1981年10月 9日(金)放送

 

 

出演
田中邦衛・いしだあゆみ・吉岡秀隆・中嶋朋子・岩城滉一・熊谷美由紀・地井武男・清水まゆみ・今井和子・南雲佑介・尾上和・永浜三千子・大滝秀治・竹下景子

 


 両親が別れることになり、純と蛍の二人は父親の五郎に連れられ、昔父親が住んでいたという北海道の富良野というところへ行くことになった。蛍は、車窓から初めて見る空知川に感動していたが、純は不安気に窓の外を見つめていた。3人が降りたのは、布部という駅であった。そこには、親戚の北村草太が車で出迎えにきてくれていた。そのあと、五郎たちは草太の車で、八幡丘にある草太の家へ向かった。その夜は、草太の家で三人で泊まった。

 翌日、二人は昔五郎の住んでいたというぼろぼろの廃屋へ連れて行かれた。ここには電気もガスも水道もないと聞かされ、純は不満と動揺が隠せなかった。その夜、食事のときに、五郎から馬の賢さの話を聞かされ、蛍は感動するが、純は詐欺だと思った。純は、その夜、怖い夢にうなされていたが、蛍に起こされ、何者かが表を歩いていることを知らされる。そして、恐怖の余り、二人はお祈りを始めた。正体は、中畑和夫に言われて様子を見に来たクマさんだった。翌朝、五郎は蛍と二人で沢へ水くみに行った。そこで今の蛍の気持ちと純の様子を聞き、少し安堵する。しかし、そのころ純は二階の部屋で起きており、一人東京へ逃げ出す作戦を考えていたのだった。



1981年10月16日(金)放送

 

出演
田中邦衛・原田美枝子・吉岡秀隆・中嶋朋子・岩城滉一・熊谷美由紀・永浜三千子・塩月徳子・中沢佳仁・いしだあゆみ・地井武男・清水まゆみ・今井和子・塔崎健二・今野照子・南雲佑介・大滝秀治・竹下景子

 


 あれから五日が過ぎ、純の不満はどんどん増すばかりであった。おかむろづくりのためにネコで石運びをすることになる。蛍はよく働いていたが、純は怠けてばかりであった。純は昼の休憩時間に寝入ってしまい、夢を見ていた。突然、クマさんに起こされて、笹刈りに連れて行かれた。クマさんは、「こったら、こつこつ働いていれば、人間だんだん謙虚になる。」と言って、宮沢賢治の詩を歌った。

その夜、蛍が五郎に純が母親に手紙を書いていることを告げ口するが、純が蛍のことを信用して話したのだから、その秘密を漏らすようなことはしてはいけないと言われる。 翌日、五郎は純と蛍のことを頼みに中の沢の分校へ行った。しかし、先生は東京の子は気が重いし、来年の夏には廃校になるから本校へ通ってはどうかと言って、即答を避けた。

 五郎は、学校に近い北村清吉の家へ寄った。すると、そこに東京から令子の妹の雪子が来ていた。そのころ、家では純が蛍に母への手紙を町へ出しに行くように頼んでいた。はじめは、いやだと断っていたが、引き受けてしまう。

町へ行く途中、橋の下に、綺麗な花を見つけた蛍は、橋の欄干の上に手紙を置いて、川へ降りていった。そのとき、橋の上を車が通り過ぎ、置いてあった手紙が川に落ちてしまった。蛍はそれを沢づたいに追いかけていった。

 五郎と雪子は、農協のスーパーに寄って、家に戻ると純が留守番をしていた。純は、雪子を見るなり抱きついた。五郎は蛍が町へ行ったらしいと純から聞かされた。

 夜の7時を過ぎでも蛍は戻ってこなかった。純はまだとぼけていた。五郎は、蛍を探しに出かけた。そこへ、涼子先生が五郎を訪ねてきた。九時半をまわった頃、純は自分が令子への手紙を出してくるように頼んだことを五郎に打ち明けた。夜遅く、蛍は無事に発見された。涼子先生は、いつからでもよいから学校に来なさいと五郎に告げた。

 家に帰り、シュラフにくるまった蛍は、手紙のことは誰にも言っていないからと純に話した。それを聞いた純は、心の奥にあついものを感じていた。



1981年10月23日(金)放送

 

出演
田中邦衛・原田美枝子・吉岡秀隆・中嶋朋子・岩城滉一・熊谷美由紀・石井富子・園めぐみ・塔崎健二・南雲佑介・前沢迪雄・刀原章光・塩月徳子・中沢佳仁・高橋のぞみ・いしだあゆみ・大滝秀治・竹下景子

 


 あくる日、純は雪子に東京へ帰りたいと打ち明けた。雪子は、自分から頼むように言うが、純は自分からは話せないと言って、雪子に頼んだ。その夜、純と蛍はつららと家の中で遊んでた。雪子は家の外で純から頼まれたことと自分が何故富良野へ来たのかを話した。そこへ、バイクで草太が現れ、雪子をホテルへ送り届けると言ってきた。そんな草太の言動につららは不安を感じていた。

 次の日の夜、洗い物を終え二階に上がろうとする純を五郎が呼び止めた。そして、五郎は純に直接父さんに言わずに、雪子おばさんを通じて言ってもらうようなやり方は卑怯だと言ってから、雪子をホテルに車で送った。

 五郎は、分校の涼子先生を訪ね、純のことを相談した。涼子先生は、もう一度よく令子と話し合った方がいいのではないかと言った。

 五郎は、清吉の家から東京の令子へ電話し、純を東京に戻すことを伝えた。それから三日がたち、純と雪子は五郎と蛍に見送られながら麓郷を後にし、北村清吉の車で布部の駅まで送ってもらった。

 電車の発車時刻まで、駅前の喫茶店に3人で入った。そこで、清吉は昔の話をし始めた。そのとき純は、清吉から「お前ら、敗けて逃げていくんじゃ」「わしらを裏切って逃げ出して行くんじゃ」「そのことだけは、よう覚えとけ」という言葉を聞かされた。清吉に見送られ、二人の乗った電車は動き始めた。電車にゆられながら、純はさっき清吉の言った言葉が頭から離れなかった。
そのころ、五郎は、分校の涼子先生を訪ねていた。そこで、涼子先生が、東京の学校で受け持ちの生徒が自殺したことを聞かされた。

 その夜、蛍は、自分の名前が「蛍」とつけられた訳を五郎に聞いた。五郎は、自分が、昔この村を出たときに、自分の体にホタルがまとわりついてきて、出ていくなと言っているようだったという話をした。そして、純の名前は、令子がつけたことも教えてもらった。

 突然、窓に自動車のライトが横切った。蛍が、外に飛びだして、戻ってきて表を指した。そこには、純と雪子が立っていた。純は、ついに決意をひるがえして麓郷に戻ってきてしまったのだった。



1981年10月30日(金)放送

 

出演
田中邦衛・原田美枝子・吉岡秀隆・中嶋朋子・岩城滉一・熊谷美由紀・地井武男・宮本信子・清水まゆみ・南雲佑介・尾上和・塩月徳子・中沢佳仁・高橋のぞみ・いしだあゆみ・竹下景子

 


 純と蛍が中の沢の分校に通うようになったある日、中畑木材へ五郎を訪ねて本多という女弁護士が東京からやって来た。五郎は、本多から母親の令子からの手紙が子供に全部渡っているかどうか聞かれるが、五郎は嘘を言ってしまう。

 純と蛍は学校から帰る途中に、弁護士の本多から母親からの何通かの手紙が自分たちにきていたことを聞き、純はショックを受ける。五郎が仕事を終えて、家に着くと純が令子からの手紙のことで雪子に不満をぶちまけているのを聞いてしまう。五郎は、本多から受け取った手紙を純に渡し、明日本多のいるホテルへ連れて行くことを伝えた。

 翌日、五郎は純だけを車に乗せ、本多の待つホテルへ連れて行った。部屋へ入って話しをしていると、本多が吸っているたばこの灰のことが純には気になった。それは、昔五郎が灰を落として令子に叱られていたことや夜中に令子が誰かと電話で話をしていて、そのとき吸っていたたばこの灰がじゅうたんに落ちたことがあったからだった。本多は、部屋から東京の令子の所へ電話をかけだした。純は自分とは関係のない人が父親のことを悪く言うことに我慢ならず、受話器の向こうには母親が出ているにも関わらずホテルを飛び出し、五郎の待つ車へと走った。



1981年11月 6日(金)放送

 

出演
田中邦衛・原田美枝子・吉岡秀隆・中嶋朋子・岩城滉一・熊谷美由紀・地井武男・清水まゆみ・今野照子・塔崎健二・南雲佑介・尾上和・塩月徳子・中沢佳仁・高橋のぞみ・大友柳太朗・竹下景子

 


 純は、あれ以来五郎の自分に対する態度と蛍に対する態度が違うことにひがみを感じるようになる。翌日、五郎は山仕事に出かけ、笠松の杵次から五郎たちが住んでいる土地は自分のものだと聞かされる。その夜、学校のテストの点のことで純が蛍を馬鹿にするが、五郎は静かにするように注意する。五郎は、杵次の言葉が気になっていた。

 次の日、純と雪子は草太の車で町へ買い物に行く。草太はボクシングの練習の後、純を喫茶店に誘い、雪子の気持ちを聞き出そうとするが、純はへなまずるく応対する。五郎は、杵次に土地のことについて詳しい話を聞く。家に帰ると、かんびが片付けてないのを見つけ、てっきり純の仕業だと勘違いし、純を叱るが、それは雪子が出しっぱなしにしたものだった。純はその夜、雪子に自分が五郎に嫌われていると話す。

 次の日、杵次は仕事場には来なかった。純が、がんびで火をつけようと練習しているところへ杵次がやってきた。その夜、久しぶりに五郎の家は賑やかだった。そこへ、つららが訪ねてきて、純に草太を呼ぶように伝えるが草太は相手にしなかった。純は、五郎が杵次の悪口を言ったときに怒ったくせに、今は自分が悪口を言っていることに矛盾を感じ、また、草太に相手にしてもらえないつららも自分と同じで嫌われていると感じ、一人外へ出る。そんなとき、蛍のかわいがっているキツネが現れ、石を投げつけて逃がしてしまう。五郎は怒り、純を殴った。草太は純を追いかけ、自分の車の中で諭す。純は、そんな草太が優しく男らしく思えた。蛍のキツネは、このことがあってから現れなくなってしまった。



1981年11月 6日(金)放送

 

出演
田中邦衛・原田美枝子・吉岡秀隆・中嶋朋子・岩城滉一・熊谷美由紀・地井武男・清水まゆみ・今野照子・塔崎健二・南雲佑介・尾上和・塩月徳子・中沢佳仁・高橋のぞみ・大友柳太朗・竹下景子

 


 純は、あれ以来五郎の自分に対する態度と蛍に対する態度が違うことにひがみを感じるようになる。翌日、五郎は山仕事に出かけ、笠松の杵次から五郎たちが住んでいる土地は自分のものだと聞かされる。その夜、学校のテストの点のことで純が蛍を馬鹿にするが、五郎は静かにするように注意する。五郎は、杵次の言葉が気になっていた。

 次の日、純と雪子は草太の車で町へ買い物に行く。草太はボクシングの練習の後、純を喫茶店に誘い、雪子の気持ちを聞き出そうとするが、純はへなまずるく応対する。五郎は、杵次に土地のことについて詳しい話を聞く。家に帰ると、かんびが片付けてないのを見つけ、てっきり純の仕業だと勘違いし、純を叱るが、それは雪子が出しっぱなしにしたものだった。純はその夜、雪子に自分が五郎に嫌われていると話す。

 次の日、杵次は仕事場には来なかった。純が、がんびで火をつけようと練習しているところへ杵次がやってきた。その夜、久しぶりに五郎の家は賑やかだった。そこへ、つららが訪ねてきて、純に草太を呼ぶように伝えるが草太は相手にしなかった。純は、五郎が杵次の悪口を言ったときに怒ったくせに、今は自分が悪口を言っていることに矛盾を感じ、また、草太に相手にしてもらえないつららも自分と同じで嫌われていると感じ、一人外へ出る。そんなとき、蛍のかわいがっているキツネが現れ、石を投げつけて逃がしてしまう。五郎は怒り、純を殴った。草太は純を追いかけ、自分の車の中で諭す。純は、そんな草太が優しく男らしく思えた。蛍のキツネは、このことがあってから現れなくなってしまった。



1981年11月20日(金)放送

 

出演
田中邦衛・原田美枝子・吉岡秀隆・中嶋朋子・岩城滉一・熊谷美由紀・清水まゆみ・今野照子・塔崎健二・南雲佑介・尾上和・園めぐみ・中沢佳仁・塩月徳子・高橋のぞみ・高山千草・岡田和子・泉よしこ・地井武男・いしだあゆみ

 


 12月も半ばを過ぎ、純も蛍も雪はねの毎日であった。雪子が東京へ帰ってからは、五郎が山仕事に行っている間、中畑和夫の家に世話になっていた。純は、そこにある電話が気になりだしていた。ある日、中畑の家で一人になったとき、東京の令子のところへ電話をかけ、令子の声を聞くが、何もしゃべらずに切ってしまった。

 山仕事が終わり、中畑木材の広間で慰労会が行われた。純は密かに部屋を出て、事務所の電話で東京の令子へ電話をかけ、次は蛍にも話をさせようと考えた。クリスマスの準備で中畑家にいるとき、純は蛍と二人っきりになった時を見計らって、令子のところへ電話をかけ、蛍を電話口に出すが蛍は令子の声を聞くと切ってしまう。そのときから、蛍は口をあまり聞かなくなった。終業式の日、五郎は凉子先生から蛍が学校から東京の令子のところへ電話をかけていたことを知らされ驚く。

 その夜、純と蛍はクリスマスを中畑の家で過ごそうとするが、中畑のおじさんは、純と蛍に家に帰るように言う。純は不満だったが、クリスマスは各自が家でやるものだと言われ、しぶしぶ車で家まで送ってもらう。車を降りた純に、中畑のおじさんが純の日頃の態度について叱責する。家にはいると五郎はおらず、壁に靴下を履いた二組のスキーが立て掛けてあった。それは、五郎からのクリスマスプレゼントだった。

 その晩、ストーブの側で三人枕を並べて寝るが、突然蛍が学校から令子へ電話したことを五郎に告白したので、純は驚く。自分も言おうと思ったが言うタイミングを逸してしまう。純は、その夜夢を見た。それは、賛美歌の行列が森の中から現れ、先頭には五郎と令子と蛍がおり、必死に叫んでも気がつかず、森の中へ消えていってしまう夢だった。純の寝顔には、一筋の涙が流れていた。



1981年11月27日(金)放送

 

出演
田中邦衛・原田美枝子・吉岡秀隆・中嶋朋子・地井武男・岩城滉一・熊谷美由紀・村井国夫・清水まゆみ・塔崎健二・園めぐみ・南雲佑介・尾上和・塩月徳子・中沢佳仁・江川菜子・大友柳太朗・林美智子・いしだあゆみ・竹下景子

 


 12月29日、家から1qほどさかのぼったところから川の水をひく作業の大詰めを迎えていた。しかし、パイプの途中が凍っているらしくなかなか水が出てこなかった。しびれを切らした純は、一人町へ年賀状を出しに出かけ、バス停で母親の帰りを待つ正吉に会い、正吉の家へ行く。そこで、水で薄めた酒を飲みながら二人で盛り上がっていた。純は正吉に紅白を家で一緒に見ないかと誘われる。

 その夜、五郎は仲間と小野田で酒を飲んでいたが、草太は中川に雪子のことでからかわれ、殴り合いのけんかを始める。東京へ戻った雪子は、手編みのマフラーを井関に受け取ってもらおうとするが、袋の中身を見ただけで井関は立ち去ってしまう。雪子は傷つき北海道へ帰る。そのころ、草太は毎日布部の駅で雪子の帰りを待っていた。つららは、草太をあきらめ先輩を頼って旭川へ出ることを草太に打ち明ける。草太は、自分の嫁になるよう言い、つららは感激する。

 次の日、パイプの凍っている箇所が判明し、ついに水道が完成した。純と蛍は感動する。その夜、二人がよく働いたごほうびに正吉の家で紅白をみてもいいことを許す。凉子先生を家へ送る途中で、純と蛍は正吉の家で降ろしてもらい正吉の家へ入ろうとするが、正吉が帰ってきた母親と楽しんでいる光景を見て、正吉の家をあとにする。五郎も中畑の家へ入ろうとするが、できずに一人家へ帰り令子に年賀状を書き始めた。五郎は帰ってきた二人を連れて、富良野の町の灯を見に行く。家へ帰ると、雪子が東京から帰ってきていた。純と蛍は大いに喜んだ。そこへ、草太がつららを連れて現れ、雪子を見るなり舞い上がってしまう。そんな草太につららは寂しさを感じる。東京では、令子が一人新しい年を迎えようとしていた。



1981年12月 4日(金)放送

 

出演
田中邦衛・いしだあゆみ・吉岡秀隆・中嶋朋子・岩城滉一・熊谷美由紀・地井武男・清水まゆみ・中沢佳仁・山中秀樹・林美智子・竹下景子

 


 昭和56年正月、つららが五郎の家にひょっこり現れ、草太と雪子の関係について五郎に尋ねるが、はっきりしたことが五郎には言えなかった。そんなつららの気持ちとはうらはらに、草太は雪子と純・蛍・正吉を連れて大雪へスキーに行っていた。

 その頃、富良野の駅に令子が突然やって来た。駅の改札口を出て、タクシーを拾って中畑和夫を訪ねた。令子の来訪に和夫は驚く。五郎を連れてくるから、家で待つように言うが聞き入れず、和夫は令子を車に乗せ、五郎の家へ連れて行く。五郎は、令子の出現に慌てふためく。令子は、二階の純や蛍の部屋へ上り、子供たちに会わせてもらえるように五郎に頼む。五郎は、「母親がどうしても会いたいというのを拒否する権限は自分にはない。ただ、いま子供らに会わせてしまうと、この3か月築いてきたここでの暮らしが崩れてしまう。時期が来たら、必ず会わせる。」と令子に話す。だが、令子に一目でいいからと言われ、明日中畑の車の中から子供たちを見せると約束する。

 スキーから帰った蛍が、誰かが来たのではないかと五郎に聞くが、五郎は中畑が来ただけだと嘘を言う。純は紙包みを見つける。それは、令子が置いていったものだったが、お年玉だと言って純に渡す。変に思った雪子は、外で紙包みを燃やす五郎から令子が来たことを知らされる。その夜、蛍は雪子に令子が来たのではないかと聞く。それは、令子の臭いが蛍のパジャマについていたからだった。

 次の日の朝、五郎は初めて子供たちに風力発電のことを話す。そして、外で作業しているところへ、中畑が令子を乗せてやってきた。五郎は、純と蛍に仕事を任せ、車の中の令子に見せた。そこへ、草太が車でやって来て、令子を見つけてしまう、慌てた雪子は草太に駆け寄り、車に誘う。しばらくして中畑は令子を乗せて旭川空港まで送っていった。 20年ぶりに正吉の母親のみどりと再会し、互いの身の上話で盛り上がっていた。そこえ、母親の話を聞いた草太が現れ、母親に会わせなかった五郎をせめるが、逆にみどりから他人が人の心の中まで入り込むものではないと叱責される。夕食の時、五郎はラジオは、令子からの贈り物だと言うが、純も蛍もそれには答えず、風力発電のことでその場を取り繕っていた。



1981年12月11日(金)放送

 

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田中邦衛・いしだあゆみ・吉岡秀隆・中嶋朋子・地井武男・岩城滉一・熊谷美由紀・清水まゆみ・今井和子・今野照子・塔崎健二・南雲佑介・尾上和・塩月徳子・中沢佳仁・大友柳太朗・林美智子・竹下景子

 


 風力発電のバッテリーが届いたとの知らせがあり、五郎に内緒で雪子と純は富良野へ車で出かける。途中、五郎を見かけるが、五郎は気がつかなかった。五郎は、自販機でたばこを買うと笠松のみどりと正吉をバス停で見かける。みどりは、杵次と飼っている馬のことでやり合い、旭川へ帰るところだった。

 富良野で部品を受け取った雪子と純は、スキーの写真ができてるかもしれないから八幡丘の草太の家へ寄ってから帰ることにした。八幡丘の坂に入ると雪が強くなり、吹雪になってきた。雪子は、運転を誤り吹き溜まりに突っ込んでしまう。

 家では、留守番の蛍がお手玉をしていた。そこへ、笠松の杵次が訪れる。お手玉をしながら、昔の話をし始める。そこへ、五郎が帰ってくる。蛍は、杵次の馬を見に外へ出る。杵次は、北電に頼んで電気が引けるようにしたと五郎に言うが、五郎はそれを断る。杵次は、前の水道のこともあり、憤慨する。「昔は、懐かしがるだけのもんでない。二度としたくない昔だってある。お前は、まちごうとる。今に後悔する。」と言って帰る。

 その頃、雪子と純は吹き溜まりからの脱出を試みるが、雪はどんどん積もっていった。五郎は、帰ってこない二人を心配し、辰巳の家へ電話を借りに行く。富良野の電気屋へ電話し、午後1時頃出たことがわかったが、その後の消息が分からなかった。草太の家へも電話をするが、停電で牛舎が忙しく一方的に切られてしまう。五郎は、中畑からジープを借り、麓郷街道を探す。途中、すれ違った車に聞くが、車はなかったとのことだった。五郎は、笠松の杵次を訪ね、馬そりを貸してもらいたいと言う。雪子と純は疲れと寒さで、車内で眠ってしまう。純は、家族四人お花畑ではしゃいでいる夢を見ていた。突然雪子に起こされ、馬そりの鈴の音を耳にする。二人は馬のおかげで奇跡的に助け出された。



1981年12月18日(金)放送

 

出演
田中邦衛・吉岡秀隆・中嶋朋子・地井武男・岩城滉一・熊谷美由紀・小松政夫・清水まゆみ・今井和子・蟹江敬三・今野照子・塔崎健二・南雲佑介・尾上和・中沢佳仁・塩月徳子・高野嗣郎・長谷川康夫・石丸謙二郎・荒瀬寛樹・横尾三郎・田辺和之・坂井寿美江・永井恵子・青木がずもり・泰正二・大友柳太朗・竹下景子

 


 中畑の家では、今回の停電のことが話題になっていた。そこへ、雪子と純の事件については何も知らない草太が入ってくるが、話についていけなかった。驚いた草太は、雪子に会いに五郎の家へ行く。雪子は、風邪を引いてせき込んでいた。純は、部屋におれず、外に出ると蛍がいなくなっていたキツネが来ていると知らせに来た。

 五郎は、杵次の家へ酒とお金をもって礼に訪れる。杵次は、酒は受け取るが、「金を積むなら10万は入れてこい。おらは、二人の命を救ったんだ。」と言って、金は受け取らなかった。雪子は、草太の牧場で働き始める。純は、草太と雪子のことでつららから追い回されるようになる。純は、正吉に呼び止められ、命を助けてやったのに、杵次の悪口を言っていると言われ、一方的に殴られ川に落とされる。そして、正吉たちから雪子が五郎の女だと言われ傷つく。

 川島竹次が草太の牧場へ現れ、今夜会いたいと伝える。その夜、草太は竹次からつららのことを聞かされる。草太は、つららの待つ「くるみ割り」へ行き、窓際に座っているつららを外からしばらく見つめ、そのままバイクで立ち去ってしまう。竹次は、草太と会ったその足で五郎の家へ行き、雪子に風邪薬を渡す。そこへ、蛍がキツネが来ていると知らせに入ってくる。純は、草太に喧嘩の仕方を教えてほしいと頼む。草太が訳を聞くと五郎と雪子の噂のことだという。草太の立ち会いで、純は正吉は喧嘩を挑む。

 草太は、清吉からつららのことで話があると言われるが、聞こうとしない。自分は、どこへも行かず、この家に居てやっているのだと清吉に言う。むしゃくしゃした草太は、町へ飲みに出かけ、客に雪子のことで馬鹿にされ、喧嘩をしてしまう。警察での取調中、つららに捜索願が出されたことを知らされる。つららを探しに行っていた辰巳が、車を返しに五郎の家に来たとき、草太が居るのを見つけ殴りかかる。純は、雪子につららが家出したことを告げるが、雪子は頭痛だと言って寝込んでいた。

 その夜、キツネの悲鳴が聞こえ、外へ飛び出した蛍は、キツネがとらばさみを引きずっているのを目撃し、ショックを受ける。



1981年12月25日(金)放送

 

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田中邦衛・原田美枝子・吉岡秀隆・中嶋朋子・地井武男・岩城滉一・清水まゆみ・今井和子・今野照子・南雲佑介・尾上和・中沢佳仁・塩月徳子・高橋のぞみ・大友柳太朗・大滝秀治・竹下景子

 


 つららが家出をして二日たち、蛍がキツネの餌を雪の上にまいているとクマさんがとらばさみを持って現れた。蛍のキツネはこれと同じ罠にかかったらしい。

 1月20日学校が始まり、外で動物の足跡について勉強していた。そこで、正吉は蛍のキツネがとらばさみにやられたことを知る。その罠は、自分の爺ちゃんが仕掛けたものであることを知り、凉子先生に相談する。そして、もう二度ととらばさみを仕掛けないように杵次に願い出た。その頃、五郎の家では、みんなでバターづくりに夢中になっていた。その夜、雪子は五郎につららが旭川にいるようだと話す。草太が、旭川に探しに行っていたのだった。

 次の日、学校が終わると純と蛍は凉子先生に呼び止められる。凉子先生から、昔からここでは狩りをして生活してきた人たちがいることを知らされるが、純は納得できずにいた。家へ帰ると待ちに待った風力発電が完成し、家の中が明るく照らされ、二人は感動していた。

 草太の牧場では、雪子が清吉からここでの仕事を辞めてもらいたいと言われ傷つく。家に帰ると、いきなり電灯がつき、五郎たちが誕生日のパーティーをひらいて待ってくれていた。 パーティーの途中で薪を取りに外へ出ると、笠松の杵次が立っていた。杵次は、蛍にキツネを罠にかけたのは自分だと謝り、正吉を恨まないでほしいと言って立ち去っていった。
 そして、2月が過ぎ、もうすぐそこに春が来ていた。



1982年 1月 8日(金)放送

 

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田中邦衛・いしだあゆみ・吉岡秀隆・中嶋朋子・地井武男・藤田淑子・永浜三千子・今野照子・新田勝江・高山真樹・園めぐみ・築正昭・下川洋一・吉田俊博・塩田英湖・浦島ゆらこ・依田智・藤野晃・日野邦彦・関啓三・大島科子・大石保子・伊丹十三・竹下景子

 


 突然、母親の令子が倒れ、純と雪子は東京へ向かった。病院へ着くと、令子が笑顔で迎えてくれ、純は安心する。雪子は、付き添いの人から令子の様子を聞き不安になり、友人のみや子に相談するため外出をする。純は、恵子ちゃんに電話をするが、英語塾へ行っていると聞き、塾へ出向く。東京にいたときの友達が英語をしゃべっていることにショックを受ける。

 次の日、学校帰りの恵子ちゃんを道で待ち伏せ、久しぶりに話ができた。そのあと、豊君の家にみんなで集まったが、みんなの話に入っていけず、純は傷つく。みんなと別れて、病院へ行くと雪子が令子に病院を変わるように説得をしていた。そこへ、男が花束をもって入ってきた。純は、令子から吉野を高校時代の友人として紹介される。純は、自分の母親を「令子」と呼び捨てにする吉野が気になった。

 翌日、吉野から電話があり、映画や遊園地へ遊びに連れて行ってもらう。純は、吉野と一日一緒にいて、吉野という人物に好感をもつ。あと二日で北海道へ戻らなくてはならなくなった純は、このまま東京に残るかどうか迷っていた。



1982年 1月15日(金)放送

 

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田中邦衛・原田美枝子・吉岡秀隆・中嶋朋子・斉藤晴彦・今野照子・永浜三千子・中沢佳仁・下川洋一・吉田俊博・園めぐみ・真鍋敏・平田朝音・伊丹十三・いしだあゆみ・竹下景子

 


 北海道へ帰る前日、純は雪子と病院へ令子を訪ねた。雪子は、純に付き添いを頼んで、吉野に会いに出る。純は、令子が寝入ってしまったので、一度アパートへ戻る。物置にしまってあった自転車を出してたかし君の家へ遊びに行き、そこでアダルト雑誌をもらってしまう。家へ戻って、雑誌をバックに隠しているところへ病院の雪子から電話が入り、慌てる。

 病院へ行くと令子は起きており、黙って出ていったことを雪子に怒られる。純は、令子の気持ちを考えるとやっぱりこのまま東京にいた方がいいと思い始める。その夜、五郎に手紙を書いているとき、昔のことを思い出していた。それは、五郎が拾ってきた自転車のことだった。東京では、流行遅れになると何でもすぐに捨ててしまう。それに比べ、自分たちの生活は、ものはないけれど何とか工夫して生活している。その素晴らしさに、純は少し気がついてきていた。翌日、病院には顔を出さず、まっすぐ空港に向かった。

 東京から帰って一週間が経った。純は、蛍や五郎からUFOの話を聞かされるが信じようとしなかった。思春期を迎えた純と正吉は東京から純が持ち帰った雑誌を見て盛り上がっていた。そして、正吉が、森という新婚の家から聞こえてくる声を聞いて興奮したと言いだし、今夜8時半頃二人で行くことにした。純は、五郎に星の観察だと嘘をつき、家を飛び出すが蛍が一緒についてきたしまう。野原で、寝転がると空に光る物体を見つける。それは蛍と五郎が言っていたUFOだった。3人は、UFOをベベルイの森の方へ追いかけ、そこで本物のUFOに遭遇する。ところが、UFOが去った後、森の中から凉子先生が鼻歌を歌いながら現れ、3人は驚き、このことは秘密にしておくことを約束する。



1982年 1月22日(金)放送

 

出演
田中邦衛・吉岡秀隆・中嶋朋子・地井武男・岩城滉一・熊谷美由紀・清水まゆみ・今井和子・矢田稔・石井愃一・今野照子・塔崎健二・岡本麗・南雲佑介・尾上和・中沢佳仁・塩月徳子・高橋のぞみ・伊尾正子・大友柳太朗・大滝秀治・原田美枝子

 


 次の日の朝、純と蛍は朝食を急いで済ませ、学校へ出かけた、途中で正吉と会い、昨日の約束を確認し、今日一日凉子先生を観察することにした。ところが、凉子先生は旭川の教育委員会へ出かけてしまい。本校の先生が来ていた。そして、今度父兄会をおこなうから家の人に連絡しておくように言われる。

 その頃、保護者の家に凉子先生を中傷する怪文書が送られてきていた。五郎は、こんなことをする奴は卑劣だ言い、手紙を破り捨てた。 純は、ますます女性の体を意識しだす。五郎と蛍の3人で町に買い物に出かけても、女性の胸ばかりに目がいってしまっていた。五郎は、町で同じ中の沢の分校の保護者に声をかけられ、笠松の杵次が怪文書のことで話し合いたいと言っていることを知らされる。その夜、保護者全員が集まり、今後の対応について話がされた。杵次は、断固凉子先生を問いつめると言ってきかなかった。

 五郎は、家に帰り二階の純と蛍の様子を見て、降りようとしたとき純が東京から持ち帰った雑誌を見つけショックを受ける。翌日、学校へ行くと凉子先生がいた。窓越しに、先生を観察していたが、純は先生の胸の膨らみばかり見ていた。五郎は、思春期の純にどうのようにしたらいいのか困り、北村の家へ相談に行く。そこで、清吉から相談したいことがあると言われ、その夜正子に内緒で富良野の「くまげら」で会うことになった。そこで、清吉から雪子が東京に帰ってしまったのは自分が裏で手を回したからだと思われているから誤解を解いてもらいたいと頼まれる。五郎は、ボクシングジムへ出向き、草太に説明するが納得してもらえなかった。そのとき、草太から今度札幌で4回戦の試合に出ることを聞かされる。

 次の月曜日の父兄参観日の日、酒に酔った杵次が遅れて教室にやってきた。授業が終わり、分校の閉鎖のことを連絡し始めたとき、杵次が怪文書のことについて凉子先生に問いただした。先生が自分からことの詳細を語り始めたが、五郎が途中でやめさせ、杵次を教室から連れ出した。純は、そんな杵次の姿に涙していた正吉の気持ちを察していた。

 その夜9時頃、雨の降る中を笠松の杵次が一升瓶を片手に五郎の家に現れた。杵次は、今日18年間共にした馬を売ったことを話に来た。話し終わると乗ってきた自転車にまたがり、一人雨の中を走り去った。翌朝、明け方まで降った雨も上がり、純と蛍は学校へ行く途中で橋の上の人だかりを見に行く。すると橋の下には昨日の夜現れた杵次が倒れて死んでいた。



1982年 1月29日(金)放送

 

出演
田中邦衛・原田美枝子・吉岡秀隆・中嶋朋子・地井武男・岩城滉一・清水まゆみ・今井和子・武内文平・佐々木剛・宇南山宏・神田正夫・田村元治・石井愃一・岡本麗・大友柳太朗・今野照子・塔崎健二・南雲佑介・尾上和・中沢佳仁・塩月徳子・高橋のぞみ・伊尾正子・林美智子・大滝秀治・竹下景子

 


 18年間連れ添った馬を手放した日に、杵次は川に転落してなくなった。笠松の家では、葬儀の準備で慌ただしかった。そんなとき、正吉の姿が見あたらず、五郎たちが探すが見つからない。蛍は、以前杵次から教えられた木の上の家へ純と凉子先生を連れて行く。そこには、一人悲しみに暮れる正吉の姿があった。

 翌日、杵次の遺体は焼かれ、夜はご馳走がでた。純は、葬式なのにみんながお祭りのゆうに楽しそうなのに驚く。そんな中で、杵次の息子たちが生前のことをとやかく言うことに立腹する。草太はそんな清吉の様子を見かね、家に連れて帰る。純と蛍は、一足先に辰巳に送られ、家に戻る。純は、さっき清吉が言った「あの馬だけが、爺さんのことをわかっていた。」という言葉がいつまでも頭から離れなかった。夜中に、ふと目を覚ますと、五郎が帰っており、ストーブであの雑誌を燃やしているのを見て、唖然とする。そして、五郎に、最近女性の胸や足が気になってしょうがないので自分は病気だと打ち明ける。五郎は、それは、一人前の大人になった証拠だと説明し、これからは一人前に扱うことを約束する。そして、五郎が秘密にしてきた丸太小屋をつくる計画を話す。

 東京から、雪子からの手紙が届く。そこには、令子の容態が書かれていた。雪子の説得にも応じず、病院を変わろうとしない令子に五郎から何とか言ってもらいたいとのことだった。  夕方、正吉とみどりが家にやって、夕食を一緒に食べることになり、純も蛍も喜ぶ。 ところが、ある日学校の授業が終わると凉子先生が正吉が急に学校を辞めて遠くへ行ってしまったことを知らされる。

 いよいよ、丸太小屋の計画が実行される日が近づいてきていた。五郎は中畑たちに模型を使って作り方を説明していた。



1982年 2月 5日(金)放送

 

出演
田中邦衛・原田美枝子・吉岡秀隆・中嶋朋子・地井武男・岩城滉一・宮本信子・清水まゆみ・矢田稔・松村彦次郎・今野照子・塔崎健二・南雲佑介・尾上和・塩月徳子・高橋のぞみ・いしだあゆみ・竹下景子

 


 夏になった。五郎は、この夏中に丸太小屋を完成させると純や蛍に宣言していたが、二人は不安に思っていた。その日は午後から授業が中止となり、凉子先生に連れられてバスで本校に行った。帰りのバスの中で純たちは凉子先生に本校へ来てくれるようにお願いするが先生ははっきりした返事はしなかった。

 家への帰り道、自分たちを呼ぶ声に振り向くと、それは東京へ行っていた雪子の声だった。久しぶりの再会に二人は喜ぶ。雪子は、五郎に令子と弁護士の本多が一緒に来ていることを話す。五郎は、二人に会いにワインハウスへ出かけた。令子は、最後に子供たちに会いたいと申し出た。五郎は了承し、その夜純と蛍に正式に令子と別れることを伝え、明日令子と3人で過ごすようになっていると言った。翌日、純と蛍は学校を早引きし、令子の待つホテルへ五郎の車で送ってもらった。五郎は、二人を降ろすと帰ってしまった。

 ロビーには令子が立っていた。そこへ弁護士の本多が現れ、4人で中富良野のラベンダー畑へ行くことになった。純は、胸が一杯でラベンダーなんか見ていなかった。純は、一晩中考え令子についていこうと決めていた。蛍は、令子とは一言も口も聞かず、純はそんな蛍の様子にいらだっていた。令子は、二人の通っている学校へ行き、凉子先生から二人の学校の様子を聞き安心する。

 五郎は、中畑の家に離婚の保証人を頼みに来ていた。突然電話のベルが鳴り、令子が急に苦しみだし渡辺病院に担ぎ込まれたということだった。五郎は、すぐに病院へ向かった。病院の医者から令子の様態について聞かされるが、ちゃんとしたところで検査をした方がよいと言われる。病室へ行くと令子は目を覚まし、子供たちに会わせてくれたことに感謝していると言った。そこへ、中畑と雪子が入ってきた。雪子は、令子に怒った。

 次の日、黒板家の墓へ令子たちと行くことになっていたが、蛍は仮病を使って、一緒に行こうとはしなかった。五郎は、令子にいつでも子供らには会わせると約束して、富良野の駅へ令子を送った。純は、電車のドアが閉まるまで手を握っていた。最後に令子は蛍のことを頼むとだけ純に言った。令子は、座席に戻ると外の景色をぼんやり見ていた。令子は、川岸を一死に走る蛍を見つけ、大声で「蛍」と叫び手を振った。蛍の目は涙で一杯になっていた。蛍は、草太に頼んで一人令子を川岸から送ったのだった。

 五郎と純が丸太小屋の作業をしているところへ蛍が帰ってきた。家で寝ていなかったことを五郎は叱った。蛍は、二階に駆け上がり、ひとり泣いた。その夜、草太が蛍を元気づけようと「いかだ下り大会」のことを伝えに来た。突然雪子に声をかけられ草太は驚く。慌てて家を飛び出したところで五郎に出くわす。五郎は、草太から昼間蛍が家に来て頼まれ、坂の下の電車の見える場所へ連れていったことを聞かされる。それは、蛍が草太に内緒にしておいてほしいと頼んだことだった。そして、帰るときに「父さんが世界中で一番かわいそうなんだ」と言っていたことも伝えた。

 五郎は、風呂を沸かしている純の横に座り、「蛍はお前や父さんよりももっと辛くて、送りに行かなかったかもしれない」と話した。純は、二階に上がって寝ている蛍の顔に残った涙の筋を見て、さっき五郎の言った言葉が本当だったことを知る。次の日曜日、廃校式が五郎や中畑や辰巳らの分校の卒業生を招き行われた。

 富良野では、7月26日のいかだ下り大会に向け、二三日前からそれぞれいかだをつくりはじめていた。純と蛍は、中畑木材の大きないかだに乗せてもらうことになっていた。



1982年 2月12日(金)放送

 

出演
田中邦衛・原田美枝子・吉岡秀隆・中嶋朋子・岩城滉一・熊谷美由紀・地井武男・清水まゆみ・今井和子・児島美ゆき・鳥羽靖子・今野照子・塔崎健二・南雲佑介・尾上和・塩月徳子・佐藤健治・石田誠三・松尾真知子・竹下景子

 


 いかだ下りの日が明後日に迫っていた。純と蛍は、初めは、五郎のいかだに乗るつもりだったが、中畑たちが制作している「四畳半」と名付けられたいかだにのれるように頼み込む。それは、五郎と辰巳のいかだが安全性よりも目立つことに重点をおいて制作されていたからだった。純や蛍が「四畳半」乗ることを知った五郎は面白くなく、ふてくされていた。草太は、去年つららを乗せて出たいかだ「みずすまし号」にペンキを塗っていた。母の正子が、雪子と一緒に乗ったらどうかというが、草太は何も答えなかった。正子は、雪子にもう一度牧場で働いてもらうように頼んでもらえないかと草太に言うが、草太はいまさら何を言っていると突っぱねた。

 凉子先生は、学校から東京の父に学校の閉校に伴って自分も学校をかわることを電話で話した。電話が終わった頃に五郎が現れ、中畑たちのいかだに乗らないかと誘いに来た。

 いかだ下り大会の当日、草太は自分いかだに雪子を乗せたかったが、見栄を張っていた。草太は16番目、五郎たちは20番目そして四畳半は21番目にスタートしていった。五郎は、途中駒草号に乗るこごみと知り合う。急流で五郎たちのいかだはひっくり返り、五郎はこごみのいかだに助けられ、東京の話で意気投合する。四畳半に乗っていた純と雪子は家出していたつららの姿を川岸に見つける。

 いかだ下り大会が終わり、純と蛍は凉子先生と家路についていた。そこで、蛍は先生に今夜UFOを見せてもらうことを約束する。臆病な純は、それができなかった。家につくと、まだ五郎も雪子も帰っていなかった。その頃雪子は、辰巳の家でつららの置き手紙を見つけた。家に帰った五郎は、純からつららの話を聞き、草太の家に走った。雪子たちは、富良野駅に行き、つららを探したが、見つけることができなかった。草太も駅の前でバイクに座ってつららの現れるのを待っていた。草太は、雪子たちを見つけるなり、喫茶店に入っていった。五郎と雪子も後を追った。草太は、今日一日はつららのことを考えてやりたいと雪子に言う。雪子は、そんな草太が素敵だと感じていた。

 その頃、五郎の家でも一つの事件が起ころうとしていた。UFOを見に行った蛍と凉子先生が9時を回っても帰らなかった。



1982年 2月19日(金)放送

 

出演
田中邦衛・いしだあゆみ・吉岡秀隆・中嶋朋子・地井武男・岩城滉一・ガッツ石松・清水まゆみ・児島美ゆき・鳥羽靖子・小川真司・佐藤晟雄・尾上和・南雲佑介・前沢迪雄・刀原章光・長岡恵利子・小川英男・竹村逸平・柏井浩三・木村昭宏・中村育二・西村裕子・栗田文恵・今井耐介・宝木原博也・川崎輝雄・新城彰・竹下景子

 


 五郎は、純から蛍と凉子先生がベベルイの奥の方へ行っているかもしれないと聞き、探しに出かける。10時を過ぎても、五郎も蛍も帰ってこなかった。純は、初めは蛍を心配していたが、段々腹が立ってきていた。そのうち寝込んでしまい、入り口の開く音で目を覚ました。蛍が見つかったのだった。五郎は、今日ことは凉子先生が問題にされるから誰にもしゃべらないように純に言った。蛍は、純に今日あったことを興奮してしゃべった。純は、そんな蛍がうらやましく思え、ねたましく感じていた。

 翌日、五郎に連れられ、初めて丸太小屋を建てる場所を見に行った。そこで、純は五郎から蛍の話を信じてやらなかったことを叱責される。純は、五郎はいつも蛍の味方だと感じた。

 7月27日・28日の二日は、富良野のへそ祭りの日で、五郎は夕方からみんなで見に行こうと張り切っていた。雪子と純が洗濯物を干しているところへ草太がバイクでやって来た。今度札幌でやる試合の取材がジムであることを雪子に伝えに来たのだった。祭りの前にみんなでボクシングジムを訪れたが、そこでの主役は草太ではなく会長の成田新吉だった。五郎たちは、祭りに行くが純は一人ジムに残った。そこで、五郎から口止めをされていたあの事件のことを新聞記者にしゃべってしまったのだった。

 そのころ、蛍は五郎の肩車で祭りの見物をしていた。五郎は、祭りでおどるこごみの姿を見つける。その晩、五郎を富良野に残し、中畑の車で家に向かった。車内では祭りの話して盛り上がっていたが、純だけは、あの晩のことをしゃべってしまったことに後悔していた。

 一人富良野に残った五郎は、こごみの勤める駒草というスナックに顔を出した。そこで、中畑和夫が「悲劇さん」というあだ名が付いていて、そのわけを聞いて五郎は驚く。その夜、酒に酔った五郎が中畑を訪れ、こごみから聞いた話をし始めたので和夫は狼狽し、五郎を家から出した。それから2日が経ち、本校の先生が二人が突然家へやって来た。先生たちは、あの晩のことを蛍に聞きに来たのだった。純は、自分がしゃべったことで凉子先生が問題にされていることを知り愕然とする。その晩、五郎が暗い顔で帰ってきた。純は、その原因が自分にあると思っていた。それで、夕食の時に五郎に打ち明けた。しかし、五郎は「しゃべっちまったことはしかたがない。」とひとこと言って外へ出ていった。実は、令子から送られてきた離婚届に五郎はくさっていたのだった。

 五郎は、こごみに会いに富良野の町へ出かけた。五郎は、こごみに令子から届いた離婚届を見せ、中畑が話していたことは自分のことだと言った。そんな五郎にこごみは同情し、自分のアパートに誘った。朝帰りをした五郎を蛍と雪子が寝ないで待っていた。蛍は、五郎に抱き上げられたとき、ラベンダーの香りに気づく。翌日、新聞に凉子先生の記事が載った。



1982年 2月26日(金)放送

 

出演
田中邦衛・原田美枝子・吉岡秀隆・中嶋朋子・地井武男・清水まゆみ・児島美ゆき・草薙幸二郎・福田公子・酒井ゆきえ・鳥羽靖子・今野照子・阿部希郎・藤田啓而・三谷俊夫・南雲佑介・尾上和・赤根谷芳雄・永浜三千子・塩月徳子・竹下景子

 


 純は、新聞に記事が載ってからというもの完全に落ち込んでいた。蛍から五郎に最近女の友達ができたらしいと聞かされ驚く。二人は、できたら雪子と五郎が結婚してくれたらいいと望んでいたので、雪子に直接聞くことにした。ジャンケンで負けた純が雪子に話すが、丸太小屋には自分の部屋がないと言われ、純たちはショックを受ける。

 五郎は、その夜も遅くに帰ってきた。五郎は、寝床でランプをつけて本を読み始めたが、灯油の無駄だと純に叱られてしまう。翌朝、五郎は丸太小屋の土台を組みに出かけた。蛍は、自分の作った弁当を届けに、一人作業現場に向かった。そこで、五郎がこごみと二人で楽しそうにしているところを見てショックを受け、持ってきた弁当を川へ流してしまう。

 翌日、東京からテレビ局の人がやって来た。蛍の見たUFOのことで番組に出演してほしいとのことだった。蛍は出たくないと言うが、純は令子が東京で見るかもしれないから出ろと蛍を説得した。結局、蛍は翌日インタビューを受け、3日後の番組に放送されることになった。蛍の話が作り話とされ、凉子先生も避難する番組の内容に蛍は傷ついた。五郎はそんな蛍を気遣い、自分や雪子や純や中畑たちみんな蛍の言ったことを信じているから今日のことは忘れろと言った。そして、明日秘密の場所へピクニックに行くことを話す。

 次の日の朝、雪子が仕事に出かけた後、いつになく陽気な五郎に驚く。9時頃初めてこごみが家にやってきた。純は、無邪気にはしゃぐ五郎を軽薄に感じ、蛍は一緒にこれなかった雪子のことを考えていた。

 8月7日の旧の七夕の日、凉子先生が転勤することを知らされ、純と蛍は学校へ走った。学校は施錠されており、先生の姿はなかった。その夜、純は凉子先生に会い、自分があの晩のことをしゃべってしまったことで先生に迷惑をかけたことを謝った。そして、先生とUFOを見せてもらうことを約束する。その夜から純は風邪を引き、昼頃まで寝ていた。それでも約束の時間までまだ時間があったので、ついうとうとと寝入ってしまった。気がつくと時計は3時20分を回っていた。慌てて飛び起きた純は登山口に向かったが、着いたときには4時を過ぎており、先生はもういなかった。純は凉子先生を捜しに一人森の中へ入っていき、そこで、葉巻型のUFOに凉子先生が吸い込まれていくのを目撃する。その後、ふらふらになって家に戻ってきた純は、五日間熱を出して起きあがれなかった。

 8月も半ば過ぎなのに、もう富良野盆地には秋風が流れだしていた頃、富良野の街の夜の飲み屋で一つの噂が話題になっていた。五郎も、駒草で客が話しているのを聞いてしまう。


出演
田中邦衛・吉岡秀隆・中嶋朋子・地井武男・岩城滉一・熊谷美由紀・ガッツ石松・清水まゆみ・児島美ゆき・今井和子・鳥羽靖子・阿部希郎・藤田啓而・みずほ幸・吉田勇作・吉田大三・浦谷信彰・南雲佑介・尾上和・大滝秀治・竹下景子

 

 

 


 凉子先生がいなくなってから、富良野は秋めいてきていた。駒草で飲んでいた五郎は、その噂が消息の分からなくなっている辰巳の妹のつららのことだと知る。そして、つららがすすきののトルコで働いており、店での名前が「雪子」だと聞いてショックを受け、清吉に相談する。

 ある夜、新吉と中川は五郎がこごみのアパートに入っていくのを目撃し、中川がそのことを中畑に話した。中畑は心配し、五郎にこの冬の自分のことを話し、こごみを諦めるように説得する。家に帰ると、清吉が訪ねてきていた。清吉は、札幌のすすきので働くつららの様子を見てきたことを五郎に話した。

 ボクシングの試合前日、純と雪子は草太がとってくれた札幌の旅館で草太からの連絡を待っていた。そこへ、ジムの会長の新吉から電話が入り、三人で食事をすることになった。新吉はボクシングの厳しさを二人に話し、食事の後、ホテルへ送つてくれた。帰りぎわ新吉は、雪子につららがトルコで働いていることを話した。雪子は、そんなつららの境遇にショックを受ける。

 翌日、草太の試合が行われた。第2ラウンドに強烈なパンチを受け、草太はリングに沈んだ。純と雪子は控え室に向かう通路で、つららと再会した。つららの変わり様に二人は驚きを隠せなかった。

 この四五日、街に出かけていなかった五郎は、蛍から他に好きな人かできても平気たと言われ、複雑な気持ちでいた。8月20日で夏休みも終わり、純と蛍は本校へ通い始めた。


出演
田中邦衛・吉岡秀隆・中嶋朋子・地井武男・清水まゆみ・児島美ゆき・鳥羽靖子・塩月徳子・南雲佑介・尾上和・上山克彦・宝木原博也・川崎輝雄・いしだあゆみ・竹下景子

 


 札幌で草太の試合が終わってからひと月が過ぎていた。あの日から、雪子の様子が何となく変わり、草太も家に寄りつかなくなった。

 10月に入って、待ちに待った日が来た。それは、今日が丸太小屋の組み立て工事の始まる日だったからだ。その日は土曜日で純も蛍も学校が終わると、急いで現場に走った。五郎たちは既に、何段かの丸太を組み終えていた。純や蛍も手伝った。昼食の休憩時間に入り、五郎たちには内緒で純と蛍の二人は森へ山ブドウを採りに行った。それは、明後日の五郎の誕生日のプレゼントのためだった。純と蛍はその誕生日にこごみを呼ぼうかどうか迷っていた。

 現場では、トイレに行っていた松下がクマの足跡を発見したと言って戻ってきた。どうも、親子のクマだと言うことだった。中川らは、家へ鉄砲を取りに戻っていった。そんなことが起こっているとは知らず、純と蛍は山の深くまで山ブドウを採りに入り込んでいた。近くで物音がするが、蛍はキツネだと言ってブドウを採り続けた。ところが、二度目に大きな音がしたので、二人は大声で歌を歌いながら森から無事に戻ってきた。夕食の時、本当にクマが出たことを知った二人は、ブドウ採りに山に入っていたことも言えず、箸を持つても震えていた。その夜、二人は神様にお祈りをした。

 次の日は、日曜日で中も現場で作業を手伝った。蛍は、昼食の材料を持って家を出たところでこごみと出くわす。現場へ行く途中、蛍はこごみに五郎の誕生日のパーティーに招待した。二人が現場に着くと、五郎や中畑たちの様子が変わり、途端に暗い雰囲気になってしまった。そこへ、みずえとすみえが現れ、中畑は慌てる。中畑は、すみえと純をつれて、落葉キノコを採りに森へは行っていった。純は、中畑からこごみが飲み屋に勤めていることを知ってしまう。現場では、こごみが中川から何事か耳打ちされ、そのまま帰ってしまう。蛍が中川に訳を聞くが、何も教えてくれなかった。

 夕方、作業終わると中畑は五郎を夕食後、飲みに誘った。五郎は、昼間こごみが現場から帰されたことが気がかりだった。家に着くと、中から純の声が聞こえた。純は、こごみが飲み屋の女だから誕生日には絶対に呼びたくないと言っていた。五郎は、家には入らず、そのまま中畑の待つ店へ行った。中畑は、五郎にこごみとは余り深入りしない方が子供たちのためだと言うが、五郎は自分は器用でもないし無責任でもないと言って店を飛び出す。純と蛍がブドウをビンに詰めているところへ五郎が帰ってきた。五郎は、職業で人をとやかく言うことは絶対に許さないと純を叱り、家から出て車に向かった。車に乗ると、雪子が令子からの手紙を差し出した。それは、令子が吉野と一緒になるという報告だった。五郎は、そのまま車を富良野の街へ走らせた。家の中では、五郎に叱られた純は泣きながらブドウをビンに詰めていた。

 五郎は、蛍がこごみとした約束は自分が忙しいからやられなくなったと話した。こごみは、仕事が休めなかったから丁度よかったと言った。しばらくして、中川と松下が店の外から五郎を呼んだ。しばらく外で話をした五郎が店に戻ってきたとき、目に涙が光っていた。聞くと、令子が死んだという話だった。雪子にも、中畑からそのことが知らされた。その頃、純は親子のクマが楽しそうに山を歩いている夢を見ていた。


出演
田中邦衛・吉岡秀隆・中嶋朋子・伊丹十三・梅野泰靖・小野武彦・上月左知子・三好美智子・平田満・藤田淑子・汐路章・園めぐみ・坂元昭二・吉田丈弘・立樹健・千代田玄海・宇都宮英世・大塚登美枝・鮎川久美・原田あおい・渡辺忠臣・後根宜将・大滝秀治・竹下景子

 


 次の朝、純と蛍は五郎から令子が死んだことを知らされた。雪子と純と蛍の三人は、汽車に飛び乗り、昼には千歳空港に着いていた。

 東京の令子のアパートでは、葬儀の準備でごった返していた。雪子は、友人のみや子に会い、令子の死因に不信感を覚えた。アパートでは吉野が憔悴しきっていた。純も蛍も棺の前に座るが、吉野が自分の子供に「おかあさんにお別れを言いなさい。」言ったのを聞き、二人はショックを受け、二人はアパートを飛び出し、街に出た。その夜、雪子は吉野に司法解剖をするように願い出るが、周りから反対される。そこへ、北海道から北村清吉がやって来た。しかし、五郎はまだ到着していなかった。純は、五郎が遅いのが気に入らなかった。清吉が部屋に顔を出し、雪子を外に誘った。屋台で清吉は、昔長男が東京から嫁を連れてやって来て、牧場を手伝ってくれていたが、ある日突然二人で東京へ戻っていってしまったことを雪子に話した。それ以来、東京の女の人を信用しなくなってしまったというのだ。清吉と雪子は、おでんを二皿包んでもらい、アパートに帰った。

 翌日、純が8時過ぎに目を覚ますと、台所で五郎がカップラーメンをすすっていた。五郎は、今着いたんだと純に言った。

 10時頃から葬式の手伝いのために人がやってきていたが、五郎は周りの静止も聞かず台所に入りっぱなしだった。そんな、五郎の姿が純には情けなく見えていた。公園で座っていると吉野が近寄ってきた。吉野は、自分の好きになる人はみんな死んでしまうと言う。純が破れた靴をさわっているのを見て、二人を靴屋に連れて行った。そして、新しい靴を履くように言った。二人は、一様断ったが、母さんが悲しむという吉野の一言でそれを履くことにした。今まで履いていた靴は、店員によって段ボール箱に無造作に捨てられてしまった。

 2時からの葬式の間中、純と蛍はあの捨てられた靴のことを考えていた。夜、みんなが帰った後、雪子と前田がもうしばらくこちらにいてやってほしいと頼んだが、五郎は農繁期の忙しい時期に丸太小屋を手伝ってもらっているから明日の朝一番で北海道へ帰らないといけないのだと言った。夜中に、トイレに起きた純は、お骨の前で泣いている五郎の姿を見た。翌朝、五郎は一人北海道へ帰っていった。その日も、ぼちぼちお参りの人たちが来ていたので結構忙しかった。

 夕方には、清吉も来てくれていた。そこでは、前田たちが五郎の行動を非難していたが、清吉は五郎が何故早く来れなかったのか、その訳を話し出した。それは、お金が工面できなくて、一人汽車で一昼夜かけて東京に来たことだった。純と蛍はその話を聞くと、外へ出た。そして、この間捨てられたあの靴を探しに靴屋へ向かった。店はもうシャッターが閉まっていた。あきらめて帰ろうとしたとき、蛍がゴミの山を見つけ、二人はさがし始める。そこへ、お巡りさんが現れ、純が事情を説明すると一緒にさがしはじめた。純は、何故だかわからないが急に涙が突き上げてきたその夜、純は夢を見た。五郎に買ってもらった靴が、川を流れていくのを蛍と一緒に裸足で必死に追いかける夢だった。



1982年 3月26日(金)放送

 

出演
田中邦衛・吉岡秀隆・中嶋朋子・地井武男・岩城滉一・清水まゆみ・児島美ゆき・大林隆介・南雲佑介・尾上和・松尾真知子・近藤雄介・いしだあゆみ・竹下景子

 


 令子が死んで一週間が経っていたが、恵子ちゃんは一度も来てくれなかった。雪子は、北海道の北村草太に手紙を書きながら、あの晩のことを思い出していた。それは、試合の翌日一人富良野駅に降りた草太を改札口で出迎えたとき、草太からつららとつき合った2年と8ヶ月、59年の4月までは雪子とは会わないことにしたと言ったこと。そして、その頃まだ自分がここにいるかと言っていたことをだ。

 雪子は、純や蛍はこの一年で富良野の住人になったが、自分はただの旅人で終わってしまったことを恥ずかしいと感じていた。翌日、純と蛍は恵子ちゃんの家を訪ねた。しかし、恵子ちゃんの家は取り壊されなくなっており、純はショックを受ける。そこへ、以前担任をしてくれた小川先生が声をかけてきた。純は、先生との再会に喜んだ。先生は、恵子ちゃんが父親の仕事の関係でアメリカへ行ったことを知らされた。純は先生の話が何となくつまらなく感じ、凉子先生のことを思いだしていた。この一年の麓郷での生活が自分を変えていたことに気づいていた。東京を発つ前日の夜、蛍が本の間から令子の書いた手紙を見つけてきた。それは、二人に宛てた手紙だった。今年の夏、令子が富良野に来たときの思い出が書かれており、「あんなに雲が綺麗だったこと」のところで筆は止まっていた。

 五郎は純と蛍を迎えに富良野駅に来た。そこへ、駒草のこごみが車の窓を叩いた。こごみは、知り合いを見送りに来たとのことだった。五郎が駅に入ろうとすると、改札口では会社の同僚たちが一人の男を見送っており、それをガラス越しに見ているこごみの姿を目にする。汽車から飛び降りた純と蛍はホームの階段を一目散に駆け上がり、五郎の待つ改札口に走った。麓郷に戻ると、完成した丸太小屋が純と蛍を待っていた。

 夜になって、蛍が以前住んでいた家を見たいと言いだし、三人で出かけた。純と蛍は、その家の変わり様に驚いた。ちょうど、最初にここへやって来たときと同じ状態になっていた。蛍は、五郎から裏の畑もめちゃめちゃだと聞き、畑を見に行く。純は家の中に入り、穴のあいた天井を見上げた。五郎は、純に令子が死んだことのつらい気持ちを話した。そのとき、外で蛍が呼んだ。行ってみると、三本足のキツネが来ていた。それは、蛍が餌付けし、とらばさみにやられたあのキツネだった。あのキツネが戻ってきていたのだった。その晩、丸太小屋で夢を見た。純は、夢の中で令子に手紙を書いており、それはこの一年の自分たちの生活について綴ったものだった。そして、「かあさん、雲が今日も綺麗です。母さんが見たっていう雲はわかりません。だけど、その雲を僕と蛍はどれだったんだろうとときどき話しており」と・・・・・・・。



1983年3月24日(木)放送

 

出演
田中邦衛・竹下景子・吉岡秀隆・中嶋朋子・地井武男・岩城滉一・清水まゆみ・今井和子・中沢佳仁・笹野高史・今野照子・塔崎健二・南雲佑介・尾上和・塩月徳子・石黒正男・加藤正之・大友柳太朗・末吉敏男・小林秀治・恩田恵美子・叶杏子・坂本由英・平川ひとし・峯田智代・森康子・市原清彦・成瀬正・奥村公延・木田三千雄・ガッツ石松・風吹ジュン・林美智子・大滝秀治・笠智衆

 


 五郎とクマさんば、11月から東京へ出稼ぎに出ていた。純や蛍のクリスマスプレゼントを買いに、デパートへ行き、そこで東京の子供たちがテレビゲームに夢中になっている姿を見て驚く。五郎の腕の中には、お菓子の詰まった長靴が2つ抱えられていた。

 五郎が出稼ぎに出ている間、純と蛍は、丸太小屋で2人だけで生活をしていた。五郎とクマさんが帰ってくる12月30日、二人は、富良野の駅まで草太に送ってもらった。草太は、青年団の花嫁対策委員をやっており、花嫁探しに燃えていた。家に戻ると、雪の上に足跡があった。突然、家のドアが開き、中から吉本辰巳と友子が現れ、二人は驚く。

 翌日の大晦日、五郎は朝から壊れていた風力発電の修理をしはじめ、純はそれを手伝っていた。そこへ、中畑和夫たちが正月の準備の物を持って現れた。純は、中畑の娘のすみえから正吉が家を飛び出したことを知らされた。その夜、蛍はあの雪の上の足跡は正吉のものではないかと純に話した。純は、蛍の話よりもNHKの紅白歌合戦の方に気持ちが向いていた。純は令子からもらったラジオを見つめながら富良野へ来た年の大晦日の出来事を思い出した。テレビで紅白歌合戦を見るために正吉の家まで行ったが、母親と楽しそうに過ごしている正吉を見て、中に入らずにそのまま家へ帰ってきたことをだ。

 純と蛍は五郎に連れられ、麓郷神社へ初詣に出かけた。お参りを終え、中畑家の人たちと新年の挨拶を交わしているとき、蛍が木の陰からこちらを見ている正吉の姿を見つけ、純に知らせた。純は、「正吉!」と叫びながら雪の上を逃げる正吉を追った。正吉は取り押さえられ、ひとまず丸太小屋へ連れて行かれる。純は、正吉と二人で風呂に入った。突然、風呂場の扉が開き、蛍が着替えを持って入ってきたので、正吉は慌てて湯船に飛び込んだ。そのとき、純は正吉の成長の証を何度も見せてもらったのだった。五郎が交番から戻ると、三人ともベットで眠っていた。五郎は、このとき正吉の寝顔に涙の筋があるのを見た。

 元旦の朝、純と蛍は自分たちにきた年賀状を見てはしゃいでいた。その中に凉子先生からの年賀状を見つけ、正吉を呼ぶが、正吉は部屋の中にはいなかった。すると屋根の上で物音がしたので外へ出ると、正吉が屋根の上で雪はねをしていた。純はそれを見て、自分がはしゃいでいたことを反省した。そこへ、正吉の母のみどりがやって来た。みどりは、正吉を見るなり殴りかかった。みどりは、迷惑ついでに正吉をしばらく預かってもらいたいと五郎に頼んだ。五郎もみどりに同情し、子供たちも喜ぶからと言って引き受ける。みどりは、自分を訪ねて人が来なかったかと五郎にたずね、来ていないと知ると逃げるように丸太小屋を後にした。

 みどりが去って、しばらくして知らない老人がやって来た。その人は、祖父の黒板兵吉のことを知っており、兵吉が死んだことを聞くと、三人にお年玉だと言って袋を差し出した。純は拒んだが、正吉が受け取った。そして、その人は帰っていった。正吉が袋の中を調べると50円玉が一つ入っているだけだった。

 次の日、正吉は蛍から届いた年賀状に喜んでいた。そこへ、草太がラーメンを食べに行かないかと誘いに来た。草太は、二人を妙子の勤める三日月食堂へ連れて行った。純と正吉は草太から千円を渡され、食べ終わったら帰るように言われたが、草太の車の中にこっそり隠れた。草太と妙子が店から出てくると時夫がやってきた。草太は時夫にあきらめろと言って、妙子を乗せて車を走らせた。草太は、妙子に正吉の母のみどりが作った借金を五郎がかかえて困っており、松吉が自分の山を売ってくれればいいと言っていたと話した。車内で話を聞いてしまった純と正吉は、車が布部のラーメン屋に着くと車から降りた。純はその話しにショックを受けていたが、正吉の方が自分よりもっとショックを受けていることに気がついていた。二人は、そのあと無言のまま歩いて帰っていった。

 ラーメン屋に入った草太と妙子は、さっきの話の続きをしていた。妙子は、松吉の話は全部昔の話して松吉が錯覚しているのだと言った。その頃、松吉は蛍と一緒に杵次の墓に来ていた。松吉は、蛍から杵次が橋から落ちて死んだことを知らされる。
 草太が家に帰ると、五郎と中畑が来ていた。清吉は、五郎に早まって土地を手放さないように説得していた。草太は、松吉の申し出の話が出たところで、松吉の言っていることは全部嘘だと話した。

 五郎が、丸太小屋へ帰ると、屋根の雪はねがやってないのを見つける。家の中にはいると正吉が花札を一人やっていた。雪はねがしてないことを叱責するが、正吉は後でやると言った。五郎はそんな正吉の様子が腹立たしく思い、花札を窓から外へ投げ捨てた。正吉は、しばらく黙っていたが、突然家から飛び出していった。その後を純が追ったが、正吉は雪道を走り去った。蛍は、捨てられた花札を拾いながら五郎に正吉も土地と家をとられることを知っていると話した。

 夜になっても飛び出した正吉は戻ってこなかった。五郎が外へ出るとみどりがやって来た。五郎は、みどりを富良野の駅まで送った。みどりは、今回のことでもうここには戻ってこれなくなったと言うが、五郎は金のことはいいから戻って来るように励まし、正吉もしばらく預からせてもらいたいと言った。みどりは、そんな五郎の優しさに涙した。11時を回っても正吉は戻ってこなかった。純が夜中に目を覚ますと五郎が一人吹雪の窓の外を見ていた。

 翌朝は、からりと晴れ上がっていた。雪に埋まった車を掘り出したあと、昨日帰ってこなかった正吉を捜したが、どこにも見つからなかった。五郎はストーブの前で純に正吉を家で預かることを話していた。そこへ、蛍が正吉が留守中にここにやって来たみたいだと言ってきた。みんなで外に出るが、正吉の姿はなかった。五郎は屋根の下に正吉の帽子を見つけた。帽子の雪を払いながらその場から離れようとしたとき、屋根から雪が滑り落ちた。それを見た五郎は慌てて雪を掘りだした。すると、その中には正吉の姿があった。正吉は、五郎を喜ばすために屋根の雪降ろしをやっていて足を滑らせて落ちたのだった。正吉は病院に運ばれ、九死に一生をえた。中畑たちが病院に現れ、借金はみんなが農協から借りて返済することになったことを五郎に伝えた。

 翌日、正吉の病院から帰るとみんなが家に集まってまっていた。松吉は、自分の申し出が受け入れてもらえなかったわけをみんなに聞こうとしていた。妙子は、そんな松吉にたまりかね、家から出ていった。五郎は、松吉に感謝の気持ちをあらわし、松吉にお茶を差し出した蛍の目にも涙があふれていた。

 その日、昼食の支度をしていると草太がやってきた。そして、五郎たちは以前笠松の杵次が住んでいた家の隣にある畑へと向かった。着くと、松吉が雪を耕してマメをまいていた。

 1月10日、五郎とクマさんは再び出稼ぎに出ていった。正吉は、みどりが東京へ行ってしばらく帰れなくなったということで一緒に住むことになった。富良野はこれからもっと寒くなる。今朝は、マイナス26だった。



1984年9月27日(木)放送

 

出演
田中邦衛・竹下景子・吉岡秀隆・中嶋朋子・岩城滉一・清水まゆみ・今井和子・児島美ゆき・伊佐山ひろ子・立石凉子・今野照子・中沢佳仁・六浦誠・塩月徳子・粟津號・塔崎健二・南雲佑介・末吉敏男・後藤寛子・三須知子・河村有実子・木曽秋一・三田恵子・原てい光・大塚美枝・後藤正人・一橋大介・林美智子・村井国夫・地井武男・大滝秀治

 


 純と正吉が中畑すみえを牛の膀胱とトウキビの毛でつくった人形で驚かした。その知らせを聞いて五郎と中畑が駆けつけてきた。

 正吉の母のみどりから五郎に手紙が届いていた。今年の冬に丸太小屋が正吉の不始末で焼けてしまったことへの謝罪と8月になったら正吉を引き取りに行くことが書かれていた。

 夏休みに入ってすぐの頃、東京から中畑和夫の妹のゆり子が息子の努をつれて来ていた。純と蛍と正吉は、努を紹介されるが、努は愛想がなかった。努は、東京からパソコンを持ってきていた。それを見た純は、とてもうらやましく思えた。純と正吉がパソコン雑誌を開いていると努が「汚すなよ」と言ったことに二人は腹を立て、部屋を出ていった。

 五郎は清吉を訪ね、今度の家に住むようになって、何とか北電に電気を通してもらおうと佐々木という人を通して頼んでいたが、負担金が80万円もかかるため、あきらめることにしたことを話した。五郎の帰り際に清吉は、雪子と草太の結婚についてなかなか雪子がはっきりしないので、そのわけを聞いたが、五郎ははっきりとした返事ができず困った。

 草太は、今年のいかだ下り大会に雪子と二人で参加するために新しいいかだを準備していた。いかだには、ローマ字で「YUKIKO」と書いてあった。

 五郎は、蛍から今朝雪子に電報が来て、その後部屋からしばらく出てこなかったと話した。

 へそ祭りの日、みんなで見に行くことになっていたが、雪子は、草太と会う約束があるということでひとあし先に街に行っていた。雪子は、草太に結婚ができなくなったことを告げた。以前つき合っていた人が春に離婚して、一緒になることにしたのだった。そして、今日、その人が五郎に挨拶するために富良野へやって来ると言った。草太は、ショックを受ける。草太は、駅で雪子がその男を出迎えるのを改札口で見ていた。

 その頃、五郎たちはへそ祭りを見ていた。五郎は、その中に踊るこごみの姿を久しぶりに見た。そのとき、蛍が一人歩いている草太を見つけ、大声で呼ぶが、草太は気がつかずに路地に消えていった。

 祭りを見てから、蛍がパソコンをやりたいといったので中畑の家へ寄った。蛍と努とすみえはパソコンのゲームに夢中になっていたが、純と正吉はテレビを見ていた。純は、パソコン雑誌が見たくてたまらなかったが、努に頭を下げるのがいやで、見栄を張っていた。努が、風力発電のことで五郎を侮辱したことに腹を立て、二人は中畑の家を出た。すると、正吉がさっき純が手にしていたパソコン雑誌を黙って持ってきていた。正吉は、純が雑誌をほしそうにしていたから持ってきてやったのだと純に言った。家に帰り、純は、そんな気持ちはなかったと正吉に言った。正吉は、「やっぱりお前は汚え奴だなあ」と言って、二階へ上がっていった。正吉の言ったこの言葉が純の心にぐさっと突き刺さっていた。

 それは、五郎が出稼ぎから帰る日ことだった、純と正吉はスキーで遊びすぎてしまい、草太との約束の時間に遅れてしまい、蛍のメモを無視して、濡れた衣類をストーブの上に無造作に放り投げて、急いでバス停まで走り、富良野の駅まで向かった。その頃、草太は、子牛の出産を終え、蛍を連れて駅に向かおうとしていた。そこへ、電話のベルが鳴った。それは、丸太小屋が火事だという連絡だった。草太と蛍は丸太小屋に急いだ。そんなことが起こっているとは知らず、純と正吉は、五郎と雪子を駅で出迎えていた。4人を乗せたバスが麓郷へ着いたのは午後6時頃だった。五郎たちは、すぐに中畑を訪ねた。そこで、初めて丸太小屋が火事だということを知った。五郎たちは、急いで丸太小屋に向かった。純は、火に包まれた丸太小屋を見てぼう然としていた。そして、どのように言い訳しようか考えていた。その夜は、中畑の家で泊めてもらうことになった。純は、火事場から戻ってきたクマさんたちが火元がストーブらしいと話しているのを聞いてしまう。

 次の日、純と正吉は交番で事情聴取を受けていた。純は、何を聞かれても覚えていないと嘘を言っていたが、正吉が自分がやったと言いだし、純は慌てた。丸太小屋へ行くと、村の人たちが総出で後かたづけをやっていた。純は、火を出したのが正吉だということが村の人たちの話題になっていることを知り、ショックを受けたのだった。今年の冬のこの出来事のことを正吉は言っていることに純は気づいていた。

 へそ祭りの翌日、雪子が井関を連れて家にやってきた。井関は、風力発電がだめなら水力ではどうだと言うが、五郎は言うは易しでと答えた。そんな五郎の様子を見ていた純は、最近の五郎が、富良野へ来たばかりの頃と比べて元気がないを心配していた。その夜の夕食は、葬式のようだった。五郎は、雪子が突然井関を連れてきたことにショックを受けていた。純は、水力発電のことを五郎に切り出した。しかし、五郎からは朝から晩まで一生懸命に働いている自分にこの上何をやれと言うのかと言われてしまう。雪子が、止めると五郎は、外へ出てくると言って出ようとした。五郎は、雪子にこんなやり方は納得できないと言って出ていった。五郎は、草太や清吉たちの気持ちを考えていたのだった。

 五郎は、八幡丘へ車を走らせ、草太の牧場の前で車を止めたが、家には寄らずに、富良野の駒草へ走った。こごみは、仕事を辞めてしばらく帯広へ行っていたと五郎に話した。

 雪子が東京へ帰る日、純と正吉は見送るのがいやで、努を誘って空知川へ行った。そして、草太のいかだで川に繰り出した。途中で、努が竿を落としてしまい、三人とも川に落ちてしまう。努が溺れかけたが、二人で川岸に引っ張り上げて大事にはいたらなかった。しかし、努は、純たちがパソコンの雑誌を盗んだことを知っていると言ったため、純と正吉は努を置いて先に帰ってしまう。途中で、努のズボンを一緒に持ってきてしまったことに気づくが、純から泥棒したのはお前だと言われた正吉は、川に投げ捨ててしまう。そして、正吉は「相変わらず、おめえは汚え野郎だな」と言われ、ショックを受ける。

 その頃、蛍は五郎たちと雪子を見送りに富良野駅にいた。純たちがなかなか現れないので蛍は駅の外へ見に行った。すると、書店の前に草太のバイクを見つける。蛍には、草太の気持ちがよくわかっていた。草太は、蛍を乗せて、昔蛍が母令子を送った空知川沿いの列車の見える場所へバイクを走らせ、二人で見送った。雨が降り出し、空知川には「YUKIKO」と書かれたいかだが壊れて雨に濡れていた。途中で、雨にずぶ濡れになって震えている努を見つける。

 家に戻っていた、純と正吉は口も聞かずに黙って、みんなの帰りを待っていた。あたりが真っ暗になって草太が蛍を連れて帰ってきた。純たちは、草太から努が肺炎を起こして入院したことを知らされ、驚く。草太は、純と正吉が自分に同情して見送りに行かなかったのは筋違いだと言って諭した。10時過ぎ、純は五郎に呼ばれた。五郎は、努のズボンのこと、パソコン雑誌のこと、そして草太のいかだのことを純に聞いた。純は、どれも正吉だと答えた。そして、最後に、正吉は明日引き取る人が来ると知らされた。

 翌朝、正吉は、部屋の掃除を精力的に行い、純が話をするきっかけを作ろうとしても一切相手にしなかった。夕方、富良野駅に正吉を送りに出かけた。純はみんなから少し離れたところに立っていた。そこで、正吉から努を見ていると富良野へ来た頃の自分と同じだったと言われショックを受ける。

 蛍がホームの隅に顔を出すみどりの姿を見つけ、正吉はみどりのもとへと走っていった。列車がホームに入り、二人は一番後ろの昇降口から乗った。みどりは、頭を下げ列車は動き始めた。純は、正吉の姿を探しに列車と一緒にホームを走ったが、ついに正吉は顔を出さなかった。その夜、中畑たちと別れ、三人でラーメン屋に入った。純は、努のズボンのこと、パソコン雑誌のこと、いかだのことを正直に五郎に話した。そして、あの丸太小屋の火事のことも正吉ではなく自分がストーブの上に衣類を掛けたこも打ち明けた。五郎も、前に風力発電のことで純に言われたとき、だんだん人に頼ろうとしていた自分に気がついたと話した。

 今年も、8月5日にいかだ下り大会があったが、見ているだけで参加はしなかった。いかだ下り大会が終わると、富良野にはもう秋がそこまで近づいてきてた。



1987年3月27日(金)放送

 

出演
田中邦衛・吉岡秀隆・中嶋朋子・美保純・横山めぐみ・レオナルド熊・布施博・坂本長利・鶴田忍・地井武男・古尾谷雅人・古本新之輔・永堀剛敏・小林トシ子・多田幸男・関時男・南雲佑介・神田正夫・三川雄三・田村元治・山崎満・加藤治・石黒正男・麓郷中学校のみなさん・岩城滉一・竹下景子

 


 純は、地元の麓郷中学校に通っていた。純は、いろいろな物を分解するのが趣味だった。そのため、電気屋のシンジュクはよく修理のため呼び出されていた。この日も、純が柱時計を分解しているところへシンジュクがやって来た。5日前に車のヘッドライトが分解されたことに腹を立てていたのだった。五郎は、近頃純のことが段々わからなくなってきていると担任の先生にほやいた。

 学校帰りに、広介からチンタに好きな女の子がいることを知らせれる。人参工場の裏の空き地でチンタは、二人に次の土曜日に見せると約束した。そこへ広介の姉のアイコが現れ、つららが宜しくと言っていたと草太に伝えるように頼まれた。その帰り道に、近所の大きな農家の大沢家の裏手の中の沢沿いの脇道で壊れた風力発電の機械を見つけ、分解を始めると鏡で光を当てる女の子が現れ、近づいてきた。純はとまどい、その女の子の手から自分の道具を奪い取り、その場から走り去った。その夜、純は蛍に大里の家の女の子のことを聞き、その子の名前が「大里れい」と知る。純は、五郎のあきらめた風力発電をれいの家の部品を利用して、五郎の誕生日にプレゼントしようと考えていた。

 次の土曜日純たち三人は、富良野の町へチンタの彼女を見に出かけていった。その子は、毎週土曜日にジャズタンススクールに通っているといい、3人は窓越しから覗いた。ところが、その子は大里の家のれいだった。純の心は、ドキドキしていた。二人と別れ、一人家路を歩いていると、草太がバイクで現れた。純は、広介の姉からの言づてを伝えた。草太は、人参工場へ広介の姉を訪ねる。アイコは、つららが結婚して子供も出来たことを話す。草太は、それを聞いて安心し、アイコを町へ誘った。

 翌日、純は町へ出てシンジュクを訪ね、風力発電のアドバイスを受ける。帰りのバスが八幡丘の坂を登りはじめてしばらくすると自転車のチェーンを外してしゃがんでいるれいを見つけ、つぎのバス停で降りて、急いで引き返す。そして、自転車を直してやるが、れいは「ありがとう」と言って走り去った。純が、落胆して歩いているとれいが待っていた。にわかに天気が怪しくなり、雨が降り出す。二人はれいの家の納屋に雨宿りする。そこで、れいが中学を卒業したら東京へ出て、働きながら定時制高校に通うつもりでいることを聞かされる。その夜、純は東京の雪子へ中学卒業後東京へ一人で出たいと手紙を書いている途中で寝てしまい、二階に上がってきた蛍に読まれてしまう。

 それから三日後大里の家の脇道で壊れた風力発電の機械をさわっていると大里のおじさんが現れ、倉庫にあった古い自動車の部品を純に使ってもいいと言ってくれ、純はその倉庫で風力発電の作業をし始めた。

 ある日、富良野地方を大雨が襲い、チンタの家のニンジン畑が大水で土地が流されてしまった。純は、五郎に畑が流れた原因は化学肥料ではないかと聞く。五郎は、大里からの入れ知恵だと察し、最近大里の娘の尻を追っかけていると噂されていると純に言う。純は、大声で怒鳴るが、五郎は黙っていた。純は、そんな五郎の自分に対する遠慮した態度に傷ついていた。

 純とれいは、日の出前に山にキノコとりに出かけた。純は、雪子からの返事がきたが、五郎に内緒ではだめだと言ってきたことをれいに話した。れいも父親を捨てて東京に出ることで悩んでいた。突然、二人の前にチンタと広介が現れる。チンタは、二人を見るなり手で挨拶をして走り去った。広介もチンタの後を追っていった。その日、学校へ行くとチンタは欠席しており、広介も純を無視していた。純は、帰りに広介に話しかけるが、チンタは自殺するぞと脅される。帰りに、大里の倉庫で風力発電の作業をやっているところへチンタが現れる。チンタは、れいのことや家のことで相当なダメージを受けており、純は何も言ってやれなかった。

 その夜、公民館に畑が流された中津のことで農家の人たちが集まった。そこで、度重なる中津の失敗に対して大里は連帯保証を拒否した。五郎は、そのことに不満だったが、自分にはそれをはね除けるだけの力がないことが情けなく感じていた。五郎は、家へ帰ると酒を飲み始めた。そこへ、れいが風力発電の雑誌を持って訪ねてきた。五郎は、昔大里の家をみんなで助けたことがあるのに、今度のことで中津を助けたくないというのは自分勝手だとれいに言ってしまう。純は、子供には関係ないと怒鳴る。れいは、走って家を飛び出し、純もれいを追いかけていった。アイコとのデートを終えて帰宅した草太は、純を見つける。純は、草太に10万円貸しほしいと頼む。草太は、詳しい話を聞くために純を家の中へ誘った。

 五郎の誕生日の日、みんなが手伝って、純の作った風力発電を家の屋根に上げ、五郎の帰るのを待っていた。五郎は、中畑に純が中学校を卒業したら東京へ出たいと考えていることを話す。ところが、中畑は草太からそのことを聞いて知っていた。五郎は、知らなかったのは自分だけだったことにショックを受けた。

 家へ帰ると中が真っ暗だった。戸を開けて中にはいると純たちが歌を唄って迎えてくれた。蛍は、老眼鏡をプレゼントし、純は自慢げ電灯をつけた。五郎は、純に話があると言い、何故自分に相談しなかったのか問いただした。純は、五郎が困るからと答えた。そして、今日は誕生日なのだからその話は後にしようとしたが、五郎はやめなかった。純は五郎を突き飛ばし、情けないと言った。そして、何故風力発電のことを喜んでくれないのか今日は五郎の誕生日なのにと言って家を飛び出した。草太は純を追いかけ、五郎に謝るように諭した。そのとき、霜警報のサイレンが鳴った。純は、家に戻ると五郎に謝った。そこへ中津が大里の家の小豆が霜でやられるから手伝ってもらいたいと言いに来た。五郎は、人がいいのもいい加減にしろと怒鳴った。

 大里の家では、政吉が下の畑の様子を行くために、車をバックさせたところコンテナにぶつけ、妻がその下敷きになってしまった。

 12月になり、純は東京の雪子に中学を卒業したら富良野の高校へ進学することにしたと手紙を書いた。町の書店から出ると、道の反対側にれいちゃんが立っていた。八幡丘の坂を二人で歩いた。れいちゃんがクリスマスの日にあの納屋で会いたいと告げた。純たちには既に計画していることがあったが、会うことを約束した。そして、れいちゃんから卒業式の日に二人で札幌の天窓のある喫茶店へ行かないかと誘われ、純は胸がドキドキしていた。

 クリスマスの日、純たちはそりでいくつかの家へプレゼントを配っていた。れいちゃんの家の前まで来ると家には灯りがなかった。広介がプレゼントを持って、玄関に立つとそこには一枚の張り紙があった。大里の一家は夜逃げしたのだった。純は、家に戻るとしばらくして外に出た。そして、約束の納屋へ向かった。納屋に着き、中にはいると誰もいなかった。純は、わらの上に置かれた手紙と紙包みを見つけた。それは、れいちゃんからのクリスマスカードとプレゼントだった。カードには、「急に遠くへ行くことになりました。黙って行っちゃってゴメンナサイ。純君のこと大好きです。いっぱいいっぱいいいことあるように。れい」と書いてあった。プレゼントには、尾崎豊のテープとカセットだった。

 納屋の外へ出ると、雪の上にれいちゃんの足跡があった。足跡は、まっすぐ納屋の中に入り、表へ出たところでもう一度立ち止まり振り返ったらしかった。そこへ蛍が現れ、卒業式が終わったら東京へ発つようになっているからと伝えに来た。純はそんな蛍にもう遅いと言ってしまう。蛍は、今更そんなことを言わないでほしいと純をたしなめた。五郎は、純に「辛くなったらいつでも戻ってこい。故郷へ戻ることは恥ずかしいことではない。」と話した。

 卒業式が終わると、純は五郎と蛍に見送られ、定期便のトラックに乗った。走り出すトラックと一緒に蛍は走った。そして、れいちゃんの居場所がわかったら連絡すると純に言った。純は、運転手に「よろしくお願いします」と言って、カセットのボタンを押してれいちゃんを思い出していた。突然、運転手にイヤホンを外され、封筒を受け取るように言われた。それは、五郎が運転手に置いていったお金だった。純は断るが、泥の付いたピン札は受け取れないから記念にとっておいて自分の宝にするようにと運転手が言った。純は、その袋から泥の付いた二枚の壱万円札を取り出し、東京から北海道へ来てから今日までの五郎と蛍と過ごしてきた生活を思い起こし、涙した。

定期便のトラックは、空知川に掛かる橋を渡っていた。



1989年3月31日(金)放送

出演
田中邦衛・吉岡秀隆・中嶋朋子・緒方直人・横山めぐみ・美保純・洞口依子・清水まゆみ・布施博・庄司照枝・樋浦勉・村井国夫・ガッツ石松・井川比佐志・古本新之輔・永堀剛敏・南雲勇助・矢野泰二・水上功治・大場朋之・久保晶・今野照子・五月晴子・宮城健太郎・渕野俊太・水木寛子・中沢敦子・木村翠・芦沢孝子・岩城正剛・小林秀治・舛井正博・松永ヒサ子・麓郷小学校のみなさん・佐久間哲・桂島宏樹・鶴田史郎・田中基・黒島かおる・きゃんみゆき・小河麻衣子・大倉順憲・安威宗治・菊川予市・児玉頼信・三田恵子・地井武男・岩城滉一・竹下景子

 


 五郎は富良野の街の飲み屋で中畑と酒を飲んでいた。東京に行っている息子の純が送ってきた金で飲んでると大声でしゃべり、娘の蛍が旭川の看護婦学校へ通っていると自慢げに話していた。ただ、旭川の病院に住み込みになってしまったことへの寂しさを紛らわしているようでもあった。

 1988年秋・・・・・・

今日も、蛍は旭川の病院へ出勤するために五郎の車で富良野の駅へ送ってもらった。蛍は、中学を卒業してから昼間は旭川の病院に勤め、夜定時制の看護学校に通っていたのだった。そのため、毎日富良野駅発6時02分の始発列車に乗らなくてはならなかった。
蛍は、列車でいつも一緒になる青年にこころがひかれていた。その日、青年の膝の上の本が落ちそうになったとき、彼が「風の又三郎」という小説が読んでいることを知る。
旭川の駅に列車が着くと、蛍は病院へ走った。蛍が勤める病院は、「竹内病院」という肛門科の病院だった。先生は、五郎からカボチャを送ってもらったお礼を蛍に言った。
 五郎は、中畑に丸太小屋をつくるための丸太を頼んでいた。五郎は、今度は一人で丸太小屋をつくるつもりでいたのだった。設計図には、3人分の部屋があった。
 蛍は、書店で注文してあった宮沢賢治の「風の又三郎」受け取り、帰りの列車で青年が読んでいる姿を見て、自分も袋のポケットから取り出し読み始めた。富良野駅に着くと青年が自転車に乗って帰っていく姿を見送り、五郎の待つ車へ向かった。五郎は、車の中で眠っており、蛍に車の窓をたたかれ目を覚ます。
 その晩、蛍は五郎に来年から住み込みになるからと告げるが、五郎は風呂の中で眠ってしまった。
 翌朝も、蛍は青年と一緒の列車で互いに「風の又三郎」を読んでいた。その日、蛍の勤める「竹内病院」へその青年が治療のために現れる。そこで、初めて青年の名前が「和久井勇次」と知る。
 その日の帰り、旭川の駅のホームで再び勇次と会い、富良野までの列車の中で蛍は勇次が予備校へ通う浪人生であることを知る。富良野駅に着くと、蛍は勇次に自分の赤い傘を貸し、手を振って勇次と別れた。五郎は、その光景を電話ボックスの中で見てしまう。五郎は、風呂に入りながらそのことが気になってしかたがなかった。風呂から上がると流しにサンドウィッチを見つけるが、蛍が二階から降りてきてサンドウィッチを隠すように持って二階へ駆け上がっていった。ラジオからは長渕剛の「乾杯」が流れていた。次の朝、蛍は昨夜つくったサンドウィッチを勇次と二人で列車の中で食べた。
 ある日の帰り、列車に勇次の叔母が乗ってきた。叔母は、勇次に東京の予備校へ行くように勧める。帰りの車の中で五郎は次の日曜日にマイタケ採りに蛍を誘うが、蛍は断る。蛍は、次の日曜日に勇次と約束があったのだった。
 次の日曜日、蛍と勇次は勇次の生まれた滝里という村へ出かけた。そこで、勇次が東京へ出ることを知らされる。勇次は、ずっと富良野にいたいと言い、木にナイフで「HY」と彫った。その夜、蛍は五郎に来年から旭川に住み込むことを伝えた。
 そして、蛍は6ヶ月の実習を終え、戴帽式があった。五郎は、出席できなかった。
 蛍は、純に手紙を書いた・・・・・・

 今日、純は髪を染めた。これで、正月はまた帰れないと思っていた。
 その日、友人のアカマンに誘われ、喫茶店に出かけた。そこには、エリと田沢がいた。そして、純が前からほしがっていた400ccのバイクを譲るという話を聞かされ、純は正月富良野に帰るために貯めた金で買うことにした。
 ある日の昼休み、純はアカマンとバイクの話をしていた。そのとき、アカマンが水谷に呼ばれた。アカマンは「まずい・・・」と言って、水谷の所へ行った。そのことがあってから、アカマンの様子がおかしくなった。学校が終わって帰るとき、純はアカマンを誘うが断って、バイクで走り去った。純がアカマンを追いかけようとするとエリが待っていた。純はエリに誘惑されるが、エリがボートから落ち純はその場から逃げてしまう。純は、エリの兄が暴走族の幹部でヤクザにもつながりのある人と聞いていたため、その夜ほとんど一睡もできなかった。翌日、一日中生きたここちができなかった。夜、定時制の学校へ行くとアカマンは来ていなかった。純は、帰りにアカマンのアパートへ寄った。そこで、アカマンが母親の病気のために水谷に10万円の借金をし、それが半年で20万円になってしまったことを知らされる。そして、沖縄に残してきた父親を一人にしておけないからもしかしたら沖縄へ帰るかもしれないと言った。純は、その言葉が胸に突き刺さった。
 翌日の昼休みに田沢が現れ、12万円でバイクを買うことになった。ところが、純が田沢から買ったバイクが盗難車であったことで、警察に連れて行かれることになった。長い時間取り調べがあり、無実が証明されて解放されたのは、夜の11時を過ぎてからだった。翌日、アカマンから水谷がバイクの件で警察に呼ばれたことで頭に来ていると聞かされ、謝りに更衣室へ行くが、無視される部屋から出ていった。純は、自分のロッカーを開けると財布が落ちていた、中に入れてあった泥の付いたピン札2枚が無くなっていることに気づき、水谷たちに聞くが知らないと言われ、更衣室のロッカーを片っ端から開け始める。そんな純を見て、アカマンが自分がとったと純に打ち明けた。アカマンは、水谷に借金を催促され、それで純の金をとったと言った。純は、水谷にその金を返してもらうように頼むが、水谷は知らないと言って部屋を出ていった。純は、水谷を追いかけて3万円払うから返してほしいと言ったが、水谷は持っていてもやるものかと言って純を殴りつけた。純は、近くにあったバールをもって水谷に殴りかかりケガをさせてしまう。
 純は、エリに喫茶店に呼び出され、一枚の泥の付いたピン札を渡される。それは、水谷のロッカーのジャンパーのポケットにあったものだった。もう一枚は、この近くの薬屋でつかったらしいことをエリは教えてくれ、一緒に探すと言ってくれた。
 純は、このことがあってから東京に出てから富良野へ帰りたいと初めてそう思った。

 丸太の皮をはがしている五郎の所へ警察の人がやってきた。そして、五郎は純が東京で傷害事件を起こしたことを知らされる。その夜、五郎は蛍を迎えに富良野へ出かけたとき、東京へ電話をかけようとしたが止めた。五郎と蛍が家へ帰ると純が東京から帰ってきていた。純は、疲れて二階でぐっすり眠っていた。五郎は、純の髪を見て、慌てて草太のところへ出かけ、寝ている草太をたたき起こし、純の様子を伝え、何とかしてもらうように頼んだ。朝方、ふと目を覚ますと、蛍が起きており、出かける準備をしていた。五郎が下から好きなだけ寝ているように言った。純は、すぐに眠りはじめ夢を見ていた。
 目が覚めると明るくなっていた。下に降りると新吉・シンジュク・クマさん・草太が来ていた。そこで、純は新吉たちに取り押さえられ、髪を黒く染めさせられてしまう。その後、純は挨拶回りに出かけるとみんながとても暖かく迎えてくれ、昔と変わらず昔のように接してくれた。中畑木材へ行った純は、五郎が丸太小屋をつくろうとしていることを知らされ、トムソン・ウッディヴィレッジの土場へ五郎に会いに行った。純は五郎に何度も「すみません」と頭を下げた。純は、五郎に丸太の皮むきを教えてもらいながら手伝った。五郎は、蛍に恋人がいることを純に教え、今夜二人で見に行く計画を話した。
 その夜、美馬牛駅から五郎と純は蛍の乗る列車に乗り込んだ。しかし、勇次の姿はそこにはなかった。富良野駅に着くと、勇次が蛍を待っていた。蛍は勇次から突然明日東京へ出ることを聞かされる。列車は、16時11分の札幌行きと・・・・・・。蛍は「わかった」言って、走って五郎の車へ向かった。車には、五郎と純が出迎えた。五郎は、帰り道で蛍を十勝岳の露天風呂に3人で行こうと誘った。その夜、蛍は勇次が明日東京へ行ってしまうから露天風呂には一緒にいけないと話した。

 翌日、勇次は富良野駅で蛍の姿を探していた。蛍は駅の片隅からガラス越しに勇次を見ていた。蛍は、ベンチにプレゼントを置いた。勇次は、ベンチの前にしゃがみ込み、それを手にし、蛍に宛てた一通の封筒をポケットから取り出し、ベンチの上に置き、立ち去った。蛍は、封筒を左手に握りしめ、待合室に走った。蛍は、ホームに立つ勇次に「がんばれ!」と口を動かした。勇次も「わかった!」と答えた。
 勇次の乗る列車がホームに入ってきた。蛍は、駅を出て線路へ向かって走り出した。そして、駅を走り出した勇次の乗ると一緒に走った。勇次は窓を開け身を乗り出して大きく手を振った。
 蛍は、勇次の手紙を封筒からとりだし、歩きながら読み始めた。

 「今朝夢見たんだ。不思議な夢なんだ。君と手をつないで、えらく透明な湖の底に潜っていくんだ。そこは、滝里のダムの底らしくて、潜っていくと村が底にある。君は僕の手をどんどん引っぱって、昔空知川が流れていた淵のそのまま沈んでいる木立の所へ行く、そうするとその木の一本の幹に二つのイニシャルの彫ってあるのがみえる。HとYって、二つの文字が誰ももう知らない湖の底の、それでも立っている一本の木の幹・・・・・HとYって彫ってある。頑張ってきます。君も頑張って・・・・・。」

 蛍は、家に帰ると二階に駆け上がり、ラジオのスイッチを入れ、声を出して泣いた。
 純は、風呂に入っている五郎に東京の傷害事件のことを話しはじめた。五郎はどうして喧嘩したか聞いた。純は、大切なものをとられたからだと言った。五郎は、それが人にケガさせるほどお前にとって大切なものならしかたがないじゃないか・・・男は、誰だって何と言われても戦わなくてはならないときがあると言った。純は、職を三回変わったと言うと、五郎は七回変わったから気にするなと言った。純は、こっちに就職して五郎と一緒に丸太小屋をつくってはいけないかと話すが、五郎は受け入れなかった。
 突然、蛍が家から飛び出してきて、純を家の中へ引っぱった。ラジオから尾崎豊の「I love you」が流れていた。それは、れいちゃんがリクエストしたものだった。
純は、1月3日札幌れいちゃんを探しに出た。リクエストの葉書を頼りにアパートを見つけるが、アルバイトに出かけており不在だった。純は、れいちゃんのアルバイト先のファミリーレストランに向かい、再会する。二人は、あの頃話した天窓のある喫茶店へ行き、東京でぼろぼろになったことや、富良野の暖かさを話し、富良野にやってきたあのころの父親のことを考えていた。駅へ向かう途中、二人とも何もしゃべらず歩いた。純は歩きながられいちゃんの腕から伝わる体温が絶え間なく自分に注がれているのを感じていた。
 それが、今年の正月の出来事だ。

 五郎は、中畑とまだ飲んでおり、純が中三で風力発電をつくったことや職をまた変わったこと、蛍が旭川の竹内先生のところで見習い看護婦をやっていることを自慢げに話しており・・・中畑も困り果て、店を出て二人で雪道をふらつきながら歩き出した。



1992年5月22日(金)放送

 

出演
田中邦衛・吉岡秀隆・中嶋朋子・岩城滉一・緒方直人・横山めぐみ・裕木奈江・清水まゆみ・今井和子・小松政夫・園田裕久・中沢佳仁・古本新之輔・南雲勇助・永堀剛敏・布施博・美保純・北村和夫・ガッツ石松・大滝秀治・渕野一生・いしいすぐる・田村智子・石坂誠隆・寺田英孝・三津輪有紀・大友龍三郎・島田果枝・関悦子・嶋崎伸夫・長山フミオ・山田幸正・加世幸市・外河京子・おやま克博・富良野市のみなさん・大地康雄・地井武男・竹下景子

 


 五郎は、へそ祭りのマスコットの影から、病院から出てくる男を待っていた。その男が出てくると、慌てて走り出し、遠回りして、路地角で衝突しそうになる。その男は、財津医院の院長先生で、五郎が旭川の看護学校に行っている蛍の就職をお願いしていた人だった。五郎は、一昨年から職業訓練校に通い、最近麓郷の棟梁、加納金次のところに弟子入りしていた。

 五郎が、棟梁の金次の作業場に行くと、金次が息子のオサムと何やら話していた。金次は、昨日の五郎の作業について注意した。二人は、完成した御輿の台を車に乗せ、富良野へ向かった。仕事を終え、ラーメンを食べながら金次は五郎に自分の息子のことで悩んでいることを打ち明ける。五郎は、金次の息子が大工を止めて東京へ出たいと考えていることを聞かされた。そして、純が将来何になりたいと考えているのか知っているかとたずねられ、口ごもってしまう。

 五郎は、前の家が大雪で潰れて後、中畑木材の土場の隅にあった倉庫を改造して住んでいた。角材を方に背負い、家に戻ると愛犬アキナが五郎を迎えてくれた。入り口の戸を開けると一通の手紙が落ちた。それは、東京の雪子からの手紙だった。手紙には、7月の26日から3日ほど大介と二人泊めてもらえないかと書いてあった。急いで、アキナに夕ご飯を与え、東京の雪子へ電話をかけ、歓迎すると伝えた。五郎は、雪子や大介、最近帰ってこない蛍のことをアキナに話しかけながら夕食を食べていた。

 五郎は、蛍の通う旭川の病院へニンジンを届けがてら、蛍に電話をかけ、へそ祭りの日に富良野へ帰ってこれるかたずね、雪子と大介も来ることを話した。

 五郎は、雪子と大介を富良野駅で出迎え、中畑の事務所へ連れて行った。そこで、草太がアイコと結婚することアイコのお腹には子どもがいることを知らされ驚く。

 草太は、牛の乳を搾りながら、母正子と結婚式のことでもめていた。そこへ、アイコが五郎が来たことを伝えに来た。草太は、そこで久しぶりに雪子に再会し、喜んだ。

 その夜、五郎は雪子に急に富良野に来たいと言ったわけを聞いた。雪子は、子どもは母親の方が幸せか、父親の方が幸せかと聞かれ、驚く。そして、昔を思い出し、純はきっと恨んでいるだろうし、恐らく蛍もそうだろうと話した。雪子が、蛍はよく帰ってくるのかと聞くと、五郎は「ああ」とこたえた。

 蛍は、時々五郎とは電話で話はしたが、富良野には全然帰ってなかった。帰ってはいなかったが、富良野の駅のホームには何度かは立っていた。それは、一昨年から帯広畜産大学に通っている勇次が住んでおり、勇次に会いに富良野で帯広行きの電車に乗り換えるためだった。蛍は、改札口を出ない自分が後ろめたく、罪の意識にさいなまれていたが、電車が富良野盆地を過ぎ、狩勝峠を抜けて、帯広の町にはいるとそんな気持ちも薄らいていった。電車が帯広の駅に着くと、勇次の待つ改札口に走った。

 車に乗ると、勇次が後で大事な話があると言った。それは、28日のへそ祭りの日に、札幌の勇次の叔父が来るから会ってみないかと言うこと話しだった。勇次は、准看で終わるよりも正看を目指した方が絶対にいいと言った。しかし、蛍には、卒業後は、富良野へ帰るという五郎との約束があった。
 蛍はいつも、午後5時34分の帯広発の列車に乗った。これに乗らないと今夜の内に旭川に着けなかったからだ。列車が動き出すと、蛍はさっき勇次の言った話を思い出していた。

 富良野で旭川行きの列車を待っていると、お祭りのお囃子の音が聞こえてきた。蛍は、自分たちが小さい頃五郎に連れて行ってもらったへそ祭りのこと思い出していた。あの頃の自分は父親の愛情が家族以外の人に注がれることに神経を尖らせていたのに今は平気で余所に愛を向けている自分のことを・・・・・・。

 列車が、上富良野に停車した。4人の自衛隊員が乗り込んできた。最後に乗ってきた男が、蛍に声をかけてきた。それは、以前一緒に暮らしていた正吉だった。正吉は、今年の春に入隊したのだった。正吉は、純や五郎の近況を尋ねた。蛍は、正吉に今日ここで会ったことは五郎に言わないでほしいと頼んだ。正吉は、純も蛍も全然富良野に帰っていないことを知らされ、嘆く。そして、今日ここで会ったことは絶対に言わないと声を震わせた。

 へそ祭りの日、五郎と雪子と大介の3人が蛍を駅で出迎えた。祭りには、草太の姿があった。蛍は、見物客の中に勇次を見つけた。勇次は、9時に会おうと手で合図した。突然、蛍は肩をたたかれた。正吉だった。五郎と雪子は、正吉の姿に驚いた。

 五郎たちは、駅で雪子と大介を見送った。駅を出ると、蛍は今夜は泊まらずに旭川に帰ると言った。五郎は、明日朝早くではだめかと聞くが、蛍はだめだと断った。蛍は、正吉にこないだのことをしゃべらないように念を押した。正吉は、わかったとこたえ、五郎の車に乗り込んだ。蛍は、五郎の車が走り去ると、急いでタクシーに乗り込み、勇次の待つプリンスホテルに向かった。蛍は、たった今の五郎に対する自分の言動に涙した。ホテルに着くと、出迎えた勇次の胸に泣き崩れた。

 五郎は正吉と家に戻った。正吉は部屋の隅に純や蛍の子どもの頃の写真を見つける。五郎は、正吉が持ってきたウイスキーで酔っぱらって歌を歌った。正吉は、五郎に封筒を差し出した。中身は、お金だった。そのお金は、昔正吉の母が借りた、お金の一部だと言った。五郎が、封筒を開けると中に2万円が入っていた。そして、五郎は自分は五郎の息子だと思っていると言ってくれた正吉をうれしく思い喜んだ。五郎は、もう一人の息子はどうしてるかなあとつぶやいた。

 もう一人の息子は、何となく暮らしていた。わずかな楽しみは、札幌のれいちゃんと毎週土曜日の8時に同じビデオ映画を見て、デート気分を味わうことだった。映画が終わると、電話でくだらないおしゃべりをしていた。純は、こんなつきあい方に少し飽きがきていた。

 ある雨降りの日、この日もビザショップの配達用のバイクがいつもの場所に置いてあった。警察が駐車違反の取り締まりをしていたため、純はそのバイクをスタンドの中に移した。配達の女の子は、純の親切にお礼を言った。その夜、純がビデオショップでれいちゃんと見るためのビデオを借りていると、外からガラスをたたかれた。見るとそれは、今日助けたあの女の子だった。彼女は、ガラスにアリガトウと指で書き、ドアが開くと「それ、すごくいい。昨日見たの」と言って走り去った。その夜、純はビデオを見ながら泣いた。

 翌日も、その子は赤いバイクで現れた。いつもの場所に止めようとするが、純がホースで手招きしてスタンドの隅に止めさせた。そんな純を見た仕事仲間は、純を冷やかした。純は、少しずつその子が気になってきていた。ある日、そのこの働いているピザショップへ出かけていった。店内を見るとその子が店長に叱られて泣いていた。その子は、店を出ると純を見つけて近寄ってきた。純は、その子に仕事が終わる時間を聞いた。

 ふたりは、ラーメンを食べながら、お互いの素性を話した。その子の名前は、松田タマコとわかった。純は、れいちゃんとやっているビデオデートのことを友達のこととして話したが、タマコはロマンチックで最高だと言った。そして、今度一緒にラブホテルで映画を見ようと言い出したので、純はビックリして口の中のラーメンを思わず吹き出してしまった。
 タマコと別れてから、純は生まれて初めてアダルトビデを借りて見た。

 その木曜、純とタマコは渋谷で待ち合わせた。二人は、ハンバーガーとウウロン茶を買い込んで、ホテルに入った。タマコはビデオに夢中だったが純の方はきがきではなかった。南極物語が始まると、純は我慢できずにタマコに迫ったが、タマコは大声を上げて拒んだ。しかし、タマコはこうなったことが自分のせいだと言って純に謝った。純は、高倉健の目の前で、大人の壁を越えた。それから、二人はちょくちょくビデオ鑑賞会を開くことになったのだった。

 夏が終わり、街路樹が黄色くなりかけても二人の会は続いており、二人ともその会に夢中になっていた。だからといって、れいちゃんのようにはタマコを愛していたわけではなかった。愛していないのに会うことは望んでいた。東京に出てきて4年7ヶ月の間にこんな不純なことが平気でできるような汚れた人間になってしまったと感じていた。草太から結婚式の通知を受け取っていたが、純は出席できなかった。

 富良野では、草太が結婚式のリハーサルに張り切っていた。蛍は、花嫁のアイコがトラクターに乗ることに反対したが、草太は受け入れなかった。そして、結婚式が始まった。トラクターに乗ってアイコが現れるが、突然トラクターが止まった。アイコの様子がおかしかった。アイコはすぐに救急車に乗せられ病院へ運ばれたが、流産してしまった。アイコを病院に見舞った五郎は、ベットに横たわるアイコから草太を慰めてやってほしいといわれた。五郎は、屋上の草太の所へ行くと、草太から流れた子どものために小さなお棺を造ってくれと頼まれた。

 そんなことは全然知らなかった、まるで運命のイタズラのような事件が純の方にも起こっていた。純は、突然タマコから妊娠したかも知れないと聞かされ、心臓がドキドキ鳴りだした。



1992年5月23日(土)放送

 

出演
田中邦衛・吉岡秀隆・中嶋朋子・岩城滉一・緒方直人・横山めぐみ・裕木奈江・児島美ゆき・清水まゆみ・神保共子・今野照子・渡部篤郎・渡辺航・小林昭二・石丸謙二郎・大地康雄・菅原文太・三野輪有紀・寺田英孝・山田幸正・長山フミオ・嶋崎伸夫・桑田智子・内山森彦・沼崎悠・吉田晃太郎・畑山東一郎・柴山智加・西島秀俊・平井太佳子・マンデイ・由起艶子・伊原秀和・富良野塾・富良野市のみなさん・地井武男・いしだあゆみ

 


 純はビザハウスの店先でタマコが出てくるのを待っていた。タマコは、純を見つけるが、そのまま配達用のバイクに走った。純は、近づいて、タマコにちゃんと診てもらった方がいいんじゃないかと言うと、タマコは一緒に産婦人科に行ってくれるかと聞いてきた。純は、返事できなかった。

 純は、相談する人もおらず、どうしていいのかわからなかった。どうしても気になって、タマコに電話をした。純は、何か面白いビデオがないかたずねると、「陽のあたる場所」という映画を勧めてくれた。純がそのビデオを借りようとすると、店の主人がニヤニヤしながら応対した。純は、ここ2・3日食欲もなくビールしか口に入っていかなかった。ところが、その映画は美しい婚約者ができた青年が、妊娠させてしまった昔のガールフレンドに結婚を迫られ、処置に困ってそのガールフレンドを殺してしまうという筋書きで、青年はその後死刑になってしまうというものだった。その晩、いやな夢を見た。それは、さっき見た映画とそっくりで、自分が誤ってタマコを殺してしまう夢だった。

 翌日、ガソリンスタンドに、小学校の同級生の中井が偶然給油に現れた。中井に話かけられているとき、純はタマコを見つけ、まだこないのかとたずねてみるが、心配しないでと応えただけだった。夜、小学校時代の同級生たちと集まって話をしているとき、妊娠検査薬の話を耳にした。翌日、薬局でそれを買って、例のラブホテルでタマコとおち合った。検査薬は残念な色になった。アパートに帰ると、札幌のれいちゃんから手紙が届いていた。その手紙を読み終え、純は頭を抱えた。

 純が、車のフロントガラスを拭いていると、突然電話だと言って呼ばれた。それは、タマコの叔父からのものだった。純は、すぐにメモした病院へ急いだ。病室の戸を開けるとタマコの叔父と叔母が立っていた。純は、自分の名前を言うと、叔父が近づいてきて病室の外へ出るように顔で促した。廊下へ出るといきなりその男は純を殴りつけた。

 純は、タマコの叔父に父親の住所や電話番号を教えるように言われるが、父親には連絡しないように頼んだ。だが、人様の娘に手をつけて子どもを降ろさせて、それでただで済むと思っているのかと怒鳴られてしまう。父親の名前と北海道の住所を書いて、病院を後にした。それからは、益々食欲が減退していった。タマコと連絡がとりたかったが、病院には二度と顔を出すなと言われていたし、ピザハウスにも時々覗いてみたがタマコの姿はなかった。

 突然、五郎が現れた。五郎はラーメン屋で食事をしながら純にその娘と結婚する気があるかとたずねた。純は何も応えず黙っていた。五郎は、とにかく謝ろうと言い、純にも自分と同じようにやれと言った。二人は、住所をたよりにタマコの叔父の豆腐屋をたずねた。五郎は、店にはいると挨拶代わりにとカボチャを6個鞄から取りだして台に置いた。二人は、部屋へあがり頭をずっと下げ続けていた。タマコの叔父は五郎に、娘の蛍がタマコト同じ状況になったときのことを本気で想像するように言った。そして、「誠意とはいったい何かね。」とたずねてきた。最後に、持ってきたカボチャは持って帰るように言いつけた。

 五郎は、歩きながら純に一杯飲むかと言った。五郎は、酒を飲みながら、「さすがに疲れた。」と口にした。純は、「すみませんでした。」と謝った。五郎は、草太の結婚式の話や蛍が春には富良野へ帰ってくること、正吉が来たことを話してきた。純は、五郎が自分を叱らず、話をそらしていることに傷ついていた。五郎が、今店でかかっている曲をたずねてきた。純は長渕剛の西新宿のおやじのうたとこたえた。そして、純は大晦日に富良野に帰ることを五郎に約束した。

 麓郷へ帰った五郎は、タマコの叔父の言った「誠意とはいったい何だね。」と言ったことを考えていた。五郎は、家を建てるために買った丸太を300万円で売りたいと棟梁の金次に話した。金次は、そんな大金を何に使うのかとたずねた。五郎は、誠意だとこたえた。丸太を売ったことを知った中畑が、五郎を訪ねてきた。五郎は中畑に石で家を建てることにしたと話した。そして、井戸も自分で掘るのだと言いだし、準備を始めだした。富良野は、もう雪がちらつきだしていた。

 東京は、そろそろ12月が近づき、気の早い年末のムード造りが街のあちこちに見られ始めていた。11月末のそんなある日、突然タマコが姿を見せた。タマコは、純に封筒を差し出した。それは、五郎が送った100万円だった。純は、返そうとするがタマコは受け取れないから五郎に返してくれるようにと言った。そして、タマコはブランコに腰掛け、「東京はもういい・・・・私・・・・卒業する。」と言って、ブランコを揺すった。それから、二人で少し歩いてショーウインドウの前で立ち止まった。タマコは、ガラスに向かって「さ・・よ・・う・・な・・ら」と口を動かして、走り去った。さっき、タマコの言った「東京はもういい・・・・私・・・・卒業する。」の言葉が純の頭に焼き付いていた。アパートへ帰り、タマコから受け取ったお金を畳の上に一枚ずつ並べ始めた。

 こごみが井戸を掘っている五郎のところに現れた。こごみは、今度クリスマスに店を始めるから来てほしいと言いに来た。五郎は、子どもたちが帰ってくる大晦日までに間に合わせたいと話した。

 クリスマスの日、中畑と金次はこごみの店で、酒を飲みながら五郎を待っていた。その頃五郎は、まだ穴の中で、掘っていた。すると、土から水がしみ出し、五郎は手から軍手を外し、それを指につけなめた。中畑たちが歌っているところへ五郎が水が出たことを告げにきた。

 五郎は、純や蛍のために風呂を沸かし、車で旭川の空港へ純を迎えに走った。五郎は、手を振って出迎え、純は頭を下げた。五郎は、蛍の就職先の財津医院へ挨拶にいこうとするが、後で蛍に持っていかせようと考え直し、純と二人で喫茶店に入った。純は、タマコから返された封筒を五郎に差し出した。だが、五郎は純にやったものだから、やった以上見栄というものがあるから受け取れないと言ってきかなかった。そして、「金をなくしたことが大きかったんだ。金をなくしたおいら、でっかいものを見つけた。すっかり忘れていた大きなものを・・・思い出した・。金があったらそうはいかなかった。」と五郎は言った。純は、「どういう意味ですか。」とたずねた。五郎は、「金があったら金で解決する。金がなかったら知恵だけが頼りだ。知恵とてめえの出せるパワーと・・・・・」とこたえると蛍の電車の時間が迫ってきていることに慌て始めた。

 五郎と純は改札口で、蛍を出迎えた。五郎は、蛍の荷物を抱えると走って車の方へ走り出した。五郎は、車からお歳暮を取りだし、蛍に渡そうとすると、蛍の後ろに和久井勇次が立っていた。蛍が、大事な話があるからと言いだし、4人で喫茶店に入った。蛍は、春から札幌の病院へ出るから富良野には帰れないと話した。五郎と純は、蛍の帰るのを待った。純は、五郎に車を借り蛍を迎えに出た。五郎は、一人さっきの蛍の言葉を思い出していた。そして、風呂を沸かしに出かけていった。風呂の屋根に積もった雪を降ろしているとき、足を滑らせて落ち、丸太に足を挟まれ動けなくなってしまった。

 純は蛍を連れて家に帰ってきたが、五郎はいなかった。純は、五郎が帰ってきたら謝るように蛍に言った。9時になっても五郎は帰ってこなかった。

 五郎は、風と雪から身体を守るためのシートを針金で引き寄せようと必死になっていた。そして、引き寄せたシートをかぶり、その中でスコップの上に木の皮を削り、たばこのケースに火をつけて暖をとろうとしていた。午前2になっても帰らない五郎を心配した純は、車で中畑や金次のところへ聞きに回るが行方がわからず、家に戻った。五郎は、意識が遠のく中で、雪の中に立つ死んだ令子と話していた。五郎は、子どもたちはまだ巣立ったばかりだから、巣をしっかり守って言われた。そのとき、かすかにアキナの鳴き声を耳にした。

 五郎の帰りを待っている純と蛍のもとへ金次が車で駆けつけて来た。金次は、二人に山を探したかと聞いてきた。山へ行ってみると、シートの中に灯りが見え、アキナが走ってきた。金次が、シートをめくるとそこに五郎の姿があった。蛍は、大声を上げ、立ちすくんだ。純は、死なないでくれと祈りながら雪道を街へ走った。

 翌日、純と蛍は中畑の家へ挨拶に行った。中畑は、すぐに金次の所へ行くように言った。金次は、昨日の事故現場に来ていた。五郎が死ななかったのは、誰のせいでもなく、自分で生きたのだと言って、スコップの上の燃えかすや削った後を見せた。蛍は、札幌への就職を止めると言い出すが、そんなことをしても五郎は喜ばないと言って反対した。そして、東京は卒業したから五郎のことは自分に任せろと蛍に言った。純は、蛍を富良野駅で見送ると、五郎の入院している病院に寄った。純が、ベットの横に座ると五郎が「どうしてここにいる、いるはずのないやつが次から次に来やがって、夢の中まで人をおちょくるな。」とうわごとのようにつぶやいた。純は、それを聞いて、床にひざまづき泣いた。

 



1995年6月9日(金)放送

出演
田中邦衛・吉岡秀隆・中嶋朋子・宮沢りえ・緒方直人・中沢佳仁・古本新之輔・冷泉公裕・山田明郷・野村祐人・永堀剛敏・井筒森介・横山めぐみ・美保純・大竹しのぶ・佐々木勝彦・花房徹・河村久子・藤田啓而・河内喜一朗・永井玄一郎・青井恵子・大川泰樹・片岡瑠美・森喜行・ガッツ石松・地井武男・岩城滉一

 


1994年秋

 五郎は、石の家で一人暮らしていた。中畑和夫と成田新吉が石臼をもって五郎を訪ねてきた。和夫は、町に下りてはどうだと言うが、はぐらかしているばかりで一考に聞く耳をもたなかった。純は、一年前から市役所の臨時職員として環境管理課で働いてていた。また、正吉も去年自衛隊を退官して純と一緒にアパートで暮らしていた。ある日、山部のリサイクルKKに修理したアンプを持って現れると、以前に純がもらった柱時計を探しに一人の少女が少女が焼却炉の前にたたずんでいた。

 純は、富良野に帰ってから札幌のれいちゃんとときどき会っていた。純と正吉は、アパートの部屋を使うとき、入り口に黄色いハンカチを表札に縛っておく約束にしており、純は黄色いハンカチを自分の表札に縛り、階段を下りていった。れいちゃんは、会うたびに洗練された女性になっていた。純は、れいちゃんから別の男性にプロポーズされたことを知らされ、当惑する。二人は、喫茶店を出て、昔通った八幡丘の道を歩いた。歩きながら、中学生の頃の昔を思い出していた。純は、れいちゃんに迫るが、れいちゃんに拒まれ、「もう結婚すれば・・・、その大人と」と言ってしまう。歩いている二人のもとにチンタがパトカーで現れる。チンタとれいちゃんは楽しそうに会話をしていた。その後、純はほとんど何も言わないれいちゃんをバス停まで送った。別れ際に、れいちゃんは純にコロンをつけるのを止めるように忠告する。純は、言葉にグサッと来た。それは、ゴミ収集の仕事についてから、自分の匂いを気にするようになっていたからだった。

 一般ゴミの収集日、純は偶然金物屋の前であの娘を見た。純は、久しぶりに五郎の石の家に顔を出し、五郎にもってきた柱時計の持ち主が現れたので返してほしいと言う。五郎はすぐに返すように言い、純に生ゴミの収集日を聞いた。

 純は、柱時計を持ち主の娘に返しに、金物屋でその娘を待ち、柱時計をもってアパートまで送った。純は、その娘の名前が「小沼シュウ」と知る。アパートに戻ると黄色いハンカチがかかっていた。純は、シュウを喫茶店に誘った。そこで、シュウが東京に住んだことがあることを知った。シュウから東京は愉しかったか聞かれるが、「卒業したんだ・・・・東京は、もう」と答えた。「I Love You」が店内に流れ始めた。

 シュウを送ってアパートへ戻るともう正吉たちはいなかった。部屋で寝転がっていると、電話が鳴った。出ると男が妹の螢はいないかと聞いてきた。純が札幌にいると答えると電話は切れた。

 純が、事務所にいると、最近生ゴミ泥棒がいるという話を聞き、シュウを連れて五郎を訪ねた。五郎は、シュウを気に入り三人で盛り上がっていた。純は、シュウをアパートまで送った。シュウは純を部屋へ上げ、これからいろいろな物を買って部屋に置きたいことを話す。純は、山部山麓デパートのことを話した。

 アパートへ戻るとテーブルの上に正吉からのメモが置いてあった。螢のことで勇次から電話があり、至急連絡が欲しいとのことだった。あの電話は、勇次だったことを知る。翌朝、勇次と連絡をとると螢が行方不明だと知り驚く。純は、正吉と一緒に札幌の勇次に会いに車で出かけた。勇次は、螢が大学病院の医者と不倫をしていて、それが発覚して病院を辞め、アパートも引き払って、行方知れずになっていると聞かされ、ショックを受ける。草太やチンタに相談しようかとも考えたが、結局螢からの連絡を待つことにした。

 シュウから留守電が入っていた。純は、シュウを連れて山部山麓デパートへ行き、いくつかの品物をシューの部屋へ持ってきた。二人で夕食の買い物に出かけ、店から出たところで広介に出くわし、紹介するように頼まれるが断った。食事の時、シュウは柱時計を五郎へ返したこと、ニンジン拾いを一緒にしたこと、純や螢の話を聞いたことをなど愉しそうに話した。純は、螢のことを五郎が知ったら・・・・・・と思った。アパートへ帰ると、車から二人の男が降りてきて、螢がいないか聞いてきた。その男は札幌の医者の息子の黒木と言った。連れの男から部屋を見せてくれるように言われ、部屋に入れると正吉がテレビを見ていた。連れの男と正吉が言い合いになったが、男は正吉に取り押さえられ、外に連れ出される。黒木の息子は、螢から連絡が入ったら知らせて欲しいと言って名刺を置いて帰っていった。
 トラクターに乗った広介が、ユンボの正吉にシュウのことで面白い物を見せると言ってきた。正吉は、広介の家でエロ本の中に森田あかねというAV女優のヌード写真を見せられ、驚く。

 純は、シュウと毎日のように会っていた。何日か経った日の夕方、清掃車に乗っていた純は広介に呼び止められ、正吉が何か言っていたかと聞かれた。広介は、その後話を濁した。アパートに帰った純は、正吉に広介のことを聞くが、正吉はなんでもないと答えた。そのとき、ドアをノックする音がし、正吉が外へ出ると螢が立っていた。螢は、部屋にはいると純にお金を貸して欲しいと頼み、今から新得から汽車で根室の落石へ行くと言った。純は、落石の住所をメモし黒木に連絡しようとするが、螢は泣きながら止めるように頼んだ。純は、正吉に持っているお金と車を借り、螢を新得駅まで送った。純は、車から螢の後ろ姿を見送った。狩勝峠を越え、富良野にはいると向こうの空がようやく白んできていた。



1995年6月10日(土)放送

 

 

 


 1995年 正月

 大晦日と正月の二日間はゴミの仕事も休みになり、純は草太や広介たちとスノーモービルを楽しんだ。螢は、家には帰ってこず、年賀状をよこしただけだった。
 純は、草太から「過去は気にするな。早く唾付けろ!」と言われたことが気になっていた。「過去」って誰の?その夜、純は正吉にシュウのことで何か知っているのかとたずねたが、正吉は忘れたと答えただけだった。
 純がゴミ収集をしているとパチンコをやりに来た広介に声をかけられた。純は、広介に聞きたいことがあるから今晩行っていいか聞いた。広介は、6時過ぎにはいると言った。
 その夜、純は広介の家に行き、シュウのことで何か知っているのではないかと聞いた。広介は、部屋の奥から一冊のAV雑誌を出してきて、純に見せた。そして、シュウが出ているビデオを借りてきて正吉と一緒に見たことも話した。純は、ショックと怒りを感じていた。帰り道、純は町のレンタルビデオ屋に寄って、シュウの出ているビデオを借り、アパートの部屋でそれを見始めたが、正吉がビデオを止めた。純は正吉を殴り、正吉は自分のしたことを純にあやまった。正吉は、アパートを出た。草太の家で広介を外に呼びだし、正吉はいきなり広介を殴り、広介が純にシュウのことを話してしまったことを怒った。

 その晩遅く、草太がアパートにやってきた。草太は、シュウの過去のことは、シュウに絶対話すな!と言った。純は、草太の言っていることはわかっていだが、黙っていることに自信がもてなかった。純は、れいに電話した。純は、結婚を決心したことを告げた。 純は、その後もシュウとは何度も会っていた。純は、東京でのシュウのことを知りたがった。
 純の乗った清掃車のゴミから出火する事故が起こった。純は、警察署で事情を聴取された。それが終わって外へ出るとシュウが純の上着を持ってしゃがんで待っていた。2人は、ラーメン屋に入った。そこでシュウから昔知っている事務所が火事になってフィルムなんかが爆発するみたいに燃えて大変だったことがあった聞かされた。純は、その中にアダルトビデオもあったのかとたずねたが、シュウは知らないと答えた。その後、純はシュウのアパートへ寄った。いつもと様子の違う純に、シュウは何か隠し事があるのかきくが、逆にシュウの方にあるのではないかと言い返した。純は、いろいろあって疲れているからといってシュウのアパートを後にした。

 一人の女性が、五郎を訪ねてきた。その女性は、以前螢が勤めていた病院の黒木婦長だった。五郎は、螢が婦長の夫光彦と駆け落ちしたことを知らされた。五郎は、黒木をバス停まで送るが、螢の駆け落ちの話が信じられなかった。五郎は、家へ戻る途中で雪の吹き溜まりに車を突っ込んだシュウに会った。
 五郎は、螢のことをシュウに話し、涙した。シュウも昔のこと消せる消しゴムがあるといいと言った。遠くで凍裂の音がした。五郎は、翌朝早く純を訪ね、落石へ一緒に行ってくれと頼んだ。

 アパートから出てきた螢が純を見つけ、2人は、落石のバス停で話した。螢は、五郎が来ているのではないかと純に聞いた。純は、螢を連れて五郎のいる食堂へ行った。五郎は、自分の気持ちを螢に話した。五郎と純は螢をアパートの近くまで送った。別れ際に、五郎は「いつでも富良野に帰ってくんだぞぉ」と叫んだ。螢は、引き返し毎日自分を責めているんだという気持ちを五郎に言った。五郎は、富良野までの8時間の長い道のりを一言もしゃべらずに過ごしたのだった。

 翌日から一級の寒波がやってきた。シュウが五郎を訪ねてきた。シュウは五郎を吹上温泉の天然の露天風呂に誘った。シュウは、湯船につかりながらもう五郎に会えなくなると話した。訳を聞くと、自分の過去に純が気付いてしまったらしいと打ち明けた。突然声が聞こえ、中畑和夫と成田新吉が現れ、五郎は狼狽した。麓郷へ戻った五郎は、今日のことは純には黙っていてほしいと中畑と新吉に頼んだ。

 朝早く、電話が鳴った。札幌のれいからだった。今日の午後結婚して、東京へ行くと聞かされた。朝出勤しようと車へ行くと、シュウから今夜6時から北時計でずっと待っていると書いたメモがワイパーに挟んであった。純は、仕事を途中で仮病で休んで、れいの結婚式のある札幌へ向かった。純は、教会から出て車に乗り込むれいを遠くから見守った。

 純がアパートへ戻ると五郎が待っていた。五郎は、シュウの待つ北時計へ行くように純に言った。純は、もう遅いと言ったが五郎に諭され北時計に向かった。シュウが窓際に一人座って待っていた。純は、車を降り、五郎に一礼して中に入っていた。シュウは純にあてた手紙を書いていた。その手紙をシュウは読み始めた。その手紙には、シュウの過去のことが書かれていた。純は、その手紙を奪い取って破き、そして今度の日曜日に山部山麓デパートへ行かないかとシュウを誘った。

 五郎のもとに、落石の螢から手紙が届いた。



1998年7月10日(金)放送

出演
田中邦衛・吉岡秀隆・中嶋朋子・宮沢りえ・中沢佳仁・清水まゆみ・上杉祥三・筒井真理子・小野田良・小池美枝・永堀剛敏・山本龍二・冬雁子・華岡陽子・佐々木睦・林美智子・美保純・室田日出男・熊耳宏幸・斉藤浩子・松崎まゆみ・伊達生・斉藤典世・温井摩耶・皆川敬一・工藤美香・古賀プロ・劇団道・富良野塾・富良野市のみなさん・劇団東俳・東京児童劇団・劇団ひまわり・セントラル子供タレント・岩城滉一・地井武男・竹下景子

 


 1997年 初夏
 根室に仕事があった帰り、正吉は落石に螢を訪ねた。正吉は、五郎が炭焼きを始めたこと、純が仕事を続けていること、シュウともうまくいっていることなどを話した。螢から、結婚のことを聞かれ正吉は相手がいない空き家だと答えた。そして、正吉も螢に富良野へは戻ってこないのかと聞くが、螢は何も答えなかった。

 純が、チンタの兄完次の新居に結婚祝いを車で届けると、ベッドにチンタが寝ていた。チンタは、兄に恋人を奪われたことにめいっていた。完次は、五郎の助けで有機農法を始めていた。五郎は、純に人に喜んでもらえることは金では買えないと言った。純もそのことが少しわかるようになってきていた。

 純は、正吉に今度の日曜日にシュウの実家の上砂川に挨拶に行くと話した。次の日曜日に、上砂川に車を走らせ、シュウの実家を訪れた純は、緊張して殆ど何を話したのか覚えていなかった。帰るときになってみんなやさしく見送ってくれた。純は、シュウと父を乗せてカラオケへ行ったが、シュウの父だけが歌い続けて、一人で帰っていってしまった。それから二人は、シュウが昔住んでいたという上砂川の炭坑跡へ行き、シュウから父のことを聞かされた。純は、シュウの家族にどう思われたのかが心配だったが、シュウは以外と愛想が良かったと答えが、兄から話があるからすぐには富良野へは帰れないとも言った。純は、アパートへ戻ると正吉に今日のことを報告したが不吉な予感がしたのだった。

 シュウからの連絡は、あの後何もなかった。純は、自分の職業のことを気にしていた。
 五郎のもとに、突然雪子が一人であらわれた。雪子は、五郎に私も一人になったと話した。五郎が訳を聞くと離婚して息子の大介も父親の方を選んだと答えた。夜、草太がバイクで五郎の所へやってきた。草太が風呂場を覗くと女性の悲鳴が聞こえ、驚いた草太は中畑和夫の家へ報告に行った。中畑と草太の二人が再び五郎の家へ行くとベランダに雪子の姿を見つけ、草太は走り寄った。その夜、純のもとにシュウから明日会いたいと電話が入った。

 純はシュウから、上砂川の兄の店で働くことになったから富良野から離れなくてはならなくなったと聞かされた。純は、かつてのれいちゃんのときのように、これから富良野と上砂川に離れてしまうことで互いの気持ちが変わってしまうのではないかと不安になった。ある日、純が仕事をしていると五郎と雪子に声をかけられた。純は、雪子をみてとても懐かしく思った。その夜は、三人で赤ちょうちんへ行った。そこで、五郎から雪子が富良野に住むことを聞いたのだった。純は、次の日曜日雪子の引っ越しの手伝いをした。雪子は、東京の大介のもとへ純に電話してもらうが不在だった。

 草太は雪子を連れて自分の農地を全部見せて回った。草太は、借金をしてどんどん近代的で大規模な農業に取り組んでいた。草太は、五郎のやっている有機農法に否定的な考えを持っていた。
 仕事を終えてアパートへ戻った純は、ドアにはさけられたメモを見つけた。それは、シュウからのものだった。そこには、「急に帰ることになりました。改めて電話します。シュウ」と書いてあった。

 へそ祭りの始まるその日の昼、仕事中に中畑から声をかけられた。中畑は、螢が金を貸してほしいと言ってきたことを純に伝えた。螢が、雪子の働くニングルテラスへ現れた。螢は、自分がここに来たことを五郎や純には黙っていてほしいと頼んだ。純は仕事を終えて事務所に帰ると正吉から電話が入り、喫茶店に呼び出された。店内にはいると、螢と正吉が向かい合って座っていた。純がお金を工面しに店を出ると正吉が追った。その隙に、螢も店を飛びだし、二人は、螢を追ったが見失ってしまった。

 草太の牧場では、母牛から子牛を取り出していた。螢は、遠くからそれを見ていた。草太は、螢を見つけ走り寄った。螢は、草太にお金を貸してほしいと頼んだ。草太は、快く貸すと言ってくれた。螢は、自分のお腹の中に子どもがいて一人で産んで育てる決心をしていることを話した。草太は、このことは誰にも話さないと約束し、螢を札幌まで送った。

 ここ何年も続いている異常気象の低温多湿で完次のジャガイモ畑にも疫病が発生した。完次と五郎は、それが広がらないよう走り回った。純のもとにシュウから手紙が届いた。そこには、シュウが兄のコンビニの手伝いを始めたこと純が気にかけていた自分の職業についてシュウの家族がどう思っているのかなどが書かれていた。突然正吉は草太から喫茶店に呼び出された。草太は、正吉に螢のことを話し、螢と結婚するように言った。アパートへ戻った正吉は、明日札幌へ行って来ると純に話した。翌日正吉は札幌へ出かけ、螢に結婚を申し込んだ。螢は、気持ちだけ十分もらったからと答えただけだった。正吉は、螢と別れてから、母みどりの店を訪ね身を固めたいと思っていることを話した。店で流れていた「百万本のバラ」という曲の話を聞いた正吉は、そこら中のオオハンゴンソウを刈り始め、それを札幌の螢のもとへ送り続けた。

 盆があけたある日、正吉が純に話がある言ってきた。正吉は、螢と結婚したいと話した。純は怒ったが、車で待っていた螢と会って話を聞き、純は螢に圧倒されてしまった。その後、純は二人をホテルに送った。翌日、みどりが札幌から慌ててアパートへとんできた。みどりは、正吉がしたことを純に謝った。純が、正吉と螢を連れて、五郎の家へ現れた。五郎は、三年ぶりに螢を見て大いに喜んだ。正吉は、螢と結婚したいと切り出すと、五郎は涙を流して喜んだ。それからいきなりの酒盛りとなった。8時頃、完次の妻ツヤ子が、完次の畑で出た疫病のことを知った草太が農薬をまいていると言って走ってきた。完次が5年かけて生き返らせた土がまた死んだ土に戻ってしまった。

 そうして、いきなり富良野に秋が来た。気温が突然グンと下がった。



1998年7月11日(土)放送

 

出演
田中邦衛・吉岡秀隆・中嶋朋子・宮沢りえ・中沢佳仁・古本新之輔・今井和子・清水まゆみ・平泉成・笹野高史・小野田良・小池美枝・永堀剛敏・林美智子・美保純・布施博・ガッツ石松・室田日出男・奥村公延・大木正司・ト字たかお・熊耳宏幸・木村翠・花原照子・岩田仁吉・浜田道彦・春延朋也・岡崎公彦・古賀プロ・富良野塾・富良野市のみなさん・岩城滉一・地井武男・竹下景子

 


 畑に収穫の秋がやってくる頃、螢が富良野に戻ってきた。結婚式が1月に決まり、それまでは五郎と一緒に住むことにしたのだった。草太の牧場にシンジュクが血相を変えてやってきた。シンジュクは、中畑和夫から螢のお腹の子は正吉の子ではないと聞かされと言ってきた。草太は、誰にも言うなと言ったが、草太が中畑にしゃべったことで、秘密では無くなってしまうとシンジュクは草太を攻めた。草太は、螢だけには幸せにしてやりたいと言った。10月10日、今年始めて雪虫を見た。

 ある日、純はニングルテラスの雪子を訪ねたとき、螢のお腹の子は正吉の子ではないかもしれないと五郎が言っていたと聞かされ、螢の子の父親について疑問を抱くようになった。中畑から言われたことが気になっていた五郎は、螢の鞄に母子手帳を見つけ父親の欄が未記入になっていることを知った。五郎は、上砂川のシュウを訪ねた。五郎は、シュウと夕食を共にしながら、シュウから純に連絡を取ってくれるように頼んだ。

 完次とツヤ子が農家の連帯保証人達に呼ばれた。草太は、完次がつくった借金はこれ以上肩代わりはできないから、ここからさっさと出ていくように言った。広介からその話を聞いた純と正吉が完次の家に行くとツヤ子と五郎が居た。完次は組合長のところへ行っているらしかった。純達は、とりあえず五郎の家に戻った。純と正吉がアパートへ戻ろうと家を出るとツヤ子が走ってやってきて、完次がどこの家にも居ないと話した。完次は、借金を苦に農薬を飲んで自殺しようとしているところを発見され、助けられたのだった。

 ある日、純が仕事を終えるとシュウが会社の前で待っていた。シュウは、クリスマスプレゼントといって日記を純に渡した。その夜、二人は島ノ下のモーテルへ行った。待っている間、純は螢のお腹の子のことをシュウに聞いてみた。シュウは、正吉なら男ぽいからあり得ることだと言った。
 完次の一家が富良野から消えたのは、それから三日後のことだった。純は、完次の持っていた土地の大部分を草太がとったと正吉から聞かされた。純は、最近の草太の考え方ややり方に不満を抱き始めていた。五郎に、そのことを話すと人の悪口は言わない方がいいと言われた。その翌日の夜、純は草太に呼び出され、自分のやっている仕事を一緒にやらないかと誘われた。そして、明日完次から引き取ったトラクターを運ぶのを手伝ってくれないかと頼むが、純は強く断った。翌日、シュウへのプレゼントを買いに雪子の店を訪ねるとそこへ五郎から草太が倒れたトラックの下敷きになって死んだという電話がかかってきた。

 純は、草太の手伝いを断ったことに心を痛めていた。五郎は、シュウに電話し、純のそばにしばらく居てくれるように頼んだ。純は、シュウと会って少し落ち着きを取り戻したが、草太が死ぬ前の日の夜雪子の店にやってきて純は自分の弟だからこれからのことが心配だと言っていたと雪子から聞かされ、号泣した。
 その翌々日、草太の告別式が行われた。その夕方から、また雪になった。正月に入ってしばらくしてから、草太の家で純と正吉に新吉から草太の牧場をやってみないかという話があった。翌日7時にくまげらへ行くと螢の結婚式の話だった。その話を聞いた純は中止するように頼むが受け入れてもらえなかった。ある日、純と正吉が五郎の家に行くと草太から螢の結婚式の衣装が届けられていた。正吉は、草太の計画した結婚式をやってもらってもいいと純に言った。

 螢は、今夜から下で寝る言い出した。螢は、五郎に昔母令子と結婚した日に何を話したのか聞いた。五郎は、結婚してくれてありがとうと言ったら令子が怒ったと話した。
 結婚式の当日、花火が打ち上げられリムジンが迎えに来た。五郎は、機嫌を損ね結婚式には行かないと言い出してしまった。五郎は、いつもの作業着に着替え炭焼きを始めだした。それから説得するのに2時間半かかった。

 麓郷神社で結婚式が行われ、披露宴は北の峰の会館で進行した。その席で、草太のスピーチ練習の録音テープが流れ、出席者達は、皆昔ことを思い出していた。それから、螢達をホテルに送り、町で行われた二次会の席で五郎は切れたように酔っぱらった。純は、シュウに電話をし、五郎をタクシーで家まで連れて戻り、酔っぱらった五郎を家の中にに何とか連れて入った。五郎はふところに令子の写真を忍ばせていた。純は、その写真をそっと机の上に置き、五郎に布団を掛けると五郎は純の手を握り眠りについた。



2002年9月6日(金)放送

出演
田中邦衛・吉岡秀隆・中嶋朋子・宮沢りえ・内田有紀・唐十郎・清水まゆみ・中島ひろ子・串田和美・根岸季衣・平賀雅臣・沢木哲・春海四方・西村成忠・柳葉敏郎・布施博・ガッツ石松・高橋昌也・円城寺あや・大森博・久保隆徳・水津聡・富良野市の皆さん・羅臼町のみなさん・富良野塾・古賀プロ・原田美枝子・岩城滉一・地井武男・竹下景子

 


 草太の牧場を引き継いで4年が過ぎていた。純と正吉が引き継いだ牧場は破産し、正子とアイコは富良野から消え、純と正吉は借金を2人で分担し、今後少しずつ払う約束をして別々に富良野を離れた。螢は、看護婦をしながらアパートで快と一緒に住んでいた。五郎は、今の何よりの楽しみがこの快と一緒に遊ぶことだった。

 ある日、五郎は保育所から快を石の家へ連れてきて遊んでいると螢が車で乗り付け、勝手に保育所から連れてきたことで五郎を怒鳴りつけた。五郎は走り去る車に向かって雪子の息子の大介が今日来ることを言う。
 ニングルテラスのロウソク屋で働いている雪子のもとに16歳になった大介が現れる。大介は、殆ど話もせず無表情で食事をしていた。すると携帯が鳴り、大介は携帯を持って外へ出ていってしまう。そこへ、五郎が現れ、大介に話しかけ、脇に座るが携帯のメールに夢中で、すっと立って家の方へ歩いていってしまう。

 翌日、五郎が炭焼き用の材を造っていると中畑が娘のすみえを連れてやってきた。札幌で保母をやっていたが、今度結婚することになり富良野に戻ってくることになったことを知り、五郎は中畑を祝福する。しかし、中畑は、相手の男を余り気に入っていなかった。今晩、祝いの食事をするから一緒につき合うように頼まれる。そこへ、すみえの相手の男清水正彦がバイクで現れた。正彦は、五郎が廃材で造った雪子の家に感動していた。その夜祝いの会で正彦は自分たちの新居を五郎に造ってもらいたいと言い出した。そして、バイオ発電で電気をつくることを提案する。五郎も、興味を示すが、中畑は不満だった。
 五郎が、テラスでバイオ発電の図面を見ていると、車の音がして一人の女性が道を上がってきた。五郎は手をかざしてその女性を見た。シュウだった。
 シュウは五郎のために風呂をたいた。五郎は、シュウが結婚して神戸へ行くことになったことを告げた。シュウは純に当てた手紙をテラスの上に置いて帰っていった。五郎は、シュウの後ろ姿に深々と頭を下げた。突然五郎は激しい痛みに襲われた。

 純は、各地を転々として今は知床半島の付け根の町、羅臼で廃棄物処理の仕事をしていた。今年30歳になった純は、暖かい家庭を持ちたいと痛切に感じていた。
 ある日、港で魚を積んだリフトと軽トラックがぶつかりそうになって、箱がくずれて魚がこぼれた。純は、落ちた魚を拾って持っていると若に女性が近づいてきてその魚を海に捨てて行ってしまった。その日、純は中標津から生徒をつれて羅臼へ来ていた凉子先生と20年ぶりに出会い、次の日曜日に中標津の凉子先生の家を訪ねた。そこには、港で出会った女性が居た。その女性は、凉子先生が昔教えた子で、高村結という名だった。凉子先生の家では、昔の話で盛り上がった。純は、結を羅臼まで送った。番屋へ帰ると五郎から手紙が届いていた。開くとシュウからの手紙が中に入っていた。純は、それを読み終えるとストーブの火の中へ入れた。

 純は仲間とカラオケバーにいたが、明日が早いからといって店を出た。ふと橋の向こうにコンビニの明かりがあり、レジの前には結が座っていた。純が店に入って弁当を手にとってレジに行くと結はその弁当を賞味期限切れのものと取り替えて戻ってきて純に渡した。純は、事情が分からず返そうとしていると、店長が声をかけてきた。結は、仕方なく代金を純から受け取り、レシートとお釣りを渡した。レシートには「ごめん、また来て」と書いてあった。純はやっと事情が飲み込めたのだった。純の心の中でしだいに結の存在が大きくなってきていた。ある夜、純は仕事を終えて出てくる結を待ち、結の家まで話しながら歩いた。純は、次の日曜日に結をドライブに誘った。その後、結と会う日が少しずつ増えていった。ある日、拓と寅が番屋に現れ、結が人妻であること、結の義父がとても荒い性格であることを純に話した。純は動揺していた。富良野の螢から手紙が届いた。そこには五郎の体の調子が余り良くないらしいと書いたあった。

 中畑木材の土場で定期検診を受けるように螢から進められていたが、成田新吉に言われ梅干しを種ごと飲んでいるから大丈夫だと言って五郎は拒んでいた。螢は、五郎に検査を受けなければ快には今後会わせないと言って帰っていった。五郎は、中畑から今造っている家をすみえたちの新居にしてもらえないかと頼む。螢の快に会わせないという言葉でついに五郎は、定期検診を受ける決心をした。しかし、検査期間が長引くにつれ、心配になってきた。そこで、清水正彦に知り合いのことでと言って相談した。正彦は、ガンでなければいいがと言い、医者もはっきりしたことは言わないと聞かされた。検査終了後、診察室で大したことはないと言われた。五郎は、螢から許されたので久しぶりに快を保育園に迎えに行きかくれんぼをして遊んだ。

 螢は、病院で債権者の三沢の夫人に呼び止められ、純が借金を半年だけは送ってきたが、その後ぱったり送金してきていないことを知らされた。螢は、三沢の夫人に何度も頭を下げ謝った。家に帰ると快が見あたらなかった。螢は、また五郎が連れだしたと思い、五郎の所へ向かい、寝ている五郎を起こした。しかし、快はいなかった。2人は、螢のアパートへ戻り、部屋中を探し回った。快は、風呂場の浴槽の中で眠っていた。螢は、五郎に三沢の夫人から聞いた話をした。五郎は、それは何かの手違いだと螢に言った。純のもとに五郎から借金のことで手紙が届いた。借金は、ずっと払ってなかった。

 結が番屋に来た。結は、純に私と結婚する気持ちはあるのかと聞いた。純は、答えなかった。メールでやり取りしていることが義父に知られ、近々会いに来ると言われ、純は当惑した。翌朝、番屋の外へ出ると漁船に乗って双眼鏡でこちらを見ているトドを見て、純は慌てた。突然携帯が鳴った。結からだった。義父が海沿いの温泉で義父が待っていると伝え切れた。純が急いで温泉に出かけると既にトドは湯船につかっていた。純は、トドに家族のことや借金のこと結とのことを聞かれ、その迫力にビビッてしまった。その後、心配した結からメールが届くが、多分駄目そうとメールを打った。

 螢は、病院で検査入院をしている中畑みずえに会い、五郎がすみえたちの新居を廃棄物で造っていることを知らされた。そして、みずえは夢で見た廃棄物で造られた町の話を螢にし始めた。和夫は、病院からすみえたちの新居に車を走らせた。雪子が息子の大介のことで屋根にいる五郎を呼んだ。五郎と大介の話しを聞いていた和夫は、腹を立て大介を殴り、大介の持っていた携帯電話を川に捨ててしまった。五郎は、いつもと様子が違う和夫に訳を聞いた。和夫は、みずえのガンが再発したことを五郎に泣きながら話した。

 翌日、はじめて雪虫を見た。富良野の秋が終わろうとしていた。 



2002年9月7日(土)放送

出演
田中邦衛・吉岡秀隆・中嶋朋子・内田有紀・唐十郎・岸谷五朗・清水まゆみ・中島ひろ子・根岸季衣・佐戸井けん太・山崎銀之丞・平賀雅臣・西村成忠・春海四方・石川素子・柳葉敏郎・布施博・ガッツ石松・高橋昌也・杉浦直樹・井上夏葉・久保井研・桝田徳寿・真柴幸平・浜松朝男・倉林一成・六条寿倖・富良野塾・富良野市の皆さん・羅臼町のみなさん・古賀プロ・劇団東俳・原田美枝子・岩城滉一・地井武男・竹下景子 

 


 10月の末の寒い夜、雪子の息子の大介が、ひっそりと富良野を去っていった。同じ夜、螢の勤める病院にみずえが急患で運ばれてきた。医者が螢に癌が肝臓までまわっていると話してきた。待合室で中畑和夫は、螢にすみえ達の新居を急がせていると話した。ある日の夜、新吉は五郎に遺言を書くように勧め、山下という元先生を紹介した。五郎は、遺言を書いて山下を訪ねた。山下は、五郎が造っている廃棄物の家を一緒に造りたいから弟子にしてくれるように頼んできた。
 ある日、現場に結の義父トドが現れた。そうとは知らない五郎は、地元の人と勘違いし作業を手伝わせてしまった。トドは、五郎のやっていることに感銘を受けた。五郎は、その夜トドを自分の家に泊めた。トドは、五郎と酒を酌み交わしながら、それとなく五郎に家族の事情を聞いた。

 純が、朝目覚を覚ますと携帯が鳴った。出ると結からだったが義父に変わり、明日の朝海に出るから5時に迎えに行くと一方的に話して切れた。翌朝、純はトドに連れられ初めて冬の海に出た。トドは、純に五郎を羅臼に流氷を見せに呼ぶように言った。それから、純は富良野の五郎に手紙と片道の旅費を送った。
 夜、五郎がすみえの新居で作業をしていると和夫が現れ、みずえが春までは持たないからすみえの結婚式を来週中にやろうと思うと言い、式には誰も呼ばずに行うと話した。五郎は、あと一週間で何とか形にするから家のことは自分たちに任せ、少しでもみずえについているようにと言った。天井でその話を聞いていたシンジュクも涙した。五郎は、この冬羅臼に行くと純に手紙を書いた。

 突然、結の夫の弘が羅臼の酒場に現れた。翌朝、港で作業している結のもとに弘が姿を見せた。弘は、純と話をつけると結にいきがって見せた。結は純に電話を入れ、弘に気を付けるように伝えた。仕事を終えて番屋へ戻ると弘達が中から出てきた。純は、無抵抗に4人にボコボコに痛めつけられた。そこへ、弘の父トドが現れた。弘は、トドに殴られ黙ってその場から立ち去った。トドは、純にもっと戦うように言って帰っていった。夜、結が番屋にやってきた。純は結と二人で弘の元へ話をつけに車を走らせた。純は、弘に結との結婚を許してほしいと土下座して頼んだ。結は、純の後ろで鉄砲の銃口を弘に向けて黙って立っていた。

 翌朝、番屋の前から海鳴りの音が消えていた。そして羅臼に流氷が来た。流氷が翌日から港を覆い、羅臼の海は一変した。二月のしばれる夕方、五郎が羅臼にやってきた。その晩、久しぶりに親子みずいらずの夕食をした。純は、結のことを五郎に話をした。五郎は、結が人妻だと聞き、反対した。純は、1時間かけて五郎に事情を説明した。五郎はやっと理解したが、目に涙をため、黙っていた。
 翌朝、五郎が番屋の外へ出ると、結が番屋に向かって走ってきた。五郎は、慌てて番屋に入った。結は、トドが昨日から五郎に食べさせるトドを打ちに出かけたきり帰ってこないと話した。仲間達は、遭難した船の目印に流木で迎え火を焚きだした。夜の8時頃、ニュースを聞いた凉子先生がやってきた。純は、五郎が来ていることを話し、先生を番屋へ連れて行き、五郎の相手を頼みで迎え火の場所へ戻った。弘が一人迎え火の番をしていた。弘は、結を譲ると言って純に酒をついだ。

 翌朝、ふと目が覚めると港一杯に流氷が入っていた。純が迎え火の番をしていると心配して五郎が駆けつけてきた。結つくったブタ汁を食べていた弘が突然器を落とし、沖を見つめた。トドとジイヤンが流氷の上を歩いて戻ってきた。そして、二人は漁船に乗り込み港へと帰ってきた。その夜は、高村の家で祝いの席がもうけられた。カラオケバーでみんなが盛り上がっているとき、純の携帯が鳴った。それは、みずえが死んだとの連絡だった。純は、二年ぶりに富良野に戻った。麓郷は、全く変わっていなかったが、また一人世話になった人が居なくなってしまったと思った。中畑の家では葬儀の準備の真っ最中だった。純は、話したいことがあるから今晩泊めてもらえないかと螢に頼んだ。五郎は、山下から五郎の遺言の文章には死という実感が欠けていると話した。夜、雪子の家で純が話していると五郎が中畑和夫を捜しに入ってきた。外へ出ると、和夫はすみえたちの新居で一人泣いていた。

 その日、純は螢のアパートに泊まった。純は、結婚して身を固め、富良野に戻ってくる決心をしたことを螢に話した。五郎は、山下から言われた自分の死んだ後の世界を想像して遺言を書いてみなさいと言われたことを考えながら筆を進めていた。翌朝、純は牧場の跡地へ行った。その後、草太の墓に寄り、墓前でたばこに火を付けて雪に差した。その足で、三沢のじいさんの家を訪ねた。じいさんは、ベッドに横たわったまま純を迎え入れた。じいさんは、自分のことで純が富良野に戻って来られないのではないかと病んでいたと言った。純は、三沢のじいさんの家から帰る途中、町で結の姿を見つけ、その後をゆっくり車を走らせた。結は、町をいろいろ歩き、最後に神社へ寄た。

 螢が、快を連れてアパートへ戻ると正吉から手紙が届いていた。螢は、快を連れて五郎のもとに車をとばした。その夜は、久しぶりの家族の団らんだった。夜中に純が目を覚ますと螢が立っていた。螢は、正吉の元に行きたいと五郎に話し出した。翌朝、羅臼のトドからたくさんの海産物が届けられた。3月25日、螢と快が富良野を発った。それから、純と結と五郎の三人で石の家で暮らし始めた。純は、五郎の仕事を手伝いながら三沢のじいさんの家に毎日通っている。五郎は、今年もまた炭を焼いている。