音ひしと盤面をうつ蠅叩
明月に馬盥をどり据わるかな
稲扱く母にゑまひなげゆく一生徒
秋耕にたゆまぬ妹が目鼻だち
ふなべりや上げ汐よする水燈會
玉蟲の死にからびたる冬畳
雪つけて妻髪枯れぬ耳ほとり
汝が涙炭火に燃えて月夜かな
寒禽を捕るや冬樹の雲仄か
寒林の陽を見上げては眼をつぶる
月のゆめを見しおもひ出や落葉焚く
太箸やいただいておく静心
雪の松ほのぼのとして着初かな
街路樹に仰ぐ日ふるふ余寒かな
馬の耳うごくばかりや花曇り
春山や鳶のたかさを見て憩ふ
薄月も夜に仰がれて挿木かな
蜆川うす曇りして水の濃き
木々の芽にかけ橋きよき風雨かな
ぱらぱらと日雨音する山椿
長橋におとろふる日や花堤
澄む水にみよしうごきて花吹雪
塗り畦にたんぽぽちかくありしかな
夜明りに渦とけむすぶ鵜川かな
めづらしやしづくなほある串の鮎