和歌と俳句

飯田蛇笏

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夏雨や淵にまた下る合歓の蜘蛛

薙ぎ草のおちてつらぬく泉かな

やまぎりに濡れて踊るや音頭取

流燈や一つにはかにさかのぼる

舟をりをり雨月に舳ふりかへて

しばらくは月をとぼその夜霧かな

きりさめやいかにおつべき蔦のつゆ

秋水やすてしづみたる古扇

鳴子縄はただ薄闇に風雨かな

文殊會の僧月にひく鳴子かな

雪山をみせて月出ぬ古かかし

秋燈にねむり覚むるや句三昧

瀧風に吹かれあがりぬ石たたき

汲まんとする泉をうちて夕蜻蛉

笠紐を垂る大露やいなごとり

龍膽をみる眼かへすや露の中

零餘子もぐ笠紐ながき風情かな

山妻や髪たぼながに神無月

冬日縁はなし一とときはずみけり

寒燈をつり古る妻の起居かな

子を持てばなめづる情に冬ごもり

甕水を汲むやまつわる榾げむり

家も夫もわすれただ煮る根深かな