新墾の土にうるほふ落椿
おちつばき風にころがりはこび雨
ひとつづつながれてゐざるおちつばき
くちづけて連翹あまき露のたま
連翹花咲きたるる地の霑へり
梅咲いてうす靄こむる陵墓かな
たちよるや梅の下水月涵る
豌豆のさく土ぬくく小雨やむ
まひよどみおほながれしてひばりなく
日輪にきえいりてなくひばりかな
上りつめうしろさがりにひばりなく
ひばり啼き富士雲隠る湖畔みち
霽雲に富士は藍青ひばりなく
雲に啼き西湖にうつるひばりかな
聖祭に春の雪ふる蘇鐵苑
収穫れを尼僧もすなるキャベツかな
初夏の手籠に満てし紅蕪
娘がかせぐ初夏の菜園渓向ひ
初夏のみちぬれそむ雨に桑車
うすいろに奥嶽聳ゆる皐月空
火山湖にとほく小さき皐月富士
藍々と五月の穂高雲をいづ
苗代の日雨こまやかゆすらうめ
山櫻桃熟れ老農夙に畦をぬる
葉ざくらに人こそしらね月纖そる