和歌と俳句

飯田蛇笏

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芝山の裾野の暑気やねむの花

桑の實の葉うらまばらに老樹かな

青梅のはねて泛く葉や夕泉

冷やかに簔笠かけし湖の舟

蟻塚をつらぬく草の秋暑かな

十月の日影をあびて酒造り

秋日椎にかがやく雲の袋かな

名月や宵すぐるまのこころせき

みるほどにちるけはしさや秋の雲

秋雲をころがる音や小いかづち

秋の草全く濡れぬ山の雨

かよひ路にさきすがれたる野萩かな

晩稲田や畦閧フ水の澄みきりて

枯紫蘇にまだのこる日や雪の畑

冬雷に暖房月を湛へたり

冬水や古瀬かはらず一筋に

年木割かけ声すればあやまたず

炭売の娘のあつき手に触り

胸像の月光を愛で暖炉焚く

餅花や庵どつとゆるる山颪

早春の風邪や煎薬とつおいつ

春あさき人の会釈や山畑

春の夜やたたみ馴れたる旅ごろも

小野を焼くをとこをみなや東風曇り

水辺草ほのぼのもゆる野焼かな