから札幌も、一日中氷点下の日が続いている。毎日、朝起きると、北の部屋に行って、窓硝子にびっしりまとわり付いた結露を雑巾で拭き取っている。最低気温が−7℃以下の日には、その雑巾は、ぐっしょり濡れてしまうほどである。
 融けては凍っていた雪道は、もう融けることもなくなって新雪の降り積もった道は、滑りにくく少しは歩きやすくなった。豊平川に流れ込む小さな支流は、氷に覆い尽くされてしまった。川の水は、春まで氷の下を流れてゆくのだろう。
  言いたい放題
 昨年度、交通事故による死者は、5743人と54年ぶりに5000人台になった。確かに、死者数が1万人を越えていた時期に比べると、激減していて良い方向に向かっている。ただ、年間交通事故死者数が5000人だからと言って私は、この数字が少ないとは、到底思えない。
 交通事故の発生件数や負傷者数が高止まりしている。負傷者数は、9年続けて100万人を超えているのにも関わらず死者数が減ったのは、交通事故が減った訳ではなく、事故が起きても死亡させないシートベルトなどの安全装置が有効に働いているからなのだろう。だとすると、減った死者は、車に乗っていた人たちで、車に撥ねられた人の死者数は変わっていないものと考えられる。残念ながら交通事故死者数の発表は、乗車者と歩行者との区別なく全てひっくるめた人数の発表となるので減った死者分の内訳は分からない。
 結局、強者である乗車者は安全装置に守られるが、弱者である歩行者は運の悪い人間で事故に遭遇して死んでも仕方ない存在なのである。人は、一度手にした便利な車と言う特権を手放したりしないし、車の負の側面を真剣に考えたりしない。経済を衰退させない為に、今年も交通事故死者数は、毎日確実に増え続けているのであろう。
  つくしんぼの詩
 先週、バスに乗っていたとき、車窓から歩道に降り積もった雪の状況を見ていた。初冬の札幌、大雪が降り積もった後、歩道は、2人がやっと擦れ違う程度の幅の道しか除雪されないので、それまで行っていたジョギングは、歩いている人にも危ないと思って止めることにした。
 この冬の札幌は、降雪が少なかったので、歩道も徐々に広がってきていた。バスの車窓から見たのは、この雪の歩道を高齢者が乗った電動カーが走っていたのである。足の悪い人にとっては、必要不可欠な乗り物であるが、雪の上を走るのは、大変だろうなと思いながら眺めていた。
  虫尽し
 ハノイから次の目的地である北部の町カオバンまで、ミニバスで移動した。途中から山岳地帯となり、くねくねと曲がりくねった道を走った。昼食で30分ほど休憩した後、またミニバスに揺られた。
 暫らくすると、車内を虫が飛んでいるのに気が付いた。"ハチ!いや、違う!"昼食の後で多くの乗客が眠っている。一人の男性の顔に止まって、また飛び立った。"潰されなければいいが!"と思っていたら、暫らくしてから、私の元に飛んできた。"大きなホタル!"
  情報の小窓
『どこかに帰属しているという認識を持てなくなってしまった。規範やシンボリックな価値を失うのも、当然の成り行きというものである。そこで無数の外部の他者を結び付けている媒体にすがりつくこととなる。そして媒体を介して、同じ対象を見たり、聞いたり、感覚することによって、帰属欲求を充足させようとするだろう。・・・(中略)・・・確かに現代人のライフスタイルは多様化を遂げた。しかしながら、それにもかかわらず、ある特定の時期の人々のスタイルがどれほど多様であるかを調べてみた場合、意外なほど誰も斉一的な選択を行っていることに気づくはずである。』
 中公新書「考えないヒト ケータイ依存で退化した日本人」正高信男

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