夢惑う世界 草紙<蜃気楼>
夢惑う世界 蜃気楼 その90 発行日 2008年5月25日
編集・著作者   森 みつぐ
  季節風
 ゴールデンウィークが過ぎてから札幌では、すっきりと晴れた日が続くということが少ない。平年より高めで推移してきた気温も、最近では、少し低めである。それでも春は、着実に歩んでいるようだ。
 先日、定山渓の山に入ると、既に、春の訪れを告げるエゾハルゼミが啼き聲が遠くから聞こえてきた。可憐なタチツボスミレやツボスミレの花が咲き乱れ、路傍いっぱいに、セイヨウタンポポが黄色い花を咲かせている。
  言いたい放題
 中国の地震災害の報道を、毎日見ている。既に、死者が5万人を超え、やっと被害の全容が見えてきたところであり、更に、死者・不明者が増えそうである。庶民の住む家は、アジア全域で普通に見られるレンガを積み重ねただけの建屋が多いのだろう。道路も建屋も橋も、まだまだ地震を考慮した造りにはなっていないと思われる国に、凄まじい大地震が襲った感がある。
 中国は、今回の地震で、やっと隣国だけであったが、遅ればせながらも支援の受け入れを行った。豊富な経験をしてきている国々からの緊急支援や復興支援は、中国の今後にとっても、非常に有用な経験をするチャンスではないだろうか。新興国から一歩踏み出すためにも、世界の国々との強調が求められる中国にとって、これからいろいろ学ばなくてはならないことがあろう。今回の災害が、このきっかけとなれば良いのだがと思っている。
 それに比べて、ミャンマーのサイクロン被害は、全くと言っていいほど報道はされない。軍事政権が各国の援助を断っているからである。ミャンマーの国民は、自然災害とそれに加えて軍事政権の無策(人災)の二重苦を背負っている。国際社会に背を向けていたら、ミャンマーの明日はないだろう。
  つくしんぼの詩
 75歳以上を対象にした後期高齢者医療制度は、大きな波紋を広げている。それも原因の一つか、福田内閣の支持率は、下降の一途を辿っている。先日、公表された「高齢社会白書」では、後期高齢者の割合が増え続け、要介護の割合も前期高齢者より遥かに後期高齢者の方が高くなっていると、いかにも後期高齢者医療の正当性を強調しているようだった。
 医療制度は、見直す時期に来ていることは確かであるが、弱者に大きな負担を求める制度にしてはならないと私は、思っている。
  虫尽し
 久し振りに訪れた台湾中部の町南山渓の山奥で昆虫採集をした。山間部の町は、すっかり様変わりして新しい家々が立ち並んでいた。
 採集を終え網を片付けて山を下って行くと、大木の下で何かを探している親子を見つけた。近付いてゆくと、男の子が手に持ったクワガタを見せてくれた。台湾でも、クワガタやカブトムシの人気が高いみたいである。本屋では、日本と同じく、クワガタやカブトムシの本が棚の一角を占めていた。
  情報の小窓
『むろん人間は生きているかぎり、なんらかの束縛をうけずにはすまない。だが、束縛から解放されることだけをひたすら個人の正しいあり方として求めつづけるなら、やがて個人はどんな些細な束縛にも耐えられなくなり、束縛と付き合いながら生きてゆくという精神の衛生学に習熟することができなくなる。欲求不満だけがいつも澱のように溜まって、なにかきっかけを見つけて不合理な激情となって爆発するというようなことにもなりかねない。人間には強い束縛を嫌い、それを打ち破りたいという衝動がある。また一方に、ある種の束縛がなければ、精神の安定がうまく保てないというもう一つの面がある。束縛が完全になくなって、あまりにも自由であることが、人間の心にはすでに一つの束縛となるのである。』
 PHP新書「個人主義とは何か」西尾幹二

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