三岐鉄道 ト101形
ト101形(101〜118)
 ト101形は10トン積車で、18輌存在したが成り立ちは様々で、グループ別に紹介する。

●開業時譲受グループ(101〜109)
 ト101〜109は、1890(明治23)年鉄道庁新橋工場で製造された日本鉄道乙第弐拾九号形で、日本鉄道は1906(明治39)年3月の「鉄道国有法」により同年11月に国有化され鉄道作業局となった。鉄道院時代の1911(明治44)年に改番されト15310形となり、さらに鉄道省時代の1928(昭和3)年にも改番されト4900形となった。三岐鉄道は開業に合わせて1931(昭和6)年3月に鉄道省ト4900形20輌を譲受し、改番せずに竣功している。うち2輌を1934(昭和9)年9月に富士化学工業、9輌を翌年10月に南武鉄道(現JR南武線)へ譲渡し、残った9輌を1936(昭和11)年4月にト101形101〜109と改番している。車輌の経緯を下表にまとめる。その後、1940(昭和15)年3月になぜかト104と107を番号振替している。1958(昭和33)年3月のト108を最初に1965(昭和40)年3月までに全車廃車解体されている。
日本鉄道
乙第弐拾九号形
鉄道庁〜鉄道省
ト15310形
鉄道省
ト4900形
三岐鉄道ト101形
譲渡 廃車
(予定) (実施)
丑237 ト15436 ト5300

南武鉄道
丑238 ト15437 ト5301

南武鉄道
丑239 ト15438 ト5302

南武鉄道
丑240 ト15439 ト5303

南武鉄道
丑241 ト15440 ト5304

南武鉄道
丑243 ト15442 ト5306
ト101
1964.12.
丑244 ト15443 ト5307
ト102
1963.1.
丑249 ト15448 ト5311

南武鉄道
丑253 ト15452 ト5315

南武鉄道
丑254 ト15453 ト5316

南武鉄道
丑255 ト15454 ト5317 ト101 ト103
1965.3.
丑258 ト15457 ト5320 ト102
富士化学工業
丑259 ト15458 ト5321 ト103 ト104
1962.8.
丑260 ト15459 ト5322

南武鉄道
丑261 ト15460 ト5323 ト104 ト105
1963.11.
丑263 ト15461 ト5324 ト105 ト106
1963.4.
丑264 ト15462 ト5325 ト106 ト107
1964.5.
丑265 ト15463 ト5326 ト107 ト108
1958.3.
丑267 ト15465 ト5328 ト108
富士化学工業
丑103 ト15466 ト5329 ト109 ト109
1963.8.

●省有車譲受グループ(110・111)

 ト110は梅鉢鉄工所(現東急車輌製造大阪工場)で製作された芸備鉄道ト81で、1937(昭和12)年7月に買収され鉄道省ト14500形14524となった。運輸省で廃車となったものを1948(昭和23)年4月に譲受している。1961(昭和36)年9月に廃車解体されている。ト111は日本鉄道大宮工場製で、1906(明治39)年11月に国有化され鉄道作業局となり、1911(明治44)年の車輌称号改正でト10336形12877となった。さらに1928(昭和3)年の車輌称号改正で鉄道省ト6000形8019となった。運輸省で廃車となったものを1950(昭和25)年5月に譲受している。1960(昭和35)年12月に廃車解体されている。

●私鉄車譲受グループ(112〜118)
 ト112は1921(大正10)年2月に服部製作所で製造された江若鉄道ト1形2で、ト113は製造年・製造所不明の江若鉄道ト200形207で、廃車となったものを1957(昭和32)年6月に譲受し大鉄車輌工業で改造されて竣功した。ト114〜118は1957(昭和32)年11月に大鉄車輌工業で有蓋車ワ50形58〜62から改造されて竣功した。ト112・114・116・118を除いて全車1965(昭和40)年11月に廃車解体されている。
 最後まで残ったト112・114・116・118のうちト114・116は1978(昭和53)年1月、電動吊りフックなどを設け保線用PC枕木運搬車に改造されたため、荷重も8トンとなった。しかし、PC枕木化がほぼ完了した1984(昭和59)年9月に廃車解体された。ト112・118は当初セメント輸送でも活躍したが、晩年は保線用バラスト輸送専用となった。しかし、1983(昭和58)年3月に軌道モーターカーMC101(現MC1)と一緒にダンプトロリー200形が3輌導入されたことで、1987(昭和62)年10月に廃車解体され全車消滅した。

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2011.7.18 更新
主要諸元
形式 車号 最大寸法(長巾高) 自重(t) 荷重(t) 実容積(m3) 軸距 備考
ト101 101〜109 6339×2261×1689 6.12 10.00 24.00 3048 譲受時自重5.50t
110 7810×2600×1740 5.95 13.00 33.90 3962
111 6288×2340×1946 6.24 10.00 23.14 3048
112 6312×2337×1813 5.60 10.00 23.95 3048 譲受時
6312×2448×2185 6.25 10.00 25.01 3048 更新後
113 6338×2448×2180 6.65 10.00 25.12 3048
114〜116 6325×2648×2135 6.70 10.00 27.34 3048 旧ワ58〜60
117・118 6325×2648×2135 6.80 10.00 27.34 3048 旧ワ61・62
114・116 6325×2648×3845 6.70 8.00 3048 枕木運搬車化
車輌画像
榊原育夫氏 撮影

ト112+118

1978.3.29

伊勢治田

ト118

1985.12.18

保々車両区

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