和歌と俳句

飯田蛇笏

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極寒のちりもとどめず巌ふすま

みぞるるや雑炊に身はあたたまる

綿入や気たけき妻の着よそほふ

何もかも文にゆだねぬ冬籠り

山柴におのれとくるう鶲かな

山土の掻けば香にたつ落葉かな

茶畠や花びらとまる畝頭

いく霜の山地日和に咲くかな

聖芭蕉かすみておはす庵の春

野社へお降り霽れや夕まゐり

恋々とをみなの筆や初日記

人の着て魂なごみたる春着かな

織初や磯凪したる籬内

端山路や曇りて聞ゆ機始め

草の戸や白機はじむ十四日

眉剃りて妻の嬉々たる初湯かな

谷雲にそれてながるる破魔矢かな

破魔弓や山びこつくる子のたむろ

汁なくてあきあきくらふ雑煮かな

炉がたりも気のおとろふる三日かな

寒明けの幣の浸りし泉かな

山水のいよいよ清し花曇り

くだかけの鳴きつぐ庵の雪解かな

雨霽れの名残り雲雀や山畠

山藤の風すこし吹くさかりかな