無為にしてひがな空蝉もてあそぶ
朴の花匂ひあわゆき舌に溶け
朴の花咲きしより夏寒き日の続く
牡丹を垣間見賞めて行くことよ
はたた神過ぎし匂ひの朴に満ち
多羅の葉にこぼれてえごの花盛り
卯の花に昼の稲妻ただ黄いろ
船窓わ掠めて鷭のしぶきかな
潮急に植田は鏡より静か
蛍火の鋭どき杭ぜ燃やしけり
蛍火に幻の手を差し出しぬ
桟橋の先にも菖蒲葺き垂れし
馬鹿家鴨流れて早苗矢のごとし
鯉幟ポプラは雲を呼びにけり
胡瓜もみ蛙の匂ひしてあはれ
ほととぎす山家も薔薇の垣を結ふ
紅薔薇に棕櫚蓑を捨ててあり
温泉に沈み一寸法師明易き
雷雨過ぎ大気冷たく空薔薇色
緋の衣すてたる芥子は鉄十字
緑蔭に黒猫の目のかつと金
籘椅子や心は古典に眼は薔薇に
燎原の火か筑紫野の菜殻火か
筑紫野の菜殻の聖火見に来たり
菜殻火は観世音寺を焼かざるや
菜殻火の襲へる観世音寺かな